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50.虚無
「だからね、私は太郎と武者小路くんがうまくいけば良いなって思ってる」
結局そこに戻んの!?
「武者小路くんって、女の私から見てもすごくカッコイイし優しいし……太郎が惚れないわけないと思うんだよね」
まぁ、ヨシトシは……良いやつだよな。
「で、でもさ……俺はヨシトシより、フー……」
「私は良いの!! 二人が幸せなら、それで私も幸せだから!」
「え、ちょ……」
「今日はそれを伝えたかっただけ! 聞いてくれてありがとね、太郎!」
「あ……」
フー子は立ち上がり、颯爽と部屋を去っていく。
パタンと扉が閉められると、俺だけ一人残された。
「いいぜ、俺の女になれよ……」
密閉された空間に、虚しく響くぜ……。




