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E  作者: いーちゃん
58/105

Rize



 ミオは自室のベッドへ横になっていた。身体を縮めるように小さく折り、凍えるような孤独を抱くように。

 薄暗い部屋のなかは荒れていた――えんじ色の毛布は床へ投げ捨てられ、事務机の上には赤色の錠剤が散乱、破られた報告書は丸められて一部はごみ箱に、残りはドアの前に放られっぱなし。コップに注がれた水は、もう二日前のものである。

(……)

 北極戦線から14日間が経過した。2週間である。

(俺が、殺した……)

 彼は虚ろになった瞳で、右手をぼんやりと眺めた。

 この手が、指が――引き金を、トリガーを引いたのである。

 基地における惨劇は大きく報道され、嫌が応でもミオの耳へ飛び込んだ。

 死者数700名超、行方不明者1000名超。

 2000人規模の巨大な北極基地のなかで、生存が確認されたのは400人前後。残りは傭兵や作業員、外部からの援軍が計上される。だから、実質の死者は1000人以上だ。

(なんで……俺だって……)

 ――好きで殺したわけじゃないのに。

 敵の基地へ爆薬が埋められていたなんて知らなかった。ましてやスパイがいたことさえも知らなかった。

 しかしミオの放った一射は、その数よりも多くの生命を奪ったのである。

(くそっ……俺は、なんてバカをしたんだ……)

 ミオはシーツを強く握った。泣きたいと思ったが、涙などはすでに渇いている。

 いま、銃を渡されたなら――俺は誰を殺すだろう?

 たくさんの命を奪った、自分か?

 それとも……こんな自分を造らせた、オリジナルのミオ・ヒスィか?

(……)

 赤い瞳の少年は、こう言っていた。

『君は世界の中心にある――その中心を、君という存在から僕という存在へすげかえるだけだよ』

 彼はまるですべてを知っているような口調で、平然とそう言ったのだ。

 ――どういう、意味だ……? 俺が、世界の中心だと?

 ふざけてるなと、ミオは内心で首を横に振った。

 そんなワケがない。自分がそんな中心にいるのなら、こんな悲劇を起こすハズがない。

(俺はクローン……複製物なんだ、人じゃない。誰かを殺すほどの価値なんて……)

 ――ないだろ?

 ミオはむくりと起き上がった。平衡感覚が欠けてしまったみたいに、頭がくらくらする。彼は再び右手を眺めて、

(俺は……生きていて良いのか?)

 答えは返ってこなかった。

 ちょうどその時、青白いモニターからピピ、という軽快音。メッセージを受信したのだろう。フォルダを開いてみると、どうやら発信者はレゼアらしかった。そのタイトルには[Last Massage]という語が振られている。

 文面には、


Date :Today

Time :1500

Place :Xmas


「……」

 ミオは二秒のあいだ思案した。

 本日1500――つまり午後3時に、クリスマスの場所へ来い。おそらく、メッセージの文面はこういう意味だろう。

 彼はハンガーから上着を奪って、自室を後にした。


原稿が進まないかも? なので、また一話あたりを少なくしていきます(泣



 予告。

 一方のレナも、北極戦線から2週間の経過を迎えていた――。

 2000人規模の基地から、生き残ったのは400人程度。つまり、5人に1人が死んだ。

「……なんか、あたしが殺したみたい」

 無気力のまま、ぼんやりと右手を眺めた。


 次話、『Life』


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