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連戦

俺は少し落ち込んでいた。


暗黒大陸への航海は10日目で、極めて順調だ。


飯も悪くないし、隊員達は血の気が多いが気のいい奴らだ、問題ない。


退屈な事以外は、問題ない。

あんなスピーチしたのに全く出番が無い。恥ずかしい。恥ずかしい。


暇つぶしに空中に魔力の遠隔操作で文字を書いてみる。

カナリアアリアナカナリアアリアナカナリア


何気に難しい。そして落ち込む。

暗黒大陸にあの姉妹はいない……。


「ええい!ちょっと風に当たろう!」


「大海蛇だ!!」

キタ!コレ!


船を沈められそうな程の大きさの海蛇が海面から顔を出した。


「ヨッシャー!任せとけ!!アンカー撃て!逃すなよ!」

アンカーが海蛇の身体に刺さり、隊員の火龍が海蛇の頭を吹っ飛ばした。


「野郎ども解体だ!」

ミスリルソード片手に飛び込み肉を切り出して船に引き上げて行く。


「よし今日の夕食は海蛇ステーキだな!」

「2日前も食ったろ?まぁ美味かったけど。」


そう美味かった、チキンステーキみたいで美味い。


今回も出番なしの様だ。恥ずかしい。


「司令!」

よしキタ!

さぁ、なんでも言ってくれ!


「今日の夕食はまたステーキに決まったようで。宜しかったですか?料理長が提督に別のメニューも可能だと言ってますが?」


「……いやステーキで良いよ、ギュンター。」

「司令なんか元気無いっすね。」

この気さくなのは副長のギュンター・フォン・ハルミ男爵、18歳、歳も近いので大分仲良くなった。


「いや、暇でね。なんか仕事ない?」

「無いっすね。」

「甲板でも磨こうか?」

「アホな事言わないでくださいよ。」

ぐうの音も出ない。


「司令が今のうちに宝具に慣れておけって指示出したでしょう?だから皆んな色々頑張ってるんですよ。仕事は余って無いですね。」


「そうだね。ごめん。」

「あと20日もすれば暗黒大陸に着きますからそれまで力をためておいて下さい。」


そう20日、絶望した!


「暗黒大陸では魔獣が津波のように押し寄せてくるらしいです、向こうに行ったらいくらでもやる事ありますよ。」

「分かったよ。それより、数は多いというのは聞いていたけど、津波のように?動物としておかしい話だな。」


「そうなんですよ、ウォルター騎士団長は原住民がいて何かしてるのでは無いかと。」


なる程ね、魔族的なやつか。俺の嫁さんになってくれる子いないかな……。もはや魔族でも……。


「じゃあ、銃弾でも沢山作っておくか。」

「是非そうして下さい。」


俺は覇龍の弾丸を作ったり空中に文字を書いて20日過ごした。魔力制御がまた上手くなった。




「暗黒大陸が見えました!」

物見には覇龍につけているスコープと同じ宝具を渡しておいた。まだ、肉眼では見えていない。


「司令、あと少し進んでから隊員に上陸の準備を開始させます。」

「そうだね、頼む。」

「司令も装備を整えて下さい。」

「わかった。」


戦闘が始まるかもしれない。


俺は龍玉、龍鱗、隠龍を装備し、太腿に火龍、背中に覇龍を固定。腰には覇龍の弾丸を弾帯でとめている。


甲板に出て大陸の方を眺める、だんだんと陸地が見えて来る。


「あれが暗黒大陸、思ってたより普通だな。」

もう魔界みたいなの想像してた。草一本生えてない荒野で巨大な生物の骨とかあるやつ。


「海竜出現!前方4キロ!数2!」

「こんな陸地の近くに!?」


あれは……!ネッ○ー!?いやなんか可愛くない。


「司令!」

ギュンターが俺の所まで走ってきた。

「どうします!?躱しますか?」

「いや、直進だ!」


俺は艦首まで走り覇龍を構え、スコープを覗き込んだ。海竜がはっきり見える。


撃つ!弾丸が一瞬で海竜に着弾する。

1匹目が弾け飛んだ。


薬室を開き次の弾丸を装填。


狙いをつける。凶暴な顔がよく見える。

2匹目は顔が吹き飛んだ。


「海竜撃破!海竜撃破!」

ウォォォォ!!


「海竜2頭をこの距離で瞬殺とは流石です、司令。」


「これ以上海上で絡まれても面倒だ、ギュンター!さっさと上陸しよう。」

「おっしゃる通りです。」

1時間程かけてパンドキアラ要塞の港に入港した。


港は殆ど無事だったが要塞は廃墟と化していた。防壁もズタズタで全く意味を成していない。


よし、始めるぞ。

俺は上陸前から考えていた指示を出す。


「第一中隊ルディ・フォン・ハインツ男爵、第二中隊ゲルト・フォン・プレマー男爵、第三中隊アルベルト・フォン・シュルマン男爵、隊を率いて要塞の防壁外で周囲警戒!」

「了解!」

「第四中隊ラース・フォン・シュタイン男爵、荷物の積み下ろし及び港の警戒!」

「了解!」


「トーマス殿、要塞の修繕計画をお願いします。」

トーマスは建築の専門家、40過ぎのダンディなおじさまだ。


「かしこまりました。」


「後方支援隊は各分野に分かれて要塞での拠点構築を行ってもらう。」

「了解!」


「では、初めてくれ!」

隊員達は素早く行動を開始した。


「司令、防壁はどうされますか?」

「防壁は簡単だからなトーマス殿に見てもらわずとも私がなおせる。」


「なる程、承知しました。」


俺は第四中隊に要塞用の資材を防壁の近くに運ばせると既にある防壁と一緒に錬金術で融合を施し高さ10メートルの防壁に作り替えていく。

防壁の上でも戦えるように足場や階段をつくる。


そうしていると外では戦闘が始まったようだ。

「魔獣確認!各員迎撃陣!」

第一中隊のルディの所だな。


迎撃陣はツーマンセルで1人が結界で防御、1人が火龍で攻撃を行うものだ、魔力の回復を図りやすくなり、長時間の戦闘をこなせる。


「ヒャー!スゲー魔獣が一撃だぜ!」

「逃げるんじゃねーよ!本当に魔獣か!?糞虫が!」

「もっと撃ちたい、もっと撃ちたい、もっと撃ちたい、もっと撃ちたい、もっと撃ちたい!!!」

「おい!魔力が切れるまで撃つなよ!さっさと俺にも撃たせろよぉぉ!」


ヤバイ奴らがいる。


早く防壁作って隊を中に入れないと。


俺は2時間ほどで要塞周囲の防壁を完成させた。

「ギュンター!伝令を、第一、第二、第三中隊は防壁内に後退!」


「了解しました!」


伝令が結界を起動して走って行く。

なる程あれなら乱戦でも安心だね。


3つの中隊が俺の作った門から中に入って来る。全員収容完了だ。


「戦闘があったのは?」

「第一と第三です。」


「第二中隊は防壁上での迎撃につかせろ。第一は小休止の後、第二と共同で警戒態勢を構築しろ。」

「了解!」


「第三は第四のフォローに入れ!」

「了解!」


よし!ひと段落だ後はゆっくり要塞を直していけば良い。

事前に考えていたからスムーズに出来たけどドキドキしたー。


「司令、見事な采配ですね。」

「ありがとうギュンター。俺はトーマス殿と要塞修理に入る。中隊の指揮を任せるよ。夜に報告を頼む。あとは何かあったら呼んでくれ。」


これ以上は考えてないので丸投げだ!俺の作った宝具があれば余裕だろ。


「かしこまりました。」




要塞内に移動し、

「トーマス殿、要塞はどうだろうか?」


「修繕は既に開始していますが、外壁の損傷が激しく一から作ると、時間がかかります。贅沢ではありますが司令の錬金術により外壁を鉄板で作ってしまうのが1番早く済みます。」


「わかった、やろう、まず外側を作ってしまい内装は後からゆっくりということか。」


「ええ、内装も宿舎や食堂を優先させています。」

「それで良い。では外壁を一通り作りに行こう。」


俺はトーマス殿の指示した通りに外壁を作っていく。


融合を使った鉄が美しく、メタリックな要塞になった。

その日の夕方までで警戒要員以外の全隊を休憩に入らせた。



俺は食事をとりながらギュンターの報告を聞いていた。

「第一、第二中隊でおよそ300頭の魔獣を撃破、内100頭以上が牛闘獣と呼ばれる種類の魔獣でした。後はワータイガーとかワーウルフとか1番大きいので亜竜が出たそうです。被害なし、敵は全て殲滅してあります。」


「それは大変だったな。後で酒でも差し入れたほうが良いだろうな。」


「酒は喜ばれると思いますが、皆、全く堪えてません。ノリノリで戦ってましたよ?第一と第二で防壁の上を取り合ってました。」


「はぁ?」


「ルディとゲルトが交代でと決めたんですけど、だんだん楽しくなってきた様でサイコロで順番を決め始め、最終的に各隊のから隊員を出して一対一の模擬戦をして勝った方が防壁に上がってました。」


「もはや遊んでる?」


「司令の宝具が強力過ぎるんですよ。皆んな以前の弱い宝具で魔獣と戦ってきた精鋭達です。まだまだ本気ではないです。」


「そっか、まぁこれからは長期戦になるから余裕があるならそれに越したことはないか。」


「次はどうします?」


「竜に備える。」


「司令の宝具があれば勝てるのでは?」

「もちろん勝てる。だが要塞を守るとなると少し話が変わってくる。不測の事態を避けるためにも要塞を覆うような結界の宝具をつくる。」


「そんなの出来るんですか?」

「龍玉を起動して4人位で魔力を込めれば出来るはず。竜が来た時とか緊急時には使えるだろ。」


「なるほど。」


「それから要塞はギュンターに任せるから、4人強いやつを選んでくれ俺と暗黒大陸の内陸調査を行う。」


「それは危険です!司令が行く必要はありませんよ!」


「いや原住民がいる場合任せられない、それに、高速で移動できる宝具をつくる。かなり複雑になるから魔力操作が上手くないと運転できないと思う。」


「やはりいると思いますか?」


「うーん、なんかいると思う。」

俺は少し悩んでから話した。


「海竜の出現からだとすると、魔獣の動きが早すぎるし、敏感すぎる。人間が入ってきたとはいえ魔獣達がここまでするほど脅威に感じるはずがない。」


「わかりました、留守と隊員の選抜はお任せください。」

「後農業、鉱物関係の専門家も連れて行くから。よろしく。」


了解ですとギュンターは返事をし、食事を本気で摂り始めた。凄い早い。胃悪くなるよ?



夜になり、本日戦えなかったと文句を言ってきた第四中隊に夜間警戒を任せた。

ラースは一気に顔が青くなった。

ふはは!世の中こんなものなのだよ!


俺は疲れていたのですぐ寝てしまった。


数時間は寝た頃。

「敵襲ー!!」

鐘を素早く鳴らす音が聞こえる。

「まじか!」

飛び起きて、フル装備で防壁に走って行く。

「ラース!状況は?」


「かなり多くの魔獣に取り囲まれています、総数不明。迎撃能力は現状足りています。隊員の体力も朝まで持たせて見せますよ。」


「わかった、しかし魔獣が集団で夜襲だと?ありえん。」

「ええ夜行性の魔獣だけでこの数などあり得ませんし、夜行性の魔獣は単独行動を好みます。」


「やはり誰かが魔獣を動かしてるな。よし俺も迎撃する。火龍自体が明かりになる、弾幕を絶やすなよ!」


「了解!」


俺は防壁上に上がり、覇龍のスコープに新たに暗視の文字を刻んで魔獣の群れを見た。


ヤバイ数だな、まじ朝までコースだわ。どうせなら女の子と朝まで楽しみたい。取っ替え引っ替え楽しみたい。


俺は近くから順番に弾丸を打ち込んでいった。

「司令!遅くなりました!状況は分かってます、何か必要なもの有りますか?」


ギュンターだ、よし!


「覇龍の弾丸をありったけ持ってこい、メチャクチャいるぞ!あと、指揮は任せるから!」


「了解です!」


俺は弾丸をあるだけ打ち込むつもりで乱射した。

覇龍は魔物の群れを貫通しながら一気に倒していける。守りきれる!


あ!竜がいる殺しとこ。


戦いは3時間ほど続いてから夜があけた。魔獣はいなくなった。


上陸から徹夜での作戦行動、さすがの隊員たちも身体が重そうだ。


「凄まじかったですね。」

「ああ、王国では魔獣がこんなにいないからな。」


「いや、司令がです……。」

「……。」

「だって遠距離の敵は殆ど司令が倒してましたよね?最後の方なんかその場で弾丸作りながら連射してましたよ?地形だってほらこんなにえぐれて!」


「海であんまり出番が無かったから。」


「気をつけてくださいよ?司令官なんですからね?」


「わかったよギュンター。皆んなを交代で休ませてくれ、俺は宝具の作成に入る。早急に周囲の調査が必要だ。」


「了解です。」


今回も読んでくれた皆様ありがとうございます。少しでも楽しんで頂けていたら幸いです。


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