第二十五話:EpisodE
レナは暗闇の中へ沈みかけていた。
ぼんやりとした意識の彼方から、少年の声が聞こえてきた。波打つ潮騒のように、引いては押し寄せて――
(また、この街で会おうって……。どんな結果になっても……約束は守るから)
ロシュランテという街で出会った少年の声である。忘れようもない、殺伐としているが透き通るように優しい声だ。
自分はあの少年を知っているように思えた。第六施設島での――あのモノレールでのやり取りだけでなく、もっと前から。
きっと何かの運命だったのかも、とレナは思わず苦笑したくなった。
また会えたらいいな。
純粋にそう思うのに、どうしてか心の奥深くが疼きだす。
あの街は――もう、ない。
(ヤクソク……)
守れないのかな。
守るには、どうすればいいのだろう。
この戦いを終わらせる。
それがヤクソクを守るための手段であり、唯一レナのできることなら。
(そのためには――あの漆黒の機体を)
〈オルウェントクランツ〉を討つ。
そして、立ち塞がる敵を殲滅する。
どれだけ血に汚れても構わない。
それでヤクソクが守れるのなら。
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レナが目を覚ますと、そこは軍用ジープの中だった。揺れる車体のなか、レナは固定されたベッドの上で横たわっていたのである。ご丁寧に酸素マスクまで装着されており、心拍数を測る計器が定期的に信号音を発していた。
「……目、覚めたかしら?」
声のした方向を探すと、キョウノミヤが口元を緩めていた。その傍らでフィエリアが毛布にくるまっているのを見ると、どうやら彼女も無事だったらしい。
よかった、とレナは安堵した。
「今は安静にしてね。返事はしなくていいから、わかったら首を振って。身体は痛む?」
レナは首を横に振ってみせた――が、それがただの強がりであることはキョウノミヤにはお見通しだろう。
キョウノミヤはふと笑んで、
「……イアルも無事よ。みんな生きててよかったわ」
キョウノミヤが指したほうを見れば、銀髪の少年がレナとおなじく横たわっている。ただ違うのは、レナが簡易ベッドであるのに対し彼には搬送用のキャスターが与えられていることくらいだ。シーツは血まみれの状態で酸素マスクまで装着されているが、のんきにいびきをかいている――のを見ると、救護班は彼の応急処置を放棄したのだろう。
レナは二度目の安堵をすると同時に、「なぜ?」とも思っていた。
機体はあれだけ無惨な状態なのに、そのパイロットだけ助かるものなのか?
まぁ、運がよかったのだろう。イアルは死んでも死ななそうなヤツだから。
「そうそう、男の子から伝言があるわ。あなたを助けてくれたのよ」
そうして告げられたのは『ヤクソク』だった。
世界で二人だけが交わした、小さな『ヤクソク』。
それは本当に本当に小さなものだけど――。
たぶん、世界で一番たいせつな『ヤクソク』だと思うから。
[あとがき]
今回は長めに書こうかなー
遅くなりました。
3日後って言ってたのが遅れて申し訳ありませんが、反省はしてません。ついでに言えば学習もしておりません。なぜならそれは作者がサルだからなのです。
さて。
いよいよ折り返しです。マラソンでいうと21.0975kmかぁ――中途半端。
まぁまぁ、ここまでこれたのは画面の前のアナタがいてくれたからです。本当に感謝してます。ありがとう。
感想をくれたアナタ。最高ッス。
個人的メッセージをくれたアナタも最高。なぜか音楽の話を送ってくれるワケですが。
高校生くらいだと何が好きなのかなぁ?
BUMP、RADが好きですって方は何人か見たけど、UVER好きはいないのか。のか。洋楽はわかりません。ん。
あ、携帯でこれ読んでるアナタ。パケット代の無駄ですからテキトーに読み飛ばしていいのですよ?
じゃ、恒例の次回予告して終わりますねー。
予告
身体に傷害を受けたことを追って、レゼアの除隊が確定する。
そんななか、不穏な空気を漂わせるASEE八幹部と一人の少年――彼らが口にする第三勢力・セレーネとは……?
そして、紅い瞳の少年とはなんなのか?
残されたミオに再び舞い戻る漆黒の機体。
この機体は、いつまで戦いを強要するのか……?
次話、第二十六話「ビハインド」
半分まで目を通してくださったすべての読者様と、立絵イラスト・ラフを描いてくださったヒロ41様に感謝を。