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保護

「どういう事です?」


「言葉の通りだフェイはお主に負けて、お主に従うと誓っていたではないか。」


あー、あれ、確かに従うって言ってた。うん。


「フェイは集落最強の戦士だ、お主らを敵とし、この集落の命運を背負い、お主を殺す為に戦った。しかし命を救われた、フェイが間違っていた訳だ。」


フェイがビクッとした。

「つまり自分の行動に責任を取ってお主らに許しを請うているのだ。」


俺達の常識とはズレてる。

「成程、ならそこまでしなくても私は構いませんよ?元から交流が目的でしたから。」


フェイが落ち込んでいる。


「お主が良くてもという事だよ。貰ってくれ。」

フェイがまた真っ赤になった。いや、くれるなら貰うけども、良いのか?こっちは約50年もののビンテージだぞ?


「わかりました私には過ぎた方だと思いますが、頂きます。」

フェイ歓喜。


「それに、これから交流を持つのだろう?フェイは力を使えば遠くからでも我らと思念で話が出来る。」


まさかの電話機能。それは嬉しい。でも本当はフェイと電話したい。夜中まで眠くないねとか言いながら話したい。


「それにフェイがいれば魔獣に襲われぬ、つまりお主がいるところが安全となるのだ。」


なんと獣除け機能付き。

そして美人。最強。


「ご、ご主人、様、よ宜しく、お願いし、ます。」

フェイが顔を真っ赤にして言った。フェイが喋った!

この種族の言語能力は凄すぎる。


それにしても


可愛いぃぃ!俺はもうフェイに逆らえないかも。


「こ、こちらこそ宜しく。」


フェイがくっつくほど近くにに来て座った。

はぅぅぅうっ!これが誰かが隣にいる幸せ!

前世でも結婚式には何回か出たが、みんなこんな気分だったのかな。



「司令良かったですね、こんなに綺麗な奥さんもらって。」

「奥さんに任せておけばこの集落との交流は完璧ですね司令。」

フェイが悶えている。奥さんに反応している。


「茶化すなよ。それにまだだ。」

まだフェイが嫁に来ただけ、この人達のことを何も分かっていない、これで目的完了とはならない。


「あなた方のことはなんとお呼びすれば?」

「そうだな、まだ挨拶もしていないのに話し込んでしまった。」

彼らの種族は思念で会話が成立する為、個人の識別を行ってから話したりしないらしい。


「我らは魔獣と暮らす者、ベスティエ、私は長のバイロンだ。これから宜しく頼む。」

「ルーネ王国のクロードです。宜しくお願いします。」


これからが本番だ。俺は少し気合を入れた。


「クロード殿、ベスティエは既にある問題を抱えている。まずフェイにお主らの国を見せてほしい、その上で我らは行動を決めたいと思う。しかし、選択肢は一つしか無いだろう。」

フェイを王国に連れて帰るのは飛龍を使えば簡単だ、ハンナさんに魔力を手伝ってもらえば全速ですぐに帰れる。


しかし、言い回しがおかしい。連れて帰ることが目的では無いかの様だ。


「我が国の保護下に入りたいという事ですか?」

バイロンはその通りだと頷いている。

王国を見てから決める事など1つしか無い、保護して欲しいならそれは確認しておきたいだろうな。


「我らは数が少ないのだ。お主らの活動を助ける代わりに我らを外界から守ってほしい。」


この暗黒大陸で存在する外界の敵は、1つしか無い。

ケレス帝国だ。


「我らベスティエが1人でもいればこの大陸の魔獣は襲ってこない、お主らにはこれ以上ない話だろう?」


良い話だ、これ以上無いほど。ベスティエがいればこの大陸は安全で新たな資源の宝庫となる。


「……、既に外界の敵から攻撃を受けているのですか?」

もしケレス帝国がベスティエと敵対しているならば保護はケレス帝国との戦争の火種になる。


「同族の村を問答無用で攻撃してきた。ここより北西に本拠地がある様だ。」


既に被害が出ている。


「我らには魔獣の力がある、それ故に1人でも敵に渡ればこの大陸を自由に動かれてしまう。他の村を守る為、かの村の者は全員自害したよ。」


集落を訪れた際の強硬な対応、フェイの強引な嫁入り、バイロンの言い回しの不自然さ、全て得心がいった。何の事はないベスティエにも俺にも選択肢がなかったのだ。


ベスティエは俺に助けてもらう他なく、俺はベスティエを助けなければケレスに暗黒大陸でのアドバンテージを奪われてしまう。


これは素早く動く必要がある。


「バイロンさん私は決めました。貴方たちを守りましょう。宝具は人々の為にある物です。人を虐げる為に使用される物ではない。」

フェイが俺を見てくれている。涙を流しながら。


「フェイにルーネ王国を見せる暇は無いですが、私の本気の力をお見せしましょう!それで判断してください!」


バイロンは分かったと了承した。

防衛戦だ。


「この地に鉱山はありますか?」

「あるとも、ここから見えるあの山だ、手で崩せば鉱石が出てくる程豊富に取れる。」


キタ!ならば話は簡単だ。


「バイロンさん我らに鉱山を使わせてください。この地にベスティエと我らの為の要塞都市を作ります!」


「それで我らが守られるのなら安い物だ。」


よしなら直ぐに行動だ。

「フェイを連れて行きます。何かあったらフェイに知らせて下さい、またすぐに戻ってきます。」


バイロンは分かったと頷いた。

「ホーク、イナ、飛龍に行くぞ!」


俺はフェイと決意と共に走って飛龍に戻った。



俺たちが森を抜けて飛龍に到着すると

飛龍が巨大な竜2頭にボールにされていた。

え?


ガーン!ドカーン!と竜が結界を張った飛龍を小突いている。小突かれると、飛龍の中から悲鳴が響いて来る。


「キャー!」


ハンナだな。俺は火龍を構えた。

【ご主人様待って!】

「フェイ?」

「わ、私に任せて。」


フェイは竜の前に走って行った。

竜はゆっくりフェイを見る、少し怯えている様だ。


フェイは飛龍の前まで来て両腕を広げた。竜は飛龍を小突くのを諦めて大きく羽ばたいた後飛んで行った。


突風が吹き荒れる。


凄いな本当に襲われないのか、しかも竜に。

俺は助手席の窓から飛龍の中を覗き込む。隣にはフェイが居て、一緒に覗き込んでくれる。嬉しい。

「みんな無事か?」


飛龍の中ではハンナが操縦席で魔力印に手を当てたまま肩で息をしている。


「ハンナ大丈夫か?」

「し、司令、大丈夫です。こ、怖かったです。竜の顔が直ぐ近くにあって、口が大びらきになって、牙が並んでて、あっちにもこっちにも転がされて。グスン。ハァハァ。」


今にも吐きそうだ。

俺は静かにハンナの背中をさすってやった。


フェイが少し拗ねている。可愛い。


「スヴェンやピーター、ビリーは?」

「後ろで気絶してます。」


後部座席の下で3人が泡を吹いていた。

近づいて、揺らすが起きない。

ホークとイナが後ろのハッチから入ってきた。

イナが冷たい目でスヴェンを見る。

まぁ私がみときますと、ホークが言ってくれた。


「ハンナ、飛龍を守ってくれてありがとう、パンドキアラに戻るぞ、その間に色々説明する。」


ハンナはまた飛ぶの?と絶望した後、ヨロヨロと後部座席に移動して目を閉じた。


「フェイここに乗って。」

フェイは嬉しそうに助手席に乗り込んだ。

俺がベルトをつけてあげると顔が真っ赤になる。


ああ、なんて可愛んだろう、もうこのまま何処かに雲隠れしてフェイとただれた生活を送りたい。


ハンナは何も気付いていない様だ。


「よし、いくぞ!」


俺は西に向けて全速で飛んだ。

【ご主人様これは凄いですね、とても爽快です。】

飛龍を気に入ってくれた。ウキウキと外の景色を眺めている。


パンドキアラが見えたきた。


フェイは要塞に驚いた様だ。近づくにつれて安心した様な、気を引き締めている様なそんな雰囲気が伝わって来る。


要塞に着陸した。飛龍はすぐにみんなに取り囲まれる。

「司令!お早いお帰りですね!」

「隣の美人は誰です?紹介してください!」

「耳長い!」

「司令はハンナが好きって聞きましたけど?ナンパして来たんですか?」


フェイさんがキレそう。


「フェイ違うからね、誤解だからね、フェイの事大好きだから。」

フェイは一転嬉しそうだ。よし。


「ギュンターと中隊長と後方支援隊の各部門長を会議室に集めてくれ。」

「了解!」


俺はホーク達にスヴェン達を任せてフェイと会議室に向かった。ハンナはまだ目を閉じている。

まずはギュンターを殺す。


俺は議長席で机に肘をつき手を鼻の前で組む。

「みんなよく集まってくれた。内陸部の調査により分かったことを踏まえて緊急会議を行う。」


ギュンターは左頬が拳の形で腫れている。


「内陸部にて原住民ベスティエと交流を持つことに成功した。俺の横にいるのがベスティエのフェイだ。」


みんなフェイを見て、おお!とか、ふつくしい、とか、彼女になってほしいとか、言ってる。

最後のやつ許さんぞ!ふつくしいのは同意する。


「ベスティエの民は魔獣に襲われないという特異な能力を持っている。つまりフェイがここにいる間パンドキアラは魔獣に襲われない可能性が高い。」


みんなそんな馬鹿なと言った顔だ。

「司令なら、防衛任務は解除ですか?」

ルディだ、しかし解除にはならない。


「いや、新たな敵の可能性が出てきた。それをこれから説明する。」


俺はフェイの一族がケレス帝国に襲われている事、魔獣除けの能力のため、ベスティエがケレスに渡れば暗黒大陸でのケレスの覇権を許すことになる話をした。


「つまりケレスと一戦交えると?」

ギュンターは痛みから復活して尋ねた。話が急に国同士の戦争になるとは思わなかったのだろう、少し戸惑っている。


「いや、戦争になると王国に迷惑がかかる可能性がある。それに俺たちは前提としては調査隊だ。軍隊ではない。」


俺は少し考えてから決意した様に言う。


「俺たちはケレス帝国よりも先にベスティエの集落まで進出した事にする。ベスティエの集落前にルーネ王国の要塞を築き、ルーネの領土である事を主張するわけだ。」


ギュンターは開いた口が塞がらない。

「幸いベスティエの集落の近くには鉱山がある、これを使わせてもらい、必要な資材を揃える。まずは防壁だけで良いから、そこまで量は必要ない。錬金術で作ればすぐだしな。」


トーマスは計画を考え始めているようだ。

「まずはトーマス殿、ビリー殿、第一、第四中隊はベスティエの集落まで行き、鉱山の開発、要塞の建設作業及び防衛を開始する。防衛指揮はルディに頼む。」


「了解!」


「その他の隊員はパンドキアラの防衛だ、ギュンター指揮を取ってくれ。」


「了解!」


ギュンター防衛には余裕があるので大丈夫でしょうと、不安はケレス帝国の出方との事だ。


「ギュンター、ケレス帝国について教えてくれないか?」

「ケレス帝国は魔力量の増強に力を入れている国です、一人一人がかなりの量の魔力を持っています。また、ケレス帝国の宝具は複数人で同時に使用する事を前提とした物が多く、機動力は皆無ですが、威力は列国一です。」


それならばかなりの火力が見込まれる、だが対応力は少ないだろう。

一工夫必要だな。


「分かった、戦闘の際は打って出ずに要塞での防衛に徹する様に。私が策を施す。」


ギュンターは了解した様だが心配そうだ。

「大丈夫だ、必ず俺が両方の要塞を援護してやる。安心して防衛に当たってくれ。それでは各自準備を始めてくれ。」


全員が号令と共に行動を開始する。

第一、第四中隊は移動の準備、トーマスは自分の部署に戻って計画を決めている。


「ギュンター魔力制御が最も上手いのは誰だ?」

「それならやっぱりハンナですけど?」


1番聞きたく無かった名前だ、しかしそうも言ってられない。

俺は心を鬼にしてハンナに飛龍の操縦を教える事にした。

飛龍に戻るとスヴェン達が意識を取り戻していた。

スヴェン達はフェイが俺の嫁になった事を驚いた様だが、作戦の事を知って慌てて準備し始めた。


「ハンナには特別重要な任務がある!今回の作戦の成否はキミにかかっていると言っても良い、必ず成功させて欲しい!」

ハンナは不安と功名心とのせめぎ合いの中、期待で心を一杯にして返事をした。

「了解です、なんでも言って下さい!」


「飛龍を操縦し、兵員の輸送及び鉱山からの鉱石の輸送を行って欲しい!」


ハンナの心を絶望が支配した。


俺は取り敢えずハンナを操縦席に座らせ操作の説明を始めた。

ハンナは操作と原理を一通り簡単に覚えた。しかし凄く怖がっている。

俺はまぁまずはほんの少し浮かしてみようぜ、1センチだけ、な!良いだろう?ほんの少しだからさぁ?とか言って粘り強く交渉した。


フェイがイライラしている。ベスティエも舌打ちってするんだ。


ハンナは意を決して浮遊に魔力を流した、飛龍がゆっくりと上昇する、それとともに、ハンナの顔は恐怖の色に染まっていく。

これは無理かもと思った。これ以上は拷問だろうと。パワハラは良くない、部下の能力に適した仕事を与えるのが上司の仕事だ。


しかし


次の瞬間シートベルトをしていなかった俺とフェイは後部のスペースに吹っ飛んだ。

「一体何が?」【痛いです。】


飛龍は物凄いスピードで空をかける。高度が急上昇する。飛龍は天に向かってどんどん機首を上げている。

俺とフェイはすぐに座席に飛び乗りベルトをつける。

ついに垂直に急上昇を始めた、機体後方の推進器が全力運転を始める。シートに身体が押し付けられる。あれ程強固に作った飛龍が軋む!


雲が目前に迫った時、飛龍は急上昇からのインサイトループをきめて水平飛行になるとバレルロールを始めた。俺とフェイは凄まじいGと恐怖に呻き声1つ出せない。

スピード、旋回力共に作成した俺でさえも理解が追いつかない。

強烈なGが頭の血液を奪って意識が遠のいていく。

この空中機動のレベルはもはや俺を遥かに超えている。ハンナは天才だった。


しばらくして飛龍は要塞に着陸した。

空中機動の一部始終を見ていた隊員達がどよめきと共に押し寄せ、飛龍に押し入る。

高笑いしているハンナと気絶した俺とフェイが発見されたそうだ。

俺とフェイは暫く目を覚さなかったらしい。


2日後、準備が整った第一第四中隊と建築、鉱石部門のメンバー達がハンナの操縦する飛龍のピストン輸送によりベスティエの集落に入った。


要塞の建設に入る事になる

クロード・フォン・ドレイクはこの要塞建設の目的をはっきりさせる為、また妻となるフェイの為にベスティエ要塞と名付けた。

歴史上暗黒大陸で1度も陥落する事が無かった要塞として有名だ。

今回も読んで頂きありがとうございます。

少しでも楽しんで頂けると、嬉しいです。


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