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領主に任命される

 俺たちは、無事に王都へと帰還した。

 出血のひどかったアレックス将軍ではあったが、スキル〈戦女神の加護〉には怪我に対する耐性も含まれている。体はひどく弱ってしまったが、死ぬことはなかった。

 胸をなでおろしての帰還。ギルドの顔見知りたちは俺の帰還を知り宴会を開いてくれた。


 そして俺は、後日王宮へと呼ばれたのだった。

 玉座の間。

 奥の中央には王冠を被った国王陛下、左側にはアレックス将軍が、右側には俺の知らない身分の高そうな男が立っている。 

 そしてその周囲を囲むように、文官武官といずれも身分の高そうな男たちがずらりと並んでいる。

 異世界人、である俺だが当然総理大臣どころか知事や市長にも会ったことはない。今まで対面した一番偉い人は、小学校の表彰式で表彰状を受け取った校長先生ぐらいだ。

 こんな……堅苦しい雰囲気初めて。めちゃくちゃ緊張している。は、早く終わってくれ。


「冒険者ギルド所属、ヨウ・トウドウ。ただいま参りました」


 片膝をつき頭を下げる。王宮での礼儀作法は事前に聞いておいたので、間違ってはいないと思う。

 まず前に出たのはアレックス将軍。

 脚を失ったため、今は杖をついて体を支えている。

 もう、前線に立つことはできないだろうな、この人……。

 

「こちらが私の話していたヨウ・トウドウ殿。冒険者ギルドから派遣された冒険者であり、私の命を救ってくれた恩人でもあります」

「……うむ」


 国王は頷いた。年はおそらく60程度。長い白髪を伸ばした老人だ。

 その深い皺の奥で瞳を輝かせた。俺のことを値踏みしているのかもしれない。


「敗戦濃厚の戦場において、弱き者を助けようとする心。ここぞというときまで必勝のスキルを温存していたその豪胆さ。ヨウ殿はまさしく次世代の英傑にふさわしい存在です」

 

 別に出し惜しみしてたわけじゃないんだ。俺だって魔王が女の子だって知ってたらもっと早くあのスキルを使っていた。あれは本当に運が良かっただけなんだ。

 ただ、俺はアレックス将軍にスキルの詳しい内容を話していない。

 女の子を苦しませるスキルであるとばれてしまうのはまずい。だから、俺は魔王を苦しめたスキルについて、あいまいな解答をせざるをえなかった。

 『能ある鷹は爪を隠す』という感じでアレックス将軍もそれで納得してくれた。


「私は是非、現在空席になっているムーア領領主に彼を推薦したいと考えております。どうかご理解いただきたい」


 うおっ! 俺、なんだか領主に勧められてるよ!

 あれ……でもムーア領って、あの戦場になった敵地の名前じゃ……。だ、大丈夫かな……? 


「……うむ」

 

 なんというかこの国王、すごい大物オーラが出てるんだが、あまり自分で積極的にあれこれと喋るような人ではないらしい。さっきから『うむ』しか言ってないしな。


「お、お……お待ちなさい」


 これまで黙っていた、右側に立っている文官風の男が口を挟んだ。目を覆うほどに長く伸びた前髪に、やや猫背な体系。あまり体力があるようには見えず、緊張しているのかもともとそういうやつなのか、プルプルと震えている。


「ヒヒッ、て、敵前逃亡でおめおめと逃げ帰るなどと、お、臆病者のはっ恥知らず。こ、このモーガンが進言いたします。む、むむむ、むしろ処罰するのが妥当です陛下……」


 いや、お前の方が根暗で臆病に見えるのは俺の気のせいだろうか? 公爵って偉いのかな? 俺が文句言ったら処罰の対象になってしまうのだろうか?

 あー、これがアレックスのおっさんがさんざんぼやいていた奸臣モーガン公爵。なるほどなるほど、せっかく魔王領から無事帰還を果たした俺と将軍にこんな文句つけてくるんだもんな。そりゃいい奴なはずがない。

 案の定、彼の言葉を聞いたアレックス将軍はすぐにブチ切れた。


「モーガン貴様っ! 私の恩人を愚弄する気かっ! 魔王を退けた英雄殿になんたる口のききかたかっ!」

「お……おやおや。敗戦の責任は……し、将軍にあるのですよ。なな、何を他人事のように話をしているのですか。あなたの処罰は……かっ確定事項です」

「なんだと貴様っ!」


 瞬間、アレックス将軍が剣を抜いた。


「ひ、ひぃ……」

「……静まれ」


 と、場を仲裁したのはそれまで玉座にずっと無言で座っていたグルガンド国王だった。

 あまりペラペラと喋るような印象ではない。口数は少ないが、その王としての風格は特に何もしなくてこちらが畏まってしまうほど。

 王は無言のまま立ち上がり、玉座の後ろにあるドアの奥へと入っていった。


 え、なにこれ? もう終わったの? 俺帰っていいのかな?

 でも、他の人たちが立ったままなので、帰るに帰れずずっとそのままでいた。ま、まあ帰っていいなら誰か声をかけてくれるだろう……きっと。

 なんてあれこれと考えていると、国王が戻ってきた。手に一振りの剣を持っている。


「褒美だ。受け取れ」


 褒美として、国王陛下から剣を受け取る俺。

 分類としてはロングソード。剣柄の部分には白い宝玉がはめ込まれている。

 ずしり、と思い感触。おそらくはかなり高価な剣なのだろう。


「あ、ありがとうございますっ!」


 陛下! 話分かるじゃん。やっぱりモーガン公爵というやつがこの国の癌なんだな。よーししっかり覚えたぞ。俺が成り上がった暁には、必ずお前を失脚させてやる。


「……アレックス、領主の件は認めよう」

「まことですかっ!」

「……魔族は滅ぼさねばならん。今後の活躍に期待する」


 こうして、俺は領主に任命されることとなった。


 

 俺は平原に立っていた。

 新たな地、ムーア。

 魔物たちとの争いの前線地として扱われていたこの領地は、長らく領主が不在だった。

 ただ、王国側の村に少人数の村人が住んでいるだけの、さびれた場所。 

 確かに今はまだド田舎、荒れ放題の土地。しかし領地としてはかなり広大な領域をカバーしており、魔王軍を退けたならこの国有数の行政区分へと生まれ変わるだろう。

 つまり、将来性のある領地なのだ。

 さあ、ここから物語が始まるんだ。この街を、誰もが認める立派な場所にしてみせるぞっ!


この終わりからの……次のタイトル。

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