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Cafe Shelly

Cafe Shelly 種を蒔く人

作者: 日向ひなた

 名刺。そこには「梅田ミサト社労士事務所」とプリントされている。今日からいよいよスタート。私の新しい仕事。

 一年前に受けた社労士の資格試験。三年がかりでやっととることができたこの資格。合格してすぐに開業したかったけれど、やはり不安が大きくて。しばらくはお世話になった社労士事務所のお手伝いに入っていた。そこで仕事のやり方なんかを学んで、今回いよいよ独立開業。私の城が完成した。

 私の城、といっても自宅の一室をそこにあてただけ。一人娘も大学に進んで、家の中に空き部屋もできたし。旦那さんにお願いしてここを私の事務所にさせてもらうことになった。事務所と呼ぶにはとても狭い部屋。お客さん一人呼ぶのが精一杯。幸い、家の前が喫茶店なので、お客さんが来たらそちらに誘導することにした。

 社労士、正しくは社会保険労務士。この仕事は主には企業の労務に関するものが多い。就業規則をつくったり給与計算を行ったり。補助金の申請なんていうのもある。

 この仕事にあこがれを抱きだしたのは、私が前に務めていた会社に訪れていた女性社労士の姿を見ていたから。月に一度訪れ、総務をやっていた私とおしゃべりをしながらも仕事をてきぱきこなしていく。そんな彼女の姿を見て「かっこいい」と純粋に思った。

 そういう話をしていたら「ミサトさんも社労士になっちゃえばいいのに」と気軽にいう彼女。その言葉にそそのかされて、気がついたら本気になっていた。務めていた会社では総務でずっと労務に絡んだ仕事はしていたから、勉強もそんなに難しくないだろうと思っていたのだが。

 一年目はその甘さが失敗につながった。試験勉強をやりだしたら奥が深いこと。実力だめしと思って受けた試験も惨敗。二年目は本気を出して勉強をしたんだけれど、緊張からか答えが思い出せずに悔しい結果に。そして三年目、何度も模擬試験をやって、痛い目に遭って、その結果ギリギリの点数で勝ち取った資格。

 ここからが社労士としてのバラ色の人生がスタートする、と思っていたのだが。こういう仕事ってどうやってお客さんをつくればいいの? それがわからず右往左往していたときに、お世話になった女性社労士からしばらくうちに来ないかというお誘いがあり、渡りに船という気持でそこに入った。

 けれど雇われで入ったのでは意味が無い。自分の時間を自分で作り、自分の手で稼いでいく。これが私が目指した姿なのだから。その理想を捨てきれなかった。心のなかで葛藤しつつも、思い切って一人でやる世界へと足を踏み入れてみた。

 とにかく営業からはじめなきゃ。今までお世話になった人のところに足を運んだり、知り合いのところに行って紹介をもらったり。それでなんとかお客さんを増やさないと。どうにかなるだろう、という典型的な楽天家で構えていた私。しかし現実は厳しい。そりゃそうだ。知っている会社はすでに社労士をつけているようなところばかり。今さら新米の、まだ実績もあげていない私に鞍替えするなんてことするわけがない。

 用意した名刺の数だけはどんどん減っていくけれど、新しくお客さんになってくれそうなところは見つからない。「足で稼ぐ」なんてことをよく言われるけれど。こうやって一日中回っても、世間話だけは進んで何も得られない。開業して一週間は、そんな感じで過ぎていった。

 我が家は幸い旦那さんの収入だけでもなんとかやっていける。事務所も自宅だから、それほど経費はかからないし。けれど、そこに甘えていたらいつまで経っても私は自立できない。自分の力で稼いでいかなきゃ。でも突破口が見つからない。そんなとき、営業に行ったハローワークでセミナー案内のチラシを見つけた。

「ミサトさん、この人すごく評判いいからセミナー受けてみるといいよ。うちが主催だから無料だし」

 馴染みのハローワークの担当さんが私にやたらと勧めてくる。

「SOHO開業セミナーかぁ」

 今の私にぴったりだな。ハローワークは就職斡旋だけでなく、独立開業ということも促している。その業務の一環としてこんなセミナーを企画してくれた。

 講師は羽賀純一という人。コーチングをやっている人らしい。写真で見る限りはいい男だな。どうせ時間はたっぷりあるんだし、無料だから受けてみるか。早速申し込みをしてみた。

 セミナー開催は来週。その間遊んでいるわけにはいかず、あちこちに営業を行なってみたけれど。仕事が入ってくる気配はない。独立開業って、こんなにつらいものだとは思わなかったな。そんなこんなで何の動きもない一週間が過ぎ、セミナーの日となった。

 セミナー会場に来てみると、参加者は十五人程度。まだ若い子もいれば年配の姿もある。男女もまちまち。みんな独立開業で成功したいと思っているんだろうな。早速セミナー開始。

「ども、羽賀純一といいます」

 講師の羽賀さん、かなりやわらかい物腰で私達に語りかけてくれる。馴染みやすそうな人だな。

 今回教えてくれたもの。それは開業そのもののノウハウや情報とは少し違う。どちらかといえば「心構え」的な内容である。特に印象に残ったのは「何のために開業しようとするのか?」。これについてグループ演習でとことん質問された。

 何のために。もちろん、開業してお金を得て、しあわせな生活を送りたいから。本当のそれだけなの? 社労として会社のお役に立つことで、会社の利益をもたらしたいから。それだけ? もっと心の奥にある言葉があるでしょう。そうやって何度も同じ質問を繰り返されて。そこで私がたどり着いた答えはこれ。

「働いている人も雇っている人も笑顔で毎日が過ごせる。そんな人達のお役に立ちながら私も笑顔で毎日を過ごしたい」

 この言葉にたどり着くまでに、何度も考えさせられた。けれど、この言葉が完成した時には涙がでるほどうれしかった。そうか、私ってこういうものを目指そうとしていたんだ。その原点が今、まさにはっきりした。

「だったらミサトさん、あなたは何を売っているのですか?」

「何を売っているかって? そりゃ、社会保険労務士として、会社の労務関係のことを…」

「それを本当に売りたいの?」

「違う、そんなのが売りたいんじゃない」

「じゃあ何?」

「私が売りたいもの、それは働いている人の笑顔。その笑顔をつくるお手伝いをすることを売っているの」

「うん、いい言葉だね」

 参加している人たち一人ひとりに語りかけて、そしてみんなそれぞれ納得した言葉を見つけたみたい。そして羽賀さんはこう言ってくれた。

「SOHOを立ち上げようとする人は、つい自分のやろうとしている『こと』に意識を集中してしまいます。しかしほんとうに大事なのは、今皆さんが口にした『思い』です。そう、何のためにその仕事をしようとしたのか。これを言葉にしたのが『理念』なんですよ。まずはその理念を大事にしてください。その思いに対して、人は集まってくるのですから。社員を雇いたければ、この理念に賛同する人を雇ってください。お客様を得たければ、この理念に共感する人を集めてください」

 最後の言葉は私の心に響いた。理念に共感する人がお客様になるんだ。私は今まで、社労士という仕事そのものを売り歩いていた。でも違うんだ。自分の思いを伝えにいかなきゃ。そこに共感する人がお客様になるんだ。

 今回のセミナーを受けて、とても勇気が湧いてきた。よし、明日から営業のやり方を変えないといけないな。

 セミナー終了後、私はすぐに羽賀さんと名刺交換をしにいった。けれどさすが人気講師。すぐに人が集まり、私が名刺を交換するのは一番最後になってしまった。

「あらためまして、梅田ミサトといいます。社労士としてつい先日開業したんですけど。なかなかお客さんがつかなくて。それでこのセミナーに参加しました」

「ミサトさん、ですね。開業したばかりかぁ。ボクも最初はお客さんがつかずに苦労したなぁ」

「えっ、羽賀さんもそうなんですか? でも今はお忙しいんじゃないですか?」

「まぁおかげさまで、それなりのお客さんがいてくれますよ」

「どうやったらそこまで辿り着くんですか?」

 私は図々しくもそうやって聞きたいことを質問してしまうタチである。

「うぅん、話すと長くなるなぁ。ミサトさん、このあとお時間は?」

「ありがたいことに、まだ仕事らしい仕事は入っていないんで時間はありますよ」

「じゃぁ、ボクの知り合いの喫茶店でこのことについてゆっくり話しませんか?」

 なんと、羽賀さんの方からお茶のお誘い。一も二もなく喜んで誘いに乗ることにした。これって新手のナンパ? なんて自意識過剰にも思ったりして。でも、こんなおばさんを誘うなんてことはないか。

 羽賀さんは自転車、私は車で来ているので、指定された場所までは別々に行く事になった。

 指定された場所。それは街の中にある裏路地の通り。パステル色のタイルで敷き詰められた道の両端には、レンガの花壇がある。通りの両側には小さなお店が並んでいる。この通り、私も好きなところなんだよね。その通りの入り口で、すでに羽賀さんは待っていた。

「ミサトさん、こっちです」

 促されるように駆けていく私。あはっ、ほんとにデートみたい。ちょっと心が弾むな。旦那さんと待ち合わせしても、こんな気分にはなかなかなれないもんな。なんてことを思いつつ、羽賀さんが先導して歩き出す。

「ここです。この二階にお店があるんですよ」

 羽賀さんが指さしたところの脇には黒板の看板が置いてある。

「Cafe Shelly…カフェ・シェリー、ですか?」

「ここにおもしろい魔法のコーヒーがありますから、ぜひ飲んでください」

 魔法のコーヒー、という言葉にちょっとワクワク。けれどそれ以上に私の目を引きつけたのは、看板に書かれている言葉。

「良い種を蒔くと、必ず良い実がなりますよ」

 この言葉、前に本で似たようなのを見たことがある。そのときはあまり気にしなかったのに。

 階段を上がって扉を開く。

カラン、コロン、カラン

 心地よいカウベルの音。同時に漂ってくるコーヒーの香り。それにプラスして、甘い香りも私を包んでくれる。

「いらっしゃいませ」

 聞こえてくるのは女性店員の声。少し遅れて同じ言葉で渋くて低い声が出迎えてくれる。

「マスター、お客さんを連れてきたよ」

「羽賀さん、いらっしゃいませ。真ん中のテーブルしか空いてませんがよろしいですか?」

 お店を見回すと、そんなに広くない。窓際に外を向けて四席並んでいる。カウンターに四席。そして私達が通された店の真ん中の丸テーブルに三席。小さい喫茶店だけれど窮屈には感じない。

「マスター、シェリー・ブレンド二つね」

「かしこまりました」

 羽賀さんはここの常連らしい。

「いらっしゃいませ」

 女性店員がにこりと笑ってお冷を置いてくれる。この空間自体がとても心地いいな。社労士の勉強をしていた頃には、大手のコーヒーショップを時々利用していた。悪くはないけれど、やはり人の出入りが多くて落ち着けるものじゃなかったな。ここの窓際の席なんて勉強するのに最高だ。事実、窓際の席では一人の男性が本とパソコンを広げている。一つ席を空けて隣では女性が本を読んでいる。

「なんだかとても居心地のいいところですね」

 女性店員に向けて、なにげにそう伝えてみた。

「ありがとうございます。お客様がここで心を休ませてくれるのが一番の願いですから」

 笑顔でそう返す彼女。ここで思った。見た目の空間づくりも必要だけれど、何より必要なのは人がちゃんと出迎えてくれることじゃないかな。見た目の空間と人。その二つが合わさって初めて居心地がいいと言えるものがつくれるんだ。この喫茶店、私も時々通うことにしよう。

「ミサトさん、いかがですか?」

 羽賀さんの声に私は空想の世界から引き戻された。

「すごくいいところですね。また来たくなっちゃいますよ」

「そうでしょう。実はこれからのお話のヒントがこのお店には詰まっているんですよ」

 そうだった。羽賀さんの独立した当初からどうやったら今のような立場にたどり着いたのかを聞きに来たんだった。私はあらためて羽賀さんと向かい合う。そして羽賀さんはゆっくりと語り始めてくれた。

「ボクは東京でコーチングを学んでこの土地に戻って来ました。いろいろな出会いがあって、沢山の人に支えられたんです」

 そうよ、その出会いが聞きたいの。

「その出会いって、どうやって起こしたんですか?」

「その出会いの核心については、もう少しあとでお話しますね」

 うぅん、羽賀さん焦らすなぁ。

「その出会いと、そこで行ったあることのおかげで、多くの人がボクという存在をいろいろなところに紹介してくれるようになったんです。だから今はそれほど営業らしい営業をやらなくても仕事が回っている状況なんですよ」

「すごくうらやましいな。そこで行ったあることって、何なんですか?」

 羽賀さん、一番核心のところに触れてくれないんだから。けれど、私の質問に対しては笑顔で返すだけ。すると、女性店員が注文したコーヒーを運んできてくれた。

「マイちゃん、ありがとう。よかったらシェリー・ブレンドの説明をしてあげてくれないかな」

「はい」

 女性店員、マイさんっていうんだ。あらためてみると、髪が長くてとてもかわいらしい。こんな子だったらモテるだろうなぁ。若いってうらやましいな。

「このシェリー・ブレンドは、飲んだ人が望んだ味がするんです。人によっては、望むものの映像が頭に浮かんでくる方もいるんですよ」

 その人が望む味がする? どういうことだろう。

「ミサトさん、とりあえず飲んでみてください」

 私は疑問を持ちながらも、コーヒーを口に運んでみた。私は今までコーヒーショップでいろいろとコーヒーを飲んできた。けれど、ここのコーヒーは香りが違う。さらに口に含むと、一気に花開くような感じを受けた。口の中で凝縮されていた味が一気に広がりを見せる、そんな印象を受けた。

「これ、なんだかおもしろい味ですね。こんなに口の中で一気に広がるなんて」

「なるほど、ミサトさんは一気に自分を広げたいという要望があるんですね」

「えっ、どういうこと?」

 羽賀さんに言われて、私はあらためて自分の思いを考えてみた。確かに、私は社労士として一気に花を咲かせたい、自分の仕事を広げたいと思っている。社労士の資格を取れば、きっとそうなるだろうと思っていた。けれど資格をとっただけじゃ花は開かない。独立したらそうなるだろうと思っていた。けれどそれでも広がりを見せることはない。どうしたら広がるの? それを今模索している。

 なるほど、そういうことか。その人が望む味ってこういう意味だったんだ。

「ミサトさんが咲かせたい花って、どういうのかな?」

 羽賀さんは私にそう質問してくる。私が咲かせたい花、あらためて言われると、どんなものなのかイマイチ不明確である。ちょっと考えこんでしまった。

「ちょっと悩んでいるみたいですね。じゃぁもう一度、シェリー・ブレンドに聞いてみるといいですよ」

 シェリー・ブレンドに。そう言われて私は素直にコーヒーを口に運んだ。すると、さっきとは違う味が。なんだろう、これ。

 たくさんの人が私を頼りにしてくれる。そしてみんなが笑顔になる。あ、これってさっきのセミナーでつくった自分の理念じゃない。

 私が咲かせたい花。それはたくさんの人を笑顔にさせること。うん、そうよ、そうだったんだ。

「ミサトさん、何かわかりましたか?」

 羽賀さんの声で我に返る。あれ、私コーヒーを飲んでいたはずなのに。そうか、これがシェリー・ブレンドの魔法なんだ。望むものの映像が見えるって、こういうことだったんだ。

「羽賀さん、わかりました。私が咲かせたい花は、たくさんの人を笑顔にさせることです」

「うん、さっきセミナーで作った言葉ですね。じゃぁ一つ質問。植物で考えてね。みんなが感動するような綺麗な花を咲かせようと思ったら。何が必要だと思う?」

「綺麗な花を咲かせるには、ですか?」

 私はちょっと考えてみた。

「やはり手入れよね。あといい肥料をやるとか」

「なるほど、それから?」

 言われて考えこんでしまう。

「うーん、毎日の水やりとか、あと愛情を注いで育てるとか」

「なるほど、そういった毎日のケアが必要ってことですね。あと思いつくことはありませんか?」

 思いつくこと…ここで思い出した。さっきみたカフェ・シェリーの看板の言葉。

『良い種を蒔くと、必ず良い実がなりますよ』

 これだ。

「種の段階から良い物を蒔くっていうこと。これも大事ですよね」

「うん、そうだね。綺麗な花を咲かせようと思ったら、それなりの種を蒔くことも大事なんですよ。今は品種改良とかで、種の段階からどんな花が咲くのかってだいたいわかっちゃいますからね」

 うん、確かにそう。けれど、それと私の理念とどう結びつくの?

「マスター、手は空いてるかな?」

「えぇ、いいですよ」

 羽賀さんはここで急にマスターを呼んだ。何をするつもりなのだろうか?

「マスター、よかったらカフェ・シェリーではどんな種を蒔いたのかを話してもらえませんか?」

「あはは、またあの話ですね。羽賀さんも人使い荒いんだから」

 そういいつつも、マスターの顔は笑顔でほころんでいた。

「えっと、ミサトさんでしたね。私がこのお店をやる前は何をしていたと思いますか?」

「何をって…うぅん、思いつかないなぁ」

「私は学園高校で英語の教師をしていました。元来のコーヒー好きが高じて、思い切って喫茶店を始めたんです」

 なるほど、そういうことだったんだ。

「高校の頃はちょっと変な話をする先生だったんですよ」

 横からマイさんが会話に参入。

「ははは、マイは私の教え子だったんです」

 へぇ、そうだったんだ。

「変な話って?」

「ツイてるって言えば万事うまく行く、とか。あと神様の話とか。精神世界の話が多かったよね。普通の学校の先生がやる話じゃなかったもんな。だからこそ、人気があったんですよ」

 なんとなくわかる。そういう話って、私も好きだからなぁ。でも面と向かって公の場で話せることじゃないから。

「そのおかげで、このお店を開いた時にはかつての教え子たちがたくさん来てくれました。今も常連として来てくれている人も多いですから」

 マスターの話に納得。そうか、そうやって昔蒔いた種が花を開いてきたんだ。

「さらにマスターは種を蒔き続けたよね」

 マイさんがにこりとしてそう言う。どんな種を蒔いたんだろう? マイさんの言葉にマスターが応える。

「私がこのお店を初めて蒔いた種、それは心の情報です。みんなが幸せになるために」

 みんなが幸せ。私と一緒じゃない。

「心の情報って、例えばどんな話なんですか?」

「多くは心の悩みを解決するお手伝い、みたいなものです。私、学校に務めていた時にはスクールカウンセラーもやっていましたから」

 なんとなくイメージわくな。マスターと話をしていると、癒してもらえそうな気がする。ゆっくりとした口調、低い声、にこやかな笑顔。このお店の雰囲気とぴったりマッチして、すごく心が落ち着く。

「そのおかげで、お客さんがつぎのお客さんを連れてきてくれたり。マスターがしっかり種を蒔き続けてくれるおかげです」

 マイさんがにこりと笑ってそう言う。私もここのお客の常連になりたいって、そう感じている。これが種を蒔くってことなんだ。

「ミサトさん、今までの話を聴いて何を感じましたか?」

「はい、地道に種を巻いていれば、こうやってきちんと花が開いて実を収穫できるっていうのがよくわかりました。でも…」

「でも?」

「でも、私はどんな種を蒔けばいいんだろう? そこがわからない…」

 こういう話を聴けば聴くほど、焦ってしまう自分がいることに気づく。私、何をすればいいんだろう?

「ミサトさんは社労士として、どんな仕事をしたいと思っているんですか?」

 羽賀さんが私に聞いてくる。

 どんな仕事。あまりそれを考えたことがなかった。社労士の仕事というのは、主には給与計算や補助金の申請、就業規則の作成などがほとんど。今はとにかくそういう仕事がとれればいいと思っていた。

 けれど、私が本当にやりたいのはそんなことじゃない。働く人と雇う人、その双方が満足するような仕組みを作ること。そして、みんなが笑顔で仕事が出来る環境づくりをお手伝いすること。そういう仕事がしたい。そのことを羽賀さんに伝えてみた。

「なるほど、それがミサトさんのやりたいことなんですね。じゃぁ、そのためにミサトさんが与えられるものってなんですか?」

 与えられるもの? そう言われて考えこんでしまった。私、そういうことに対して何を与えられるんだろう。今度はそれが不安に変わってきた。私、そういう仕事をしたいのに何一つ与えられるものが思い浮かばないじゃない。そんなことでどうするの、ミサト! 考えれば考えるほど焦ってしまう。

 これは私の悪い癖だ。だんだん不安に陥り、そして私はダメな人間なんだって思い込んじゃう。そうなりたくないために、社労士の資格をとったのに。資格をとっても、何の意味もないじゃない。

「羽賀さん、私どうすればいいの?」

 思わず泣きそうになる私。なんだかわからないけれど、自分が情けなく感じてしまって。私が与えられるものって、一体何? 志ばかり高くても、実際にはなにもできないじゃないの。

 そんな私に、羽賀さんはこんな言葉をかけてくれた。

「ミサトさん、その答えもシェリー・ブレンドが教えてくれますよ」

 私はすがるような思いで残りのシェリー・ブレンドに手を伸ばした。もうこれしか残っていない。私が何をするべきなのか。私がどのような種を蒔けばいいのか。そのことを頭に入れて、再びシェリー・ブレンドを口に流しこむ。そして目を閉じてみる。教えて、シェリー・ブレンド!

 けれど何も思いつかない。何もイメージが湧いてこない。焦る私。

 いつもこうだ。私って、いざというときに役に立たないんだから。知識は知っていても、いざというときに体が動かないし、知っていることも思い出せない。それで社労士の試験も落ちたし。頭でっかちなんだから。もっと社労士の知識も、せっかく勉強したんだから小出しにしていかないと意味がないし。みんなに役立つ知識なんだから。特に経営者や労働者には知ってほしいものがたくさんあるんだから。ちょっと知っておけば役立つのに。

 ちょっと知っておけば…そこで気づいた。そうか、ちょっと知ってもらえばいいんだ。そういう情報を私からたくさんの人に伝えることができれば。そうしたらたくさんの人が苦しまなくてすむかもしれない。私ができることって、そのくらいしかない。でも、どうやって知ってもらえばいいの?

「ミサトさん、なにかわかりましたか?」

 羽賀さんの問いかけで我に返る。頭の中でわかりかけたこと。これを早速羽賀さんに話してみる。

「なるほど、ミサトさんが蒔くことができる種は、社労士として経営者や働く人が役に立つ情報ってことですね。けれど、その蒔き方がわからない、ということか…」

 羽賀さんはここで頭を抱え込んでしまった。そうよね、そんなことまで羽賀さんに考えさせちゃいけないよね。それは私が考えなきゃ。でも、本当にやり方が思いつかない。

「あの、もしご迷惑でなかったらちょっとよろしいですか?」

 突然、窓際の席に座っていた女性がこちらの会話に加わってきた。

「あ、はい。なんでしょうか?」

「先程からの会話が耳に入ってきたもので。あ、盗み聞きしていたわけじゃありません。でも、ちょっと興味が湧いてきたもので」

 その女性、年齢は二十代前半ってところかな。清楚な感じがする、とてもかわいらしい女性である。

「私、マンガ家を目指しているんです。作品は今まで同人誌でファンタジーとか描いていたんですけど。ちょっと社会派のものを描きたいと思っていて。でも、そんな社会派的なものってネタも思いつかなくて。いろいろ本を読んで勉強しようと思っても、どこから手をつけていいかわからなくて。そしたらさっきの会話が耳に入ってきて、これだって思ったんです」

 これだって、もしかしたら…

「社労士のお仕事として伝えたいこと。そういう内容をうまくストーリにまとめられたらって思って。会社の中で起きているいざこざを、社労士がうまく解決していく。そんなマンガだったら面白そうだって思ったんです」

 私の中で何かがはじけた。一気に花が開く、そんな光景が浮かんだ。

「おもしろい、それ、やりたい。お願い、ぜひ一緒に組ませてくれない?」

「私こそ、ぜひお願いします」

 すると、今度はもう一人の窓際の席に座っていた男性がくるりとこちらを向いた。

「あのぉ、その話、ボクにも参加させてもらえないでしょうか?」

「えっ!?」

 一同がその言葉に驚いた。

「ボク、小説家希望なんです。実はボクもネタを探していたんです」

 聞けば、小説家になりたいと思っていろいろな賞に応募はしているけれど、今だ入選すらないという状態。彼も悩める人間だったのだ。

「じゃぁ君…えっと名前は?」

「石原さとこです」

「さとこさんがマンガを書く。その原作ストーリーを…」

「相田賢といいます」

「相田くんがストーリーを考える。その監修をミサトさんがやる。こんな感じになるんだね」

 私達三人はあらためて顔を見合わせた。さとこさんはまだ二十代。相田くんは三十代ってところか。そして私が四十代。なんか一見すると不揃いのチームだけど。でも、ワクワクしてきた。その気持は他の二人も同じみたい。

「よし、やろう!」

 私の声にうなずく二人。早速三人で行動開始! 真ん中のテーブルに席を移して三人で企画会議を始めた。その会議を羽賀さんがうまく誘導してくれる。

 まずは私が会社でありがちな問題などの話題を提供する。その話題から相田くんがストーリを書く。そのときにおかしいところがないかをチェックしたり質問を受けたりする。そして、そのストーリーを元にさとこさんがマンガを描く。さらに私がセリフなどをチェック。まずはこれでマンガ賞を狙うことになった。

「じゃぁ早速明日から始めましょう」

 昨日とは違う今日、今日とは違う明日。なんだかそれを期待させてくれる新しい仲間。胸がワクワクしてきた。

 私は帰って、早速社労士としての事例集や問題集の中から、物語に使えそうなエピソードをいくつか抜き出す作業を始めた。そして、私なりにちょっとアレンジした物語を考えてみる。うん、なんだかいけそう。

 旦那さん、帰ってきてから私が生き生きとした顔で机に向かっているものだから、何があったのか興味津々。私もおもいっきり今日の出来事を話しちゃった。

「へぇ、そいつはおもしろいな。となると、作画石原さとこ、原作相田賢、監修梅田ミサト、なんてマンガが出来上がるんだな。楽しみだなぁ」

 お世辞ではなく、心から楽しみにしてくれているのが伝わってくる。うん、その期待に応えなきゃ。そして、良い種をどんどん蒔いていかなくちゃ。その日は気がついたら夜中の二時までかかって、事例のまとめと自分なりのストーリーを考えていた。

 そして翌日、私は再びカフェ・シェリーへと足を向けた。待ち合わせは十時だったが、なんだか落ち着かなくて。九時ちょっと過ぎには足を運んでいた。

カラン・コロン・カラン

 カウベルの音が私の登場を気持ちよく出迎えてくれる。

「おはようございます」

「あ、ミサトさん、おはようございます。なんだか声がはずんでいますね」

 マイさんがにこやかに私を出迎えてくれた。

「ミサトさん、おはようございます。いいシナリオできましたか?」

 マスターもそう言って私を出迎えてくれる。

「はい、昨日は興奮しちゃって。夜中の二時までいろいろと調べちゃった。でも全然眠たくないの。むしろ目がギラギラしてるくらい」

 私はガッツポーズをして、今の気持の興奮を二人に伝えた。

「これからどんどん良い種を蒔いていかなくちゃ」

「ミサトさん、すでに良い種を蒔いていることに気づいていますか?」

「えっ、私が?」

 マスターの言葉に私はちょっと驚いた。これから蒔こうと思っていたのに、すでに蒔いているってどういうことなんだろう?

「ミサトさんの存在が、二人の人間のこれからを変えたでしょ」

 マイさんがお冷を差し出しながら私にそう言ってきた。

「二人って…さとこさんと相田くんのこと?」

「そう、その通り。ミサトさんが良い種を蒔きたいという気持ち。それが二人に良い種になったんです」

「でも、私はまだ何も二人に与えてませんよ」

 マスターの言葉に私は首を傾けたが、にこやかにこう答えてくれた。

「良い種とは、なにも目で見える形で与えなくてもいいんですよ。その考え方、思い、こういったものを人に伝えていくこと。そして人に良い影響を与えるもの。それも良い種の一つなのですから」

 なるほど、そんな考え方もあるんだ。そうか、このカフェ・シェリーはそういった考え方の種を蒔いているから、いいお客さんでいっぱいになるんだな。私のところもそうなりたいな。

 そこでふと考えてみた。私がお客様にしたい企業の条件ってなんだろう?できれば良い影響を社会に与えている会社がいいな。その会社がさらに社会に良い影響を与えれば、もっとたくさんの企業がその真似をしていくだろう。よく考えれば、良くない会社を相手にしてそれを改善しようなんて言うのは私の思いあがりかもしれない。

 私が変えてやる! それは私一人の幻想にすぎない。そんなのはただのおせっかいにすぎない。社労士を雇おうなんていうところは、それなりに業績がいいところじゃないと無理だもんな。業績の悪いところが気持ちよくお金を払ってくれるわけがない。救いを求めてくるところはまだいい所なのかも。自分たちの欠点がわかったってところなんだから。となると、考えた原案も書きなおさないと。

 そんなことを考えていたら、さとこさんと相田くんが登場。早速打ち合わせを開始した。

「…って思うのよ。最初は勧善懲悪的なことを考えていたけれど、本当にいい会社ってどんなことをやっているのか、これを紹介したいって気もあるんだよね」

 これが私の意見。

「うぅん、わからなくはないけれど、ストーリー的な盛り上がりに欠けますよね。かといって、社労士が正義の味方で企業が悪、なんていうのもちょっとどうかとは思いますね」

 相田くんは頭の中でストーリーをひねり出そうと必死。

「最後はみんながハッピーエンド。これが私の希望ではあるけれど」

 さとこさんの意見は私も同じだ。けれど、どんな話で展開していけばいいのか。そこに詰まってしまった。

 ちょうどそのタイミングで、マイさんがシェリー・ブレンドを運んできてくれた。

「そういうときはこれ。シェリー・ブレンドに答えを聞いてみるといいわよ」

 私たちは藁をもすがる思いでシェリー・ブレンドに一斉に手をつけた。そして同じタイミングで口に運ぶ。しばらく目を閉じてみる。

 私が感じた味。それは苦さが強いけれど、コクがあって芯が通っている感じ。そこにあるのは…信念、という言葉が頭の中に浮かんだ。

「信念を持ちながらも、会社の矛盾と戦う男。しかし会社は悪ではない。決まったことを遂行しているだけ。その中にある矛盾を、社労士がサポートしてくれる。そうか、クライアントとなる人が主人公で、社労士はあくまでもサポート。そんな話が描けたらいいんじゃない?」

 私は頭にひらめいたことをそのまま口にしてみた。するとさとこさんが私の言葉にプラスしてくれた。

「それ、一話完結方式でたくさんのクライアントの視点で物語を描くと面白いかも。そこで登場する社労士は同じ人物。つまり、物語の主人公はクライアントだけど、一貫して一人の社労士が実は主人公だってこと。これなら何作でも描けそうだわ」

「うん、それいいね。オムニバス形式でいろんな話が描けるから、どの話を応募しても問題ないはずだ。ネタはいろいろ出てきそうだし。その社労士シリーズ、もらいだな」

 だんだんと話が盛り上がってきた。漫画賞の公募には出すけれど、落選した作品はお蔵入りせずにインターネットで公開していく。これで毎月一作のペースで作品をつくっていく。いつかこのシリーズが陽の目を見るまで続けていく。これで意見が一致した。

 早速一作目の作品作り開始。ワクワクしてきたぞ!


「ミサト先生、この案件についてなのですが…」

 あのマンガプロジェクトから三年。私の事務所には三人のスタッフがいる。そのうち一人は見習い社労士。後の二人は事務スタッフ。気がつけば、地元のそれなりの企業を顧問に持つ社労士になっている私。ここまで急速に成長できたのは、あのマンガのおかげだ。

 あのプロジェクトで監修役となった私。最初は意気揚々と三人でマンガを書き始めたが。毎月一作は必ず書いて、新人賞に応募したり雑誌社に持ち込んだりを繰り返していた。けれどなかなかすぐには陽の目を見ない。落選した作品はインターネットで公開。それを告知する日々を送っていた。

 が、このサイトが徐々に人気が出てきて。特に労働者からの感想が数多く寄せられてきた。このサイトが雑誌にも取り上げられ。マンガを書き始めてから一年後、今度は雑誌社の方から

「うちで描いてくれませんか」

という声がかかった。そのときにはすでに、社労士としての問い合わせが入り始めていた。

「梅田ミサトさんって、あのマンガの監修をしているんでしょ」

 いろいろな会合に顔を出しては、そういう声をいただくようになった。

「今度、ちょっとうちにきて話を聞いてくれませんか?」

 経営者の方からそんな声をちょくちょくかけられるようになって。徐々に仕事量も増えてきた。周りからは「先生」と呼ばれるようになり、仕事も一人じゃ回せない状況。事務のパートを雇い、それでも一人じゃまわせなくなり二人目を雇い。まだまだ仕事がこなせなくなり、誰かいないかと探していたところ試験に合格したばかりの社労士と出会い今の体制に至る。

 気がつけばとんとん拍子でここまできてしまった。まるでエスカレーターにでも乗ったかのように。しかし、思えば最初の一年間は辛かった。

 マンガで火がつくまでは、仕事らしい仕事はほとんどなかったからな。これも、私が社会に種を蒔いたから得られた成果だ。あのとき、羽賀さんに出会っていなければ。カフェ・シェリーでシェリー・ブレンドを飲んでいなければ。あの出会いもなかったし、今の私もありえない。

「さて、時間だ」

 私は時計を見て、スタッフに声をかけて出かける。今日は毎月一度の恒例となっているミーティングの日。そう、今では売れっ子漫画家となっているさとこさんと、原作者として新しい道を切り開いた相田くん、二人との打ち合わせ会だ。マンガの連載は今でも続いている。

 さらに嬉しい報告があるとか。

「あ、きたきた、こっちです」

 すでにさとこさんと相田くんはカフェ・シェリーに到着していた。この二人の雰囲気で、報告したいことはなんとなく読めている。

「さて、今日はどんな話から入ろうか?」

 私はあえて二人に言葉を誘導してみた。すると、急に二人はモジモジし始める。やはり、そうだよな。

「あの…ミサトさん…えっとですね…」

 相田くんが赤面しながら、視線をなかなかこちらに合わせない。横でさとこさんがつつく。

「ほら、ちゃんとはっきり言いなさい」

 小声で囁くさとこさん。

「えっとですね…ぼ、ぼくとさとこさん、結婚することになりました」

 私はにやりとわらって、意地悪ぽくさとこさんに聞いてみた。

「こんな優柔不断な相田君でいいのかな?」

「そうなんですよねー。でも、私の一番の理解者ですから」

 さとこさんは笑って答える。この二人の関係は薄々わかっていた。特に、連載が始まってから相田くんはさとこさんのところに通い詰めだったからな。私は二人の監修者としても見守ってあげていた。それが今日、ようやく正式に実が成ったというわけだ。

「おめでとう、さとこさん、相田くん」

パァン!

 私がそう言うと、突然クラッカーの音がカウンターから聞こえた。

「おめでとう!」

 マスターがカウンターからクラッカーを鳴らしてくれたのだ。ちょっとびっくりしたけれど、このサプライズはうれしい。

「今日は二人の婚約祝だから、私からこれをプレゼントするよ。マイ」

 そう言うとマイさんがケーキを運んできてくれた。小さなホールケーキだけれど、とてもかわいらしいデコレーションがほどこしてある。おかげで場はいっきに盛り上がった。

「私たちがこうやってこれたのも、ミサトさんが私たちに種を蒔いてくれたお陰です。本当にありがとうございます」

 さとこさん、急に私にそう言ってきてくれた。

「私!? 何もしてないよ」

「いえ、三年前にここであの話をしてくれなかったら。今の私たちはありえなかったのですから。本当に感謝しています」

 確かに、三年前にこのお店で私の悩みを話していなかったら。私も今の私にはなれていなかった。あれが種蒔きなのか。

「ミサトさん、良い種をこれからも蒔き続けていきましょうね」

「そうだね。私たちができることを精一杯やっていきましょう」

 種を蒔くと必ずそれは良い実となって返ってくる。これからも幸せの種を蒔いていかなくちゃ。それに気づかせてくれた羽賀さん、カフェ・シェリーに感謝♪


<種を蒔く人 完>

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