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誘惑と欲求の輪舞

作者: 氷見

以前投稿した【欲望の輪舞】を少し書き直したものです。

 今日は待ちに待ったお見合いの日だ。


 相手は隣国の王子であるローレンス。


 ローレンスとは幼少の頃に一度会っているのだが、私は初めて会った時に一目惚れしてしまった。

 その時からこれは運命だと思い、自分を磨いてきたつもりだ。


 家の者を使い、ローレンスの好みを調べたりと色々な事を伝手を使って情報を集めた。

 だからこそ、今日のお見合いは失敗する訳にはいかないし、なんとしてもローレンスの心を射止めなければならない。

 お見合いをした時点で、問題が無ければ嫁ぐことが決定されたと言えるが、私はそこに愛が欲しいのだ。

 

 ローレンスに愛人が……なんて考えたくもない。

 王族なら第二夫人、第三夫人を囲うのが当たり前かもしれないが、私はローレンスを独占したい。


 だからこそもう一度言う、このお見合いでローレンスの心を射止めたいのだ。


 そんな覚悟と執念と情熱と愛情を込めたお見合いが始まったのだが……

 世の中はそんなに甘くない、と言わざるを得ない。



 私ことマリアには異能がある。


 うちの家系では、しばしば異能を持って生まれてくる者がいる。

 異能を持った者がその力を使い、のしあがってきたと言ってもいい。


 そして私の異能は、相手の欲求を知る事が出来る。

 微妙な異能だが、その人が今一番気になる事や、欲しているものが分かるのは、今の私にはタイムリーな異能と言える。


 例えば、今横でワインについて語っている父の頭には、持参してきた希少なワインの事でいっぱいだ。



「いや~このワインは、特に良い年のワインでね、もう五本しか残っていない、その一本がこれなんですよ。見てくださいこの輝き、そしてこのカモミールのようなこの香り、味はなめらかな苦みの中に熱を感じる……」


 父自らワインを開け、コルクの匂いを嗅ぎながら、以前飲んだ時の感想を語っている。

 参加している者は、もう充分という顔をしながら父の事を生温かい目で見ているが、そんな事をまったく気にせずに続くワイン語り。


 父自ら自分のグラスにワインを注ぎ、後は侍女に任せてワインの匂いを堪能しながらうんちくを披露している。

 そんな父を見ながら母が笑っているが、目は笑っていない。


 そして母が今現在欲しているものは、私とお見合いしているローレンスだ。

 きっと私の結婚相手として欲しがっているのだと、自分自身に言い聞かせる。


 そうでないと、夫になるローレンスが母に、変な意味で食われるなんて想像したくない。

 私は母に似ているので、別口なんて考えられたらと思うと気が気で無い……いや、もう母とローレンスの事を考えるのは止めよう。


 問題は母にだけあるわけではない、ローレンスの父親が、私を欲しているのも大問題だ。

 いや、私の母と同じで、きっと息子の嫁として欲しがっている……と思いたい、きっとそうだと思い込みたい。


 そうでないと、嫁いだ先で襲われたり、なにやら色々と調べられて脅されて……そんなの絶対嫌だし、ローレンスの父親と拗れたくもない。

 けど……ローレンスを渋くしたら、ローレンスの父みたいなナイスミドルになるとは思う……ってこれ以上考えてはいけない。


 唯一平和なのはローレンスの母親だけだ。

 ただし、お見合いの席で息子の嫁になるかもしれない私が居るのに、ずっと猫を欲するのはやめて欲しい。


 そもそもお見合いが始まってからずっと猫を欲している、意味が分からない。

 もしかして猫離れ禁断症状という病があるのだろうか、そんな病があればローレンスの母親のように、常時猫を欲するのかもしれない。

 それともこの部屋の中に猫に関するものがあり、それを欲しているのだろうか……取りあえずローレンスの母親に関しては謎すぎて困惑する。


 ようやく父のワイン談義が終わり、ワインを皆で飲み、そのおいしさに感嘆の声を上げる。


 ただ一人冷や汗をかいているローレンス以外が、だ。


 理由は簡単だ、ローレンスはこのお見合いの最初からずっと同じことを考え欲している。


 それは尿意だ。


 信じられないがお見合い開始直後からずっと尿意を処理したい気持ちで頭の中が一杯のようだった。


 意味が分からない、そんなローレンスの事も好きだが、それはそれとして始まる前に済ませておきなさい、と小一時間説教したい。

 しかもお見合い開始後から何故かトイレに行かない。

 さっさとすませばいいのに空気を読んでいるのか、トイレに行かない。


 空気が読めるなら、先に済ませてこのお見合いに臨んでほしかった。


「マリアさんは、奥様に似て美人でいらっしゃる」


 ローレンスの父親がそう言うが、今欲しているもの第一位は私の事だ。

 本当に勘弁して欲しい。


「いえいえローレンスさんもご両親に似て凛々しいですわ」


 私の母がそう言うが、当然今欲しているのはローレンスだ。

 本当に母は黙っていて欲しい。

 

 この二人は本当は何を欲しているのか、一週間くらいかけて問いただしたい。


 こんな状況で、私が心の中で頭を抱えているのだが、ローレンスはいまだに尿意と戦っている。

 いい加減ささっとトイレ行けばいいのに……と考えているとローレンスの父親が言う。


「マリアさんは魔法学院を首席で卒業されたとお聞きしましたが、どのような魔法が得意なのかな」


「雷の魔法に傾倒してまして、特に青い雷を出そうと苦心していました、お陰で城の広場は酷いありさまで……」


 何故か父が代わりに答えたが、その言葉は私を良く言わずに愚痴を言っている気がする。


 そもそも青い雷に固執していたのは、家の家紋が青い鳥である【鸞】だからだ。

 異能にはその【鸞】が深く関わっているらしい。

 代々家の者の異能について書き記してある書物を読み解くと、青い炎と青い雷の化身が【鸞】らしい。

 それを調べるついでに青い雷の魔法を作ったのだ。  


「息子のローレンスは雷魔法も得意ですから、相性もばっちりですな、わははは」


 ローレンスの父親がそう言いながら笑いだす。

 いまだに私の事を欲している。

 いい加減違うものを欲して欲しい。


「お父さん、ローレンスは青い炎の魔法が一番得意ですよ」


 にっこりと笑いながら、ローレンスの父親に窘めるように言う。

 その言葉を聞き、一度笑いが止まるが、気にせず再度笑い出す。


「ローレンスさんは剣術も達人級とお聞きしています、体が引き締まっていて良い体をしていますわ、おほほほ」


 私の母がローレンスの事を熱っぽい視線を向けながら言う。

 当然欲しているものはローレンスだ。


 そんなローレンスの魅力的な引き締まった体は、現在尿意を我慢する事に使っている。


 いや、違う……今は尿意と便意が交互に競り合っている。


 まさかの便意が途中参戦だ。

 本当にお見合い前に処理して、このお見合いに臨んでほしかった。


 こっちもお見合いに集中できないし、良い歳なんだから用がある前に一度トイレに行けと一か月くらい毎晩説教したい。

 ここまで来るとテーブルを叩いて、早くトイレに行かせたい気分だ。

 

 だが、ローレンスに好かれたい私にはそんな事は出来ない。



 その後も両親同士が会話している中、彼は尿意と便意の二方面と戦っていた。

 それを見守る私……これお見合いだよね? という疑問が頭に浮かびながら彼がトイレに行くのを願いながら静かに待つ。


「ここらで若い二人に任せて、私達は隣の部屋で見守っているよ」


「マリア、頑張るのよ!」


 母が私の耳元で言うが、いまだにローレンスの事を欲している。

 再度、「母は関係ない、きっと息子として欲しい」と自分に言い聞かせ、精神を安定させる。

 ローレンスの両親も、自分の息子に何か声を掛けて隣の部屋へと消えていく。


 侍女達も両親についていき、この部屋には私達二人だけになる。


 だが、ローレンスはいまだに尿意と便意の二方面作戦と戦いながら、心ここにあらずという感じで、椅子に座っている。


 なんとかトイレに行かせたかったが、ここまで来るとローレンスの抱える尿意と便意に私は打ち勝つことが出来るのだろうか、という疑問が浮かんでくる。

 ローレンスを振り向かせるような女性に私は成長しているのか、そんな疑問をここで払拭出来るのではないのか……という思いが募る。


 ならば、やって見てもいいかもしれない。

 取りあえずローレンスはむっつりスケベ、という情報を持っているので、お色気で誘惑してみようと思う。


「少々この部屋は暑いですわね」


「そ、そうですね……」


 そんな事を言いながら、降ろしている長い髪を、アップにしてうなじを見せつける作戦に出る。

 角度なども考え、首筋やうなじがローレンスに見えるようにアピールする。


 ローレンスの、欲求ランキングトップスリーにうなじがランクインし、心の中でガッツポーズをしながら「良し!」と思うが、直ぐに尿意と便意に負けてしまう。

 だが、こちらの動きでうなじが、ちらちらと見えているのか、時々うなじがトップに躍り出る。

 そんな事に何故か嬉しさが込み上げてくる。


 しかし、ローレンスの尿意と便意の意志は強く、うなじがトップに立つ時間は少ない。

 もっと攻めれば勝てると、次の作戦へと移行する。


「申し訳ございません、上着を脱がせていただきますわ」


「え……あ……」


 返答を聞かずに、ドレスの上に羽織っていた服を脱ぐ。

 中のドレスはノースリーブなので、腕が全部見える。

 ついでに胸元の紐も軽く外し、胸の谷間を見せつける。


 ついにローレンスの欲している欲求ランキングトップスリーに、私の胸の谷間、二の腕、うなじがランクインする。


 尿意と便意に私の魅力が勝ったのだ。

 やったやった、とほくそ笑んでいると、やはり欲求の持続時間が少ないのか、だんだんと尿意と便意がランクアップしてくる。


 まだ勝敗は決定されていないようだ。

 もっと畳みかければ、圧倒出来るはずだ。と思いながら私は次の作戦を実行する為におもむろに立ち上がる。


「ど、どうされましたか?」


 ローレンスは尿意と便意との闘いに集中していたのか、私が突然立ち上がった事に驚きながら声をかけてくる。


「お隣りに座ってもよろしいですか?」


「……どうぞ」


 こちらをちらちらと見てくる。

 私の事を意識してくれているという実感が沸き上がり、闘志がわいてくる。

 そんな事を思いながらローレンスの父親が座っていた席へと座る。


「それにしても暑いですわね」


「はい……」


 そこまで暑くはないが、暑いといいながら胸元をぱたぱたと動かす。

 今は私の左横にローレンスがいるおかげで、少しだけ胸が見える範囲が広がっている。

 ローレンスは見て無いよ、と顔を動かさないようにしているが、目が胸元にいっているのがこちらには分かる。

 当然、おっぱいが欲求ランキングのトップに君臨し、尿意と便意を見下ろしている。


 ここまで私がやっているのだ、尿意と便意ごときには負けられない。

 しばらくの間は大丈夫だろうが、時間の経過と共に尿意と便意がおっぱいを降してしまう、まだまだ攻勢を維持しなければ……


「わたくし、学院時代に小さな竜を見た事がありますの、小さいと言ってもこれくらいのでかさでしたわ」


 そう言いながら私はローレンスのいる側にある左腕を上げる。

 ノースリーブの私の脇と横乳がローレンスを襲う。

 ローレンスは驚く顔をしながら、その目は横乳、脇へと向けられ、欲求ランキングに参戦する。


「竜を見られるとは……運がおありですね……」


 ローレンスの頬が若干赤くなっている。

 きっと私の体に見惚れてくれているはずだ、気合をいれて処理したのだ、そうでなくては困る。

 まだまだ尿意と便意がランキングに現れる事があるので、攻める為に提案する。


「少し庭園を歩きませんか? もっとローレンス様の事を知りたいです」


 そう言いながら椅子を近づける。

 ぶっちゃけると、かなり細かくローレンスの情報を調べ上げている。


 だからこそ攻勢を維持する為に、ドギマギしているローレンスの右腕に腕を絡める。


 少しだけ胸をぽよんと当てると、彼の欲求ランキングが全ておっぱいだけになる。

 所詮ローレンスも男だ、男はおっぱいには勝てないものだ。


 ローレンスは頭を縦に力いっぱい振りながら立ち上がるので、腕を組んだまま外への扉へと向かう。


 庭園には小さな池もあり、その池のほとりには展望小屋がある。

 そこへと歩きながら、会話をする。


「ローレンス様はどういった女性がこのみなのでしょうか?」


 直球すぎたかもしれないと思ったが、気になるのだから仕方が無い。

 集めた情報には、積極的なエッチなお姉さんが好きらしいが、本当にそうなのかはローレンスしか知らない。

 それに集めた情報である好みの女性のタイプは、同性同士の馬鹿話しでちょっと大げさに言ったのかもしれない。

 だからこそ本人に聞けるなら聞いてみたくなるものだ。


 いまは私の腕組みおっぱい攻撃に慣れたのか、尿意と便意がおっぱいに勝っている時があるが、そのたびに軽くおっぱいを腕に当てて、尿意と便意をトップにしないようにしている。


「そ、そうだね、マリアさんみたいな女性が好きだよ」


 剛速球で投げ返された、お世辞だとしても好きと言われると凄く嬉しい。

 ちょくちょく尿意と便意が、ランキングを荒らすのが雰囲気をぶち壊している。


「ちょっ、やだ! 恥ずかしいですわローレンス様!」


 軽くローレンスの背中を叩くつもりだったが、思った以上に力が入ってしまった。

 そのせいでローレンスは目の前の池に吹っ飛ぶ。


「ローレンス様! 大丈夫ですか!?」


「ははは……大丈夫だよ。意外に力強いんだね」


 そう言いながら尿意と便意と服を変えたい、という欲求がランキング上位を占める。

 さすがにこの状況では仕方が無い。


 池はそこまで深くなくローレンスの膝上くらいしかない。

 こちらに歩いてくる途中に躓き池に倒れ込む。


「ローレンス様!」


「ははは……ちょっと躓いてしまったよ」


 そう言いながらゆっくり起き上がり、こちらに向かって歩いてくる……が。

 ローレンスの欲求ランキングから尿意が消えた……。


 まさか池に倒れた隙にしちゃったんじゃ……。

 いやまだわからない、濡れたせいでお腹が冷えて便意が勝っているのかもしれない。

 ローレンスが池から上がる時に合わせて、私はスカートの膝上あたりを魔法で切る。

 その切ったスカートをタオル代わりにローレンスに渡す。


「申し訳ございません……今はこれでお拭きください」


 ローレンスは驚きながらも私の生足に目が釘付けだ。

 だがそう言いながらもスカートの切れ端を手に取り、照れながら顔を拭く。

 便意と生足とマリアのスカートの三つが競い合うように欲求ランキングに上がる、やはり尿意は無くなっているようだ。


「ここまでしなくても良かったと思う……けどありがとう」


 ありがとうと言った時に、太ももが欲求ランキング第一位にサンサンと輝いていた。

 目線も太ももに行っている。

 思い切ったかいがあったようで嬉しい。


 そのまま展望小屋に移動して、テーブルを挟み座る。

 ローレンスの服は風の魔法で少し乾かしてから座っている。


 トイレと一緒に着替えに行けばいいのだが、何故かこのまま続けるようだ。

 いい加減、便意が欲求ランキングにちらつくのをどうにかして欲しい。


「マリアさんはコーヒーと紅茶はどちらが好みなのでしょうか?」


「そうですわね……どちらかというと紅茶ですわね」


 断然紅茶派なのだが、迷うふりをしながら、テーブルに両肘をつき、前かがみになる。

 すると、胸を少しはだけさせているので胸元が開く。


 ローレンスは生唾を飲みながら、私の胸元に視線をちらちらと向けてくる。

 思惑通りローレンスの欲求ランキング第一位はおっぱいだ。


 私の答えを聞いたローレンスが指を鳴らすと、どこかで魔法の音が聞こえる。

 やがて侍女が歩いているとは思えない速度でこちらに来ると、紅茶を素早くテーブルに置き、一礼して帰っていく。


「どうぞ」


 そういいながら紅茶を飲むローレンス。

 こんな事をする前にトイレに行って欲しい。


 たしかに今は波が穏やかなのか、便意がランキングに食い込んでくることは少ない。

 だが、まだ油断はできないので攻勢を維持したい。


 私はテーブルに対して斜に構え、ローレンスから足が見えるように椅子に座っている。

 当然ローレンスに足を見せるためだ。便意が勝った時を見計らって足を組み替えている。

 先ほど膝上で切ったついでにスリットを入れていたので、ここでそれを活かす。

 当然、足、太もも、スリットなどがランキングに入ってくる。


「やはり紅茶が一番美味しいですわ」


 あまり気にしていなかったが、ローレンス家の侍女が入れてくれた紅茶が、あまりにも美味しかったので思わず声にだしてしまった。


「僕も紅茶派だからマリアさんと一緒で嬉しいよ」


 満面の笑みを私に向けてくれるのは嬉しいが、その瞬間に便意が欲求ランキング第一位になるのはいかがなものか。


 ローレンスと一緒という言葉が嬉しくて、誘惑するのを忘れていた。

 折角良い笑顔だったのに台無しになった気分だ。


 そのまま良い雰囲気のまま軽いお茶会が終わり、どうしたものかと考えていると、ローレンスが提案してくる。


「あちらに薔薇園がありましたけど、見に行きませんか?」


「……よろしいのですか?」


「まだ時間はありますよ」


 笑顔で答えてくれるが、わたしの「よろしいのですか?」はトイレに行かなくてよろしいのですか、って意味で言ったのにスルーされた。


 相変わらず便意と戦うローレンスは一体どこに向かっているのだろうか、もしかしたら便意を我慢する性癖……そんなものあったとしても勘弁して欲しい。


 ローレンスの腕に腕を絡めて薔薇園へと向かう。

 当然、便意がトップに躍り出るのを阻止したいからだ。


 薔薇園を二人で眺めながら歩く。

 色とりどりの薔薇が咲き乱れ、庭園の雰囲気は良くこんな場所で好きだと言われれば最高かもしれない。


 そんな事を妄想しながらローレンスを見ると、欲求ランキングに便意がちらつく。

 良く歩きながら便意を我慢できるな……と思いながらローレンスを再度見ると、目と目が合いドキッとするが、便意がちらつき気持ちが萎える。

 

 だが、ローレンスからすると良い雰囲気に見えるのか、ローレンスが私の肩を掴み私を見つめてくる。

 そんな真面目な顔をしたローレンスの欲求ランキングでは、便意とキスが壮絶なトップ争いをしている。

 その瞬間だけでもいいから、キスがトップを維持して欲しい、と願う。


 そんな私の思いとは裏腹に、息を荒げながら少しづつローレンスの顔が近づいてくる。

 便意とキスがいまだに壮絶な戦いをしている。

 そんな状況でも、近づいてくるローレンスのおかげで私の心臓は早鐘を打つように早くなるが、それが逆に私の頭を混乱させる。


 ローレンスの事が好きだし、悪く思われたくないけど……もう、我慢できない。


「いい加減トイレに行って、すっきりさせてきてください!」


 遂に言葉にしてしまった。

 私は言わずにはいられなかった。


 私の言葉に驚き、一時停止したローレンスだったが、欲求ランキングにある便意の順位がころころ変動するのが更に私を不快にさせる。


「どんだけ便意を我慢するんですか!」


「もしかして分かるのかい?」


「え?」


「僕も人の欲求が分かるんだよ……」


「じゃあ何故私が貴方にトイレにいかせようと、必死に願っている時に気付かないのですか!」


「マリアさんはお見合い開始からずっと、僕を欲していたから……それに、我慢できなくてトイレに行こうと思うたびに、マリアさんが誘惑するから行くに行けなくて……」  


 顔が熱くなるのが分かる。きっと今の私の顔は真っ赤だ。

 まさか私の誘惑攻撃が原因でトイレに行けなかったとは想定外すぎる。


 今更だが私はいったい何故、ローレンスの尿意と便意に張り合っていたのだろうか……

 そう考えると何故か段々怒りが込み上げてくる。


「そうだとしても、ご自身の意思をもってトイレぐらい行ってください!」


「ははは、たしかにタイミング良く誘惑されるな~と不思議には思ってたいたのだけど、ほら折角頑張ってくれてるから……ね?」


 ローレンスがそう言いながら、最後の最後に便意が欲求ランキング第一位に輝く。

 イラッとしてしまったのか、叫んでしまう。


「いい訳はいいので早く行ってください!」


 そう叫ぶと共に、私の恥ずかしさやら、怒りやらが混じったせいなのか、ローレンスに向かって青い稲妻が落ちる。


「ぎゃああああ」


 不意打ちを食らったローレンスは防御魔法も回避も間に合わず直撃を食らう。

 それと共に薔薇園に濃い薔薇の臭いが広がっていく。


「ああ……ローレンス様……」






 こうして一国の王子と一国の王女のお見合いは幕を閉じた。


 その後、二人の間でなんやかんやあったのだが、問題なく結婚した。


 ローレンスはマリアの尻に敷かれているそうだが、本人は幸せらしいので他人がとやかく言うものではないだろう。


 当然、愛人も第二夫人も作らなった。


 この二人が二つの国を統一させるのはまた別のお話だ。


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