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E  作者: いーちゃん
21/105

第十九話:光の、速度

part-a



 キョウノミヤはいつもの通り、十二台のモニターに囲まれた部屋でコーヒーをすすっていた。

(……)

 無言のまま、考える。

 ウラにまわした諜報員の話では、中継基地――陽電子砲を使ったあの場所で取り逃したあの艦は、このロシュランテに入港したらしい。『らしい』という言葉を使えば不確定性が強くなるが、しかしこれは確実な情報なのである。

 カップを唇につけると、小さな警戒音が鳴った。

 見ると、街の中に光点がひとつ。〈アクトラントクランツ〉である。レナには悪い気もするが、ASEEが機体を出撃させた以上、彼女はそれに対抗しうる重要な「戦力」なのだ。

 あらかじめ用意していたメッセージを〈アクト〉へ送る。しばらくの間、彼女は待機である。

 続いてもう一度、警戒音が鳴った。計器が「原因不明」を指示、モニターが明滅する。

 一度みて――キョウノミヤはそれを疑問には思わなかった。ただ、あらたな熱源が探知されただけだと思っていた。

 その位置から、熱源が飛ぶまでは。

(……っ!? どういうこと?)

 機器のエラー? 見間違い? 

 疑りながら、計器のひとつに指示を飛ばす。内容は、飛んだ距離を解析可能な限りの時間で分割する――つまり、熱源の移動速度を探知させるのである。

 モニターに映された答えは、


 2.9980×10~5 km/s


 つまり、光の速度。

 あぁ――と内心で頷き、キョウノミヤは総てを理解した。否、キョウノミヤだから理解できたのかもしれないが。

(空間転移……)

 驚愕するはずの表情は、どうしてか笑みに歪んでいた。





part-b


 レゼア・レクラムは黒い〈ヴィーア〉で街の中心部へ降り立った。さいわいにして雪はやんだらしく、視界は有効――距離にして百メートル先にいる敵も、しっかり視認できた。

 合見えたのは、腰の背面に大太刀を負っている統一連合機の〈エーラント〉。

 レゼアは回線を開いて、

「フィエリアとかいったな、おまえ。わたしの行く手を阻む気か?」

『どうやらそのようですね。なぜか気が合う』

「後悔するなよ。今のわたしは、負ける気がしないのでな……!」

 レゼアの〈ヴィーア〉は半歩さがって、背面からミサイルポッドを噴出させる――同時にスラスター全開、上空へ飛び上がった。腰部からエネルギーライフルを引き抜き、続けて高速の連続射撃。

 〈エーラント〉は背面から、ゆらと大太刀を引き抜いた。刃の両面には小さな孔が幾つも穿たれており、そこから溢れ出したエネルギーを刃に纏わせる。

 下から、一撃を振るった。

 着弾したかに見えたミサイル群が、綺麗に斬り落とされて無効化される。後随するビームの矢は左腕シールドで防御――

 素早い動きだ。所作の切り返しには、隙のカケラも見られない。

 ひとりごちて、

「なるほど。タダでは通してくれないらしい」

『射撃機体には、負けませんから。前回は名前を訊きそびれた――斬る伏せる前に訊いておく』

 声が低くなる。どうやらお遊びはおしまい、と言いたいようである。

 レゼアは少し迷ったあと、敵機を正面から見据えてやった。

「ASEE所属、レゼア・レクラム。この街と……運命を共にする女だ。

 ただ、ひとつ気に入らないから訂正するが――ただの射撃仕様と思うなよ……!」

 ミサイルポッドの第一層を切り捨て、第二層が噴出される――射撃の群波は上空へ舞い上がり――

 同時に〈エーラント〉の大太刀が、纏ったエネルギーを光の弧として、

『フィエリア・エルダ・ヴェルツェヘルム――参る』


さて、今回もだらけましたね。例によって作者が。

次回は本気で作ります。


予告

レナがいなくなり、意気消沈ながら街を行くミオ。

その瞳に映るのは、炎に呑まれる凄惨な街……

〈オルウェントクランツ〉が無いいま、自分はどうすればいい?

矢先に出会う緑色の機体。強すぎる〈イーサー・ヴァルチャ〉は、ミオの指針になりうるのか?

次話、第二十話「茫然」

すべての読者様へ、またまた感謝を。

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