表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
E  作者: いーちゃん
61/105

heart attack


part-e



 私服姿のミオは茶色の大地へ降り立った。ASEEの人間だと悟られないための選択だったが、

(い、いいのか? こんな服……着たことなんてないのに)

 目の前には整髪店がある――その窓に映る自分の姿をしげしげと眺めて、ミオは思わず戸惑った。

 Tシャツの上に黒いジャケット、下は濃いめのジーンズ、靴はスニーカー。普段は軍服とアンダーシャツしか着たことがなかったから、自分が変人なんじゃないかと不安になる。

 荷物はほとんど持ち合わせていない――ポケットにカードケース、さらにその中には偽造の身分証明書が入っている。それくらいで、飲み物ひとつ持ってきていない。

 腕時計の針をみると、レゼアとの約束までは30分ちかく残っているようだ。

(……仕方ないな。どこか見てまわるか)

 ミオは歩きだした。

 ロシュランテは、クリスマスの惨劇から復興が遅れているようだった――街のなかは崩れた塀がいくつも見つかり、アスファルトは大穴が穿たれたまま舗装されておらず、立ち入り禁止を示す赤いコーンが並んでいた。

 街の人間はみんな修理や補強にかりだされているようで、何人かが工具や廃材を担いですれちがってゆく。

(……街のほうも、結構やられてるみたいだな)

 この被害が、たった一機によってもたらされたのかと思うと――ミオは信じられない気持ちになった。

 商店街のアーケードをくぐると、崩れた棟でも半数近くの店は営業していることがわかる。といっても、生活必需である食料品店、さきほど見かけた理髪店、さらにレストラン――は、現地調査に赴く政府高官を接待するためだろう。もう少し奥には電機屋がある。

 ミオはふと立ち止まった。

 電機屋の店頭に設置されたテレビへ、小さな人だかりができていたからだ。ぜんぶで15人くらい――中には子供もいる。

 ちょうどニュース放送が流されていて、彼らはそれを観ていたのだ――まるで、初めてテレビを見る人間のように。人垣は歩道ひとつぶんの幅でおさまっている。

 画面には北極戦線での映像が流されていた。それと世界各地でASEEへの対抗運動が起こっていること、さらに統一連合の反応。

 最後に映ったのは――

(……、)ミオは目を背けた。

 ――漆黒の機体が、北極基地を撃ち抜く瞬間だった。

 映像が止まり、今度はニュースキャスターが死者数・負傷者数を淡々と告げて、今度は専門家とコメンテーターの話。一人がテレビから離れると、何人かがつられて各々へと戻っていった。

 偉そうに主観を語る専門家の前に、ミオだけが立ち尽くしていた。

 悔しそうに、ぐ、と拳に力を溜めて。

 あの漆黒の機体に乗ってたのは俺だ、と叫んでやったら、どれくらいの人だかりができるだろう?

 北極で、あれだけの死者を出したのは俺のせいだと叫んだら、どれくらいの人間が俺を殺しにくるだろう?

(あぁ、わかってるつもりさ。好きで殺したわけじゃないって、それでも……)

 やるしかなかったんだ。

 歯を喰い縛る――顎が砕けるかと思うくらい、強く。

 でも。

 ミオは力が抜けたみたいに肩を落とした。こんなところで悔やんでいても仕方ないし、ただの無駄と徒労にすぎない。

 コツ、と脚に何かを感じて、ミオは思わず振り返った。ふくらはぎに当たったのは車椅子のスティール製タイヤだ。

 そこには、レゼア・レクラムがいた。


予告してる時間がないかも?

次は3月15日に更新です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ