表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/210

クラーラVSシャリー

 通路に続く、エルフやスピリット(精霊が魔物化したもの)たちの死体。おそらくはこの地で、すでに激戦が繰り広げられたに違いない。

 木を縫うようにして通路を進んでいった俺たちは、ひときわ広いスペースへとたどり着いた。


 そこには、二人の少女がいた。

 中央に立つのはシャリー。杖を構え、余裕といった様子。

 対するは緑の森林王クラーラ。ローブは破れ、息も荒い。満身創痍といった様子で片膝をついている。

 どうやらクラーラVSシャリーの戦いは、シャリーに傾いているようだ。


「魔王クラーラ。聞いていた通りの強さですね。花弁王ロルムス以上、氷塊王エヴァンスと同程度、中級程度の魔王といったところですか」

「あなたは、何が……目的なの?」

「あなたの体をいただきます」


 シャリーは試験管を投げつけた。すると混ざり合った青い液体から粘体状の人造生物が出現した。

 湯気を上げ、ずるずると体を引きずりながらクラーラに迫るそれは、明らかに意思を持っている。


 対するクラーラは剣を構えた。まるで木の枝のように折れ曲がった茶色い剣は、ちょうど柄の部分に葉っぱが付いている。


「はっ!」


 目にもとまらぬ速さで青い生物を切り裂いた。なかなかの剣さばきだ。

 しかし、切り裂かれた青い生き物は二つに割れ、未だ意思を持ちクラーラに襲い掛かっている。

 クラーラは剣を振り回した。細かく切り刻まれた生物は、意思を失い土の中に帰っていく。

 だが……。


「あ……」


 彼女の剣は間に合わなかった。100以上に別れた人造生物を77匹潰せたが、残った23匹は無慈悲にも襲い掛かる。

 液体生物はクラーラの腕に巻き付いた。


 おそらく、俺がここに来るまで長く戦っていたのだろう。普段であれば余裕で倒すことのできる敵であったとしても、倒せなかったということか。

 魔王は強い。クラーラは十分に力を持っていた。ただシャリーの方が、無限に生み出せる人造生物、アンデッド、そして自分自身の力で打ち勝ったということか。


 青い生物はクラーラの腕を、脚を拘束した。必死でもがこうとする彼女ではあるが、焼け石に水。


「いや……やめ……て……」

「必ずしも、あなたが生きている必要はありません。あなたの体液は、これから人類勝利への礎となります」


 シャリーは注射器のようなものを構え、メガネのずれを直した。その姿はマッドサイエンティストのように恐ろしく、そして狂気的であった。


「ひ……ひぃ……」


 恐怖からか、言葉にならないような小さな悲鳴を上げたクラーラを見て……俺は。


「そこまでだっ!」


 ここまでずっと様子を見ていた俺だったが、ついに声を上げた。魔王クラーラとシャリーの間に剣を投擲し、注射器を破壊する。


「ヨウ君、助けに来てくれたんだ」


 ぱぁ、と花が咲いたかのようなに微笑む森林王。


「嬉しい、嬉しいよぉ」


 よっぽど嬉しかったのだろうか、魔王クラーラは泣いていた。


 別にクラーラを助けたいとか、守りたいとかそういう強い欲求があるわけじゃない。ここに来たのはシャリーを止めるためであり、緑の魔王を助けたのはその過程だったというだけ。

 そういう意味では、彼女の態度は誤解といってもいいだろう。


 でも、なんか嬉しいな。

 こんな風に頼られて、喜ばれて、こういうヒロインっぽい女の子って初めてだよな。ちゃんと勇者やってるみたいで、いい気分だ。


 ……って、何考えてるんだ俺。相手は魔王だぞ? ちょっと頼られたからって気を許すな。

 俺は気を引き締めた。


「シャリー!」

「お姉ちゃん」

 

 俺の後ろから現れたクレアは、シャリーに向かって叫び声をあげた。


「シャリー、これかどうするつもりなの?」

「この世界を征服し、アースバイン皇帝の魂を探します。魔王バルトメウスの水糸を使い、蘇生魔法を……」

「クレア、陛下のこと大好きだったもんね。また会いたいのね。でも……それはきっと……」

「…………」


 シャリーは悲しく笑った。そこには、どんな意味があるのだろうか。俺には分からなかった。

 

「ヨウさん、どうかその剣を収めてくれませんか?」


 クレアとの悲しい物別れを終えた彼女がこちらを向いた。


「魔王が死に、人類が栄光を取り戻す。魔王の奴隷として虐げられているあなたにとって、悪い話ではないと思いますが」


 なるほどな。

 確かに、一見すると利害が対立してないように見える。だが……。


「お前のやってることは人類への冒涜だ。人は今を生き、そしていつか死に至る。過去の亡霊に囚われて何になる? 結局お前たちのやったことは、俺の王国を征服して人類を従えようとしている……魔王と何ら変わらない」


 俺は剣先をシャリーに向けた。


「お前は魔族だ。俺たち人類は……お前を倒す」


 決別。

 もとより、求めるところが違う二人。皇帝の魂や人類のプライドのために、俺の王国や領地を傷つける奴を……認めるわけにはいかない。


「困りましたね、あなたを傷つけないようにと言われているのですが……」


 ため息をついたシャリーは、しかしその鋭い眼光をこちらに向けた。


「ごめんなさい、『最大限気を配る』というい約束は守りました。でも、もう無理みたいですね。仕方ないですよね。努力はしましたよ」


 シャリーはその杖をこちらに向けた。


「殺さない程度に、痛めつけます」


 震える空気。限りなく殺気に近い闘気。このかわいらしく若々しい少女から発せられるその威圧感は、魔王クレーメンスに勝るとも劣らない。

 右手に精霊剣、左手に降魔の剣。

 さあ、始めようかっ!


すっごい面白い夢を見た。

これ小説に使える! と思ってメモしようとしたらすでに内容を深く思い出せなかった。

悔しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ