9話 パラレルの実力者
パラレルとのクラン戦。対戦形式は、多くのFPSでも採用されている爆破戦。グラドニルオンラインでも実際の大会で使用されている形式だ。爆破戦のルールは、攻守に分かれ、攻め側(RED)は、C4を設置し、起爆に成功したら勝利。逆に守り(Blue)は、それを阻止したら勝利となる。また、敵チームを全滅させても勝利となる。制限時間は二分。C4設置に六秒、設置後四十秒後爆破成功となる。頭のこった作戦と、一人一人の生存が勝利に繋がるのがポイントだ。今回は、大会ルールに乗っ取って、攻守交代有りの計10ラウンド、6ラウンド先取の勝負となる。対戦人数は五対五。RED、パラレル。ステイル、闇の電撃的野郎、Nezar、九多老、kure。Bule、ゲー研一同。パーフェクター(一ノ瀬純人)ごっつぁんですぅ¥(後藤隆司)毬月葉っぱ(葉月陽毬)世界から愛されてる俺(漆原海成)YURI0418(遠藤百合)。
「とりあえず、作戦どうする?陽毬と後藤くんどうぞ。」
先に返事をしたのは陽毬だった。
「爆破の設置場所が二ヶ所あるので、一ノ瀬先輩で一ヶ所。ボクらで一ヶ所守るのが無難かと。」
陽毬的な目線だと俺が頭ひとつ飛び抜けているみたいだ。やっぱり天才は困ると思う。経験者よりも上手になった時なんて…後藤くんは特にそういうオーラを出していないから一安心だ。
「僕は、固定砲台であるレールガンで殲滅を狙ってくる恐れがあるから、漆原君に引き付けて貰って、裏から奇襲をかけてレールガンをおとすべきだと思う。」
確かにいい作戦ではあるが、レールガンは一撃でもくらったらおしまいなのだから、素早い俺か百合を引き付け役にすべきだ。ここは天才の意地を見せよう。
「俺が引き付け役をやる。最初の一回で全部見切るから、最初の一回は捨てよう。」
ということで俺が引き付け役になった。そしてカウントダウンがはじまる。今までやってきた中で一番の緊迫感がたちこめる。一回戦目、場所は工場。爆破箇所はAとBの二つだ。レールガンの動きが鈍い以上は、固まって行動してくるはずだ。全クランの中で三番目のクランだ。一筋縄ではいかないだろうが、やるしかない。配置的には、敵の早期発見に適した配置だ。物陰に隠れつつ様子を伺う。と、百合が
「うわぁあぁあ。来ましたよぉー!」
百合の援護に向かおうとしたがその場に踏みとどまった。情報収集が優先だ。
「百合ちゃん?敵何人いる?」
「フェンサー類が二人です!他は今のところ見当たらないです。」
「そのまま海成と合流して、防衛ラインを作って。後藤くんは全力で突っ込みに行って敵裏をかき回して。陽毬はレールガン優先で射撃。」
海成と百合の防衛ラインが出来たところに俺の射程範囲を合わせる。
「防衛ラインの二人は前には進むな。後退しながら応戦。後藤くんはレールガン発見しだい戻ってきて海成と百合ちゃんの援護。」
海成と百合は指示通りに後ろに下がる。ここからは直感の一発を放った。二人の後退のタイミングから敵との距離の予測をし、敵の積めのタイミングを予測する。わざわざ速攻してきたということは二人はおとり。そして、その後ろにレールガンがいるはずだ。その速攻のやることを予測し、《F4F4F1》『麻痺弾』を打ちながら飛行する。着弾位置をずらしたところで《F4F4F2》『出血弾』。二つの弾丸は完璧に直撃した。麻痺弾はヘッドショット。出血弾は足元。横からの攻撃には流石の大盾持ちでも防ぐことはできまい。
「陽毬ぃ!麻痺させた方をしとめろぉ!海成と百合ちゃんは、出血弾撃った方に集中攻撃!後藤くんは裏で待ってるだろうレールガ」
「ごめん!剣士二人と交戦中!」
予想はしていたが、とりあえずSPドレインを撃つ。俺がレールガンを撃つタイミングは一撃必殺スキルであるレールガンが撃ち出された直後だ。そこにインフィニティ・バレットを放つ。そうするためには三人が敵ナイトを撃破してもらう必要がある。麻痺弾をくらった方はもう問題なく処理出来るだろう。問題は、二次職になりたての二人の方だ。案の定倒しきることは出来ていなかった。陽毬がうまい具合に処理してくれることを願う。そして、その時はやって来た。ジリジリと電撃の音がフィールドに鳴り響いた。そして、『クワァン』と発射音が鳴る。同時にレールガンを撃つべく飛び出す。レールガンの弾とすれ違いながらロングエリアに踏み込み、《F1F4F4》『インフィニティ・バレット』を放った。レールガンには通常攻撃がある。それは分かってはいたが、正直そこまで早く反応してくるとは思っていなかった。インフィニティ・バレットが直撃したと同時、正確にはコンマ前にレールガンの通常攻撃を放っていた。インフィニティ・バレットのわずかな硬直に被って直撃する。攻撃をくらうと度々痛感する体力と防御のことだが、たった一発の通常攻撃は体力を半分以上削った。正確にはインフィニティ・バレットの二割分があるため、もう少し少ないが、それでも驚愕だ。ヘッドショットもついていた。インフィニティ・バレットが発射されてから直撃までの時間はほぼ0だ。これが全国三位のクランの実力なのか?だが、こちらの弾丸も相手の頭を撃ち抜き爆発した。まだ体力が残っていたが、後方から発射されたの無音の弾丸は、きっちり残りの体力を削ってくれた。
「一ノ瀬先輩の言われた通りですよ!一ノ瀬先輩は、出血弾くらって今にも一ノ瀬先輩に刃を当てようとしているそいつを何とかしてください!」
ふと画面の端を見ると、確かに刃が見える。スキルを使いたい所だが、あいにくSPはすっからかんだ。切られる覚悟でHPドレインを撃つ。ダメージはくらったが陽毬の次弾はしっかりそいつを倒してくれた。
「えっと、生き残ってんのは、死にかけの俺と陽毬と後藤くんか?」
すっかり後藤くんのことを忘れていたが、後藤くんの体力ゲージは既に無かった。
「すっかり忘れてたよ…kureさんは個人全国7位なんだったよ…」
まさかの一言だった。レールガン以外のマークすべき敵がいるとは思っていなかった。
「あ!ボクも忘れてましたぁ…あの人影が薄いので有名だったようなぁ…」
クラスで影の薄い後藤くんもゲームでは存在感あるのか?ゲームでは存在感あると言いたかったが、以外と現実では影薄いとゲームでも影薄くなるのかもしれない。
「一ノ瀬君。生き残っているのはステイルさんとkureさんだよ。ステイルさんはナイトで、kureさんは、シーフの上位職のローグで、トリッキーな攻撃と典型的なローグの完成系みたいなかんじ。」
俺は敗北を知らなかった。現実でも、ある程度慣れた物では負け知らずだった。グラドニルでも、INFINITE―PERFECTを使いこなせるようになってからは負けたことがなかった。一瞬で実力の差を痛感するなんて思っていなかった。SPドレインを撃ちながら後方に逃げようとした。敵の後方にある爆破ポイントは陽毬がどうにかしてくれるだろう。一瞬、何が起きたのか分からなかった。死角から突然ナイフで切りつけてきたのだから。だが落ち着いてSPドレインを直撃させスキルを使えるようにする。が、そこはもう何もなかった。
「一ノ瀬先輩上ぇ!」
陽毬が教えてくれてから気付いたときには遅かった。上から、大量のナイフを弾幕をはるかのごとく投げてきた。直撃後、再び敵の見失った。すると今度は後ろから全方向に燃えるナイフを投げつけてきた。追い討ちをかけるように接近からの連続攻撃をされた。ここで俺の体力は0になった。残り時間は40秒。スナイパーの陽毬にはどうこう出来る展開ではなかった。