Life
part-c
一方のレナたちも、北極戦線から2週間が経過していた――。
(あの悪夢のような光景から14日間……あたしたちは……)
レナはベッドの脇へ腰かけて、地獄のようなあの日を思い出した。
北極基地へ撃ち降ろされるビームの黒矢――それによって誘爆を起こした滑走路・コンテナが大量の熱を発生させ、氷盤を融解させたのである。
ずぶずぶと呑み込まれてゆく北極基地のなか、帰還場所を見失って撃ち抜かれてゆく〈エーラント〉、艦は敵の量産機〈ヴィーア〉の集中砲火を浴び、乗組員の命とともに北極海へと沈んでいった。
そう、〈オルウェントクランツ〉が撤退したあとに雪崩れ込んできたのは、ASEEの〈ヴィーア〉だった。総勢100機ちかくの猛攻を浴び、北極基地はやむをえず放棄されたのである。2000人規模の基地から生存が確認されたのは400人前後――つまり生き残ったのは5人に1人。そのなかにはレナやフィエリア、イアルも含まれている。
(3かける5引く1――は、12。それだけ殺して生き残ったの? ……あたしたちは)
レナはひとりごちて、
「……なんか、あたしが殺したみたい」
無気力のまま、ぼんやりと右手を眺めた。
あれからレナたちは、運良く攻撃を受けなかった〈フィリテ・リエラ〉に帰還して南下の一途――いったん補給活動を挟んだのち、再びASEEの基地へ向かう途中である。目的はもちろん、敵基地の全滅だ。
(……そういえば)
北極基地から逃げる途中、どうして〈フィリテ・リエラ〉は被弾が少なかったのか?
たしかにこの艦は新造艦というだけあって、戦艦のなかでは高速機動の部類にわけられる。だが、それだけが被弾の少ない理由なのか?
おそらく統一連合のなかで最主力となる艦は〈フィリテ・リエラ〉だろう――だからASEEは、もっと集中砲火を仕向けても良かったのではないか?
(不謹慎だなぁ、……。でも――)
逆を考えた途端、レナの思案はとてつもなく恐ろしくなるのだ。
ASEEが、〈フィリテ・リエラ〉を攻撃しないよう指示していたら?
(あるいは――ASEEと統一連合が、裏で手を結んでいたら?)
部屋の扉がノックされ、レナは間の抜けた口調で「入っていいよー」と答えた。
自動のドアから姿を現したのはフィエリアだ。黒髪は後ろで細くまとめられ、普段のように凛とした表情――彼女はウレタンゴム製のパイロットスーツを着込んでいた。
彼女は口を開いて、
「もうすぐ出撃です。準備をしておいたほうが良いと思いますよ」
「おっけ。あと二分したら行くわ」
「わかりました。先にキョウノミヤのところにいますから、後で来てくださいね」
「はいはーい」
ドアが閉まると廊下の蛍光灯の光も閉め出されて、部屋は一気に暗くなった。
「……やっぱり行くか。やることもないし」
レナは肌着のうえに上着を羽織って、友人を追いかけることにした。
さて。更新を忘れていたみたいだ、許してくれ。
……とハードボイルドぶってみたところで変わりません。ゴメンナサイ。
いくつか更新してみたかも。
校正+追加とか。がんばったー。詳しくは第一話冒頭『過去log』にて。
予告。
「行きたい場所がある。トモカ、ロシュランテへはどうやって行けばいい?」
ミオは危険を覚悟して、短い言葉で切り出した。
伝えなければならない、どうしても。これがラストチャンスだとしたら、なおさら――。
次話、第56話「皮肉」
サブタイトルが変わる……かも?