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伝説の勇者一行がまだ生きている件について  作者: 黒崎マコト
プロローグ 冒険者になる勇者
9/10

第9話 やられ役登場、しかしそれよりも衝撃的な事がある

「では、こちらがアリファーラさんとミレットさんのギルドカードになります」


ラーシアから渡されたギルドカードは先程説明された通り、Fランクである事を表す紫色であった。マロアも更新されたギルドカードを受け取っているが、俺達とは違って緑色だ。Sランクを目指してみたい俺にとってはEランクなど通過点に過ぎないが、上がれる条件は何なんだろうか。


「ラーシア、Eランクに上がるにはどうしたらいいんだ?」

「Eランクに上がる条件は依頼を20個解決する事です。アリファーラさん達はまだFランクの依頼しか受けられませんが、パーティにEランクの冒険者が1人いればEランクの依頼も受けられますよ」

「Eランクより上は駄目なのか?」

「はい、例えDランクやCランクの冒険者がいても、1つ上の依頼しか受けられません。しかし自分より下のランクの依頼はどのランクであろうと受けられますよ」


なるほどな……つまりマロアが1人いればEランクの依頼も受けられるのか。Fランクの依頼がどれも楽そうだったらマロアに頼んでみるのも手だな。


「依頼はそこのクエストボードから受けられますが……今日は受注だけにしておいた方がいいですよ?」

「何でだ?」

「日がもう沈むからよ。外を見てみなさい」


ミレットと共に窓の外を見れば、空が赤く染まっていた。確かに魔物は夜になると凶暴性が増すからな。止める理由は分かる。


「本当だね…………って、ああっ!?」

「どうした?」

「ボク、まだ甘い物食べてない!早くしないとお店が閉まっちゃうよ!!」

「いや、まだ大丈夫だとは思うが……ラーシア、この辺りで甘い食べ物が売ってる店ってないか?」

「えっと……あっ、確かギルドを出て右の方に進むとよくクレープ屋さんが来ていますよ」


クレープ?聞いたことない食べ物だな。まぁ、数百年の間に生まれたんだろうが、果たしてミレットが食べたがるかどうか……。


「クレープッ!うん、名前からして甘いに違いない!アリファーラ、早くいこっ!いこっ!」

「いや、その前に依頼を受注……」

「やぁだ〜っ!食べたい食べたいーっ!」

「アリファーラさん、別に依頼の受注は明日でもいいと思いますよ?Fランクの依頼が無くなるとは思えませんし」


まぁ、一番最低のランクだからな。ランクが高い冒険者が受けるとは思えないし、必然的に多く残ってしまうんだろうな。


「じゃあ、そうするか」

「やったーっ!クレープッ♪クレープッ♪」

「なら私が案内するわよ。私もよく買ってるし、今日も帰りに食べてく予定だったからね」

「そうなのか。それならよろしく頼む」


俺達はこの街の地理について詳しくないからな。住んでる人にとっては簡単な道でも初めての人は迷う事だってあるだろう。だったら初めから案内してもらえばいいだけの話だ。


「それでは、明日お待ちしていますね」

「ああ」


ラーシアがいる受付から離れ、俺達はギルドの外に出ようと扉へと向かっていくが────


「おいおい、そこの3人ちょっと待てよぉ」

「っ、ア、アルドさん」


……やはり来たか。そう思うのは俺達の前に現れたのが先程からこちらを睨んでくる奴らだったからだ。その一番前に立つ大柄な男……アルドと言うらしいが、実に悪そうな笑みを浮かべているな。


「俺様はCランクのアルド・ヨルテムと言うんだがなぁ……ここはお前らみたいな()()が来るところじゃねぇんだよ」

「……ガキ?」


ミレットの眉がピクッと動いた。まぁ、ミレットは自分の体が小さい事を気にしているからな。そうやって呼ぶのは自殺行為に近い。今回は俺やマロアを含めて『ガキ』と呼んだから抑えているみたいだが。


「しかも嬢ちゃん、エルフなんだって?随分と可愛いじゃねぇか。そんな小僧より俺らが楽しませてやるぜ?」

「そうそう、俺らが可愛がってやるよ!」

「色々となぁ……げへへっ」


……虫垂が走るな。正直ここにいる全員、天の彼方まで吹っ飛ばしてやりたい気分だが、流石にここで暴れるのは駄目だろう。仕方ない、軽くあしらってやるか。


「おい、お前ら。そこを────」

「だから俺達と一緒に来いって。そしたら一生忘れられない夜にしてやるからよぉ」


俺が言い終わる前にアルドの手がミレットの肩を掴んだ。それに対してマロアが何か言おうとしたようだが、俺はこの時点で何が起こるか大体察した。

あのアルドとか言う男──────果たして生き残れるんだろうか?


「ねぇ……その汚い手で、ボクに触らないでくれるかな?」

「あ?なに言っ──────」


その瞬間、アルドは()()()()()。後ろにいた手下と思われる奴らを巻き込み、ギルドの壁を粉砕すると反対側の店に突っ込んでいくのが見えたな。

磁力魔法──────【反発(レプリング)】か。互いの磁力を操作し、反発させる事で相手を吹き飛ばす事が出来る魔法。近ければ近い程効果を発揮する他、使用者本人が起点になる為に吹き飛ばされる事はないという安全な魔法だ。使用者が、だが。


「まったく……ボクに触っていい男はアリファーラだけなんだからね!」

「ミレット、それは嬉しいがあの惨状はどうする気だ?」

「あいつらに払わせればいいでしょ。ボクはただ自分の身を守っただけだもん。……そうだよねぇ?」


ミレットは近くにいる唖然とした冒険者に達にそう問い掛けた。それに対して彼らは頭を何度も縦に振る。そうしなければ自分の命が危ないと察したんだろう。


「よしっ、じゃあ早くクレープ屋に行こう!」

「ああ……って、マロア?」


先程から一言も話さず、固まっているマロアに話しかけてみるが反応がない。手を前で振ってみるが、それでも駄目だった為に頬をつねってみる。


「いったぁっ!?な、何するのよ!?」

「さっきからどうしたんだよ、ボーッとして」

「どうしたですって……!?あんなのを見せられて平然としてられるわけないでしょ!」


そんな事を言われてもな……やったのはミレットだし、マロアは何度か俺達の強さを見ているから納得してくれると思っていたんだが……どうやらまだまだみたいだな。


「Cランクのアルドさんをあんな軽々と吹っ飛ばすって……本当に何者なのよ、貴方達……」


「伝説の勇者と魔法使いだ」と言えば説明がつくが、信じてはくれないだろう。何せ俺達が表舞台で生きていたのは数千年も前の話だ。今話した所でそんな大昔の人が生きているはずがない、と一蹴りされて終わりだ。


「決まってるだろ、()()()冒険者初心者だ」






















「あっまーい!美味しいね、このクレープっての!」

「……そうか、良かったな」


冒険者ギルド、それと奴らが突っ込んだ店の修理代を全て『アルドと手下の責任』として払わせる事にし、俺達はクレープ屋に向かった。クレープとやらは薄く伸ばした生地に果物や生クリームなどを包んだ物らしい。俺もそんなクレープを食べてみたいという気持ちはあった。しかしそれは無理だったのだ。

何故かと聞かれれば、ミレットが求めたのがクレープ屋で一番高いスペシャルデラックスクレープだったからだ。結果、貰った報酬金は全て使い果たしてしまった。


「ねぇ、ねぇっ!アリファーラも食べてみる?」

「いや、それはミレットが」

「いいのっ!はい、あーん!」


ミレットは断ろうとする俺に食いかけのクレープを向けてくれる。こうなると話を聞いてくれないと分かっている為、仕方なくミレットの言葉に従う。別にクレープを食いたいからじゃない。ただ単にミレットが押し付けてくるからだ。


「……ふむ。確かに甘いし、うまいな」

「でしょ?いやーっ、こんな甘い食べ物があるなんて知らなかったなー」


まぁ、俺達がいない間に生まれたんなら知らなくて当然だろう。とにかくミレットが満足してくれてるなら俺はそれで良いんだが。


「あ、貴方達、よくそんな事を街中で出来るわね……」

「ん?」


そう呟いたのはミレットとは反対側を歩くマロアである。ミレットと同じくクレープを食べているマロアは、今の俺とミレットのやり取りを見ていたのか頬を赤く染めている。

何故だ?別にこんなの間接キス程度だろうに。


「出来るに決まってるじゃん!だってボクはアリファーラの正つ──────もがっ」

「えっ、正つ……何?」

「何でもない、気にするな」


ミレットの奴……今、絶対に言ったら勘違いされそうな事を言おうとしたな?間一髪で口を押さえたし、マロアも気付いていないから良かったものの……言っていたらどうなっていたか。


(もう……何するんだよ、アメダス!)

(それはこっちの台詞だ……今、なんて言おうとした?)

(えっ?何って……もちろん()()って言おうとしたんだけど?)

(……やっぱりか)


俺達の見た目が20歳と14歳だからそう偽っているが、それ故にそんな事を他人に言ったらおそらく俺はマロアから引かれるだろう。見た目は幼女なミレットに手を出したなんて知られれば俺に幼女趣味があるなんて勘違いされるだろうが、決してそれは違う。絶対にだ。


「そういえば……アリファーラ君達は今日の夜、どうするつもり?」

「どうするって言われてもな……イルがないからな。宿屋は無理そうだし、適当にその辺を朝までぶらついて……」

「なら私の家に泊まらない?助けてもらったのに、まだ何のお礼も出来てないからさ」

「お礼ならアロッタの街まで案内してもらっただけで十分だぞ?」


別にゴブリンなんてそんな脅威でも何でもなかったしな。逆に冒険者という存在を教えてもらったおかげで、しばらくは退屈せずに過ごせるだろうし。


「駄目よそんなの。アリファーラ君は良くても、私にとっては命の恩人なんだから」

「……まぁ、そこまで言うならお邪魔させてもらうか。ミレットもそれでいいか?」

「うん、大丈夫だよー」


クレープをぺろりと食べ終えたミレットはそう答えてくる。なら今日はマロアの家で一泊決定だな。

アルド・ヨルテム:冒険者ギルドに所属しているCランクの冒険者。品性は良くない。


アメダス/アリファーラの正妻、つまりミレアの現在の姓はリファーラという事になります。

ちなみにアルドは今後も出ます。まだ死んでません。


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