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E  作者: いーちゃん
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第八話:カオス

 キョウノミヤは暗闇の中、席に腰を落ち着けていた。

 作戦前のコーヒーを飲み終えて二十分くらい経った頃である。

 ――さて、

「……そろそろ始めようかしら」

 部屋中のライトが一斉に点灯した。

 真っ暗だった部屋には、真ん中の椅子に座るキョウノミヤを取り囲むかのように、十二台のコンピュータがずらりと並んでいる。

 続いてモニターも点灯――各々のシステム立ち上げ、および処理を開始。画面には意味不明とも思える数値が踊る。

 キョウノミヤはその一文字一句を逃さずに目で追った。

 すべてを理解している――これは自分が作り上げた、十二個のプログラムなのだから。

 一台が、急に処理をやめた。

 動きが止まったモニターの隅で、単語を連発させているのだ。

「どうしたの、エミリー? 反抗期?」

『……』エミリーと呼ばれたコンピュータはなにも答えない。

 ――が、その一言だけで再び処理を開始した。

 それぞれ十二台には、開発者であるキョウノミヤによって名前がつけてある。それぞれに役割が分担されており、それらを混同させないためである。

 コンピュータへの指示は口頭で充分だ。いちいちキーボードを叩いていては時間が足りないとの考えで、万が一のとき以外、キョウノミヤは一切手を出さない。

 少し時間を置いて、全ての台が完了の標をあげた。

 よし、いい子ね――とキョウノミヤは頷いてみせてから、

「バレラは艦の回避プログラムを、

 クランは索敵、アンネは敵データ検出、

 シフォンは艦内圧制御――」

 十二台のコンピュータすべてに、指示を与える。それらは同時に了解を取り、それぞれの仕事をこなしていく。

 そして最後――

「アイ、あなたには陽電子砲の充填と引き金を任せるわ」

『……』


 1st-phase>error.

 2nd-phase>error.

 3rd-phase>error.

 all<error.


 画面が赤く明滅。どうやら拒否を示されたらしい、とキョウノミヤは気がついた。

 小さく笑んで、

「……そうね。あなたは優しい子だったものね」

『……』

「わかったわ。バレラ、アイと代わってあげて」

 指示を飛ばすと、コンピュータはようやく落ち着いたらしかった。

 大きなスクリーンに、敵と〈フィリテ・リエラ〉の布陣が赤と青で示される。

 敵艦はかなり先行しているらしく、

 ――沈めるのは難しいか……?

 この様子では、敵――つまりASEEの〈ヴィーア〉群――を突破しなければならない……

 思うと同時に、敵艦から何かが射出された。

 熱源探知。識別は、すでに赤で登録されている――

『キョウノミヤさん!?』

 画面にレナが割り込んだ。

『行かせてもらいます! アイツだけは、討ちたいんです』

「……。……その様子だと、もう忠告では止まらなそうね。いいわ。あなたは〈オルウェントクランツ〉を引きつけて。その隙に我々は他を叩きます」

 簡単にいくわけがない――それは両者の間で合意されていた事実だった。

 ただ、〈オルウェントクランツ〉さえ討ち取れば、すべて済む話である。

 ――可能性は低くても……やる価値はある。

 赤い機体が、加速とともに飛び出していく。

 キョウノミヤは、試しにプログラムに訊いてみた。

「レイナ、〈オルウェントクランツ〉が墜ちる可能性は?」

 モニターには、


  x`=λx(1-x)

  λ《1


 の方程式だけが示されていた。

「未来予測の決定論的(ロジスティック)方程式……『わからないけど、可能性は低い』って――器用な答え方するのね」


ありがとうございました。

さて、今回はあとがきを少々長めに書きたいと思います。

読者数が850を超えました。素直に驚きの一言です。

3日放っておいたら読者数が300も増。一日100アクセスですか。その内12カウントは筆者が回しました。自白します(泣

一段落するまであと少しなので、しばらくお付き合いくださいませー。


予告。

レナは再び漆黒の機体と合間見えていた。

戦場での邂逅は、彼らの運命なのか?

次話、第九話「唸り」


ここまで相手にしてくださった、すべての読者様へ感謝を。

あと一つで、話数が二桁になります。

これから、各文章が短くなると思います。

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