第一話:孤独な、群集
過去log 2010年から
~1/3 :作者の脳内修正完了
~2/10:第1部-第7部校正完了
~2/10:活動報告など更新
~2/11:第8部-第17部校正
~3/9 :第19部校正
~3/21:タグにキャラ投票作成.第21部校正
~4/1 :第0部更新.活動報告更新
~4/12:第23部更新.[聴こえないBGM]設置?
~5/20:第23-24部校正。
~7/11:第25-26部校正。
最初はただの作業用ロボットだった。
それらはいつの間にか火力を有した陸戦兵器となり、空を飛び、そして創造主であるはずの人間を殺せるくらいまで進化してしまった。
人型兵器開発の着手からおよそ十二年――世界の歴史の中心軸は「人類」から「兵器」へと移行を遂げてゆく。
そして――
統合国家統一連合機構。その設立。
あらゆる軍事、兵器の共同保有や不可侵協定を盛り込んだ巨大国家同盟の誕生である。
これに対して反感を露にした西側諸国は〈ASEE〉――(Association of Special Extended Entente)を設立、世界は大きく二分される。
それから半年が過ぎ、一年の月日が流れた。
宗教、人種、その他の理由から、小さな憎しみの連鎖、報復の連鎖が繰り返される。
その火種が業火になるとは知らず、人々はその火を燻らせているだけだった。
モニターの中は、紛争の話で持ちきりだった。
第六施設島を往復する、二区間だけのモノレールの中だ。車両の入り口付近に備えられた画面の中では、偉そうな政治家たちが意見をぶつけ合っている。もちろんこのまま戦争状態へ突入するか否か、だ。
買い集めてきた商品の袋を両手に、レナ・アーウィンはぼんやりと窓の外を眺めた。湾岸近くには工場みたいな建物が数多く並び、反対の方向を眺めやると今度は市街地が見える。どうやらこの路線は、軍事基地と民間――あるいは戦争と日常を分割する挟間に位置しているらしかった。
車両が大きく減速する。もうすぐ停車するらしく、何人かがドアの前に立ち始めた。
レナは、ふとその並びの反対を見た。東洋系の顔立ちをした少年が、扉へ背を預けたまま立っている。味気のない金属ドアには、よく見れば札みたいな注意書きが貼られていて、五センチくらいの間隔がだらしなく開いていた。
故障だ。
(……危ないかな)
そう思ったレナは大股で彼に近づき、
そこにいたら危ないよ?
注意した。
車両が再び減速。大きく揺れた。
少年は前髪をくしゃ掻いて、
「……ドアが開いたら、簡単に死ねるだろ。どのみち、俺はこの世界に殺される」
駅のホームへ、列車が滑り込む。
ドアが開いた。
意味もない出会いだった。
レナはそう思った。思ったはずだった。
擦れ違うだけでは、なかったのだ。
冬の白い吐息をしながら、レナは少年の背を見送った。
次話、第二話「苛立ち」