16話 決着
現在四戦目。状況は絶望的。無限攻撃に捕らわれている状態。もう結果は見えている。案の定俺の負けで、一対二とゴルもんに王手をかけられている。四戦目。はじまる前から頭はフル回転していた。ゴルもんの動き方にかけた戦略を見つけることができたが、本当にそのように動くという保証はない。今はスワイプさえやられなければ勝機は見えてくるはずだ。俺はゴルもんにかけた。《F4F3F1》『スピードブースト』しばらくの間はゴルもんのスピードに追いつけるようになるはずだ。そして、その時がきた。背後で爆発音が響く。奇跡的に木に仕掛けた地雷にはまったようだ。正確には、俺のいる場所にたどり着くのに通るルートをつくった訳なのだが、木をつたってきてくれて助かった。《F1F4F1》『グレネードバレット』を放ち高速化された足で敵の元に向かう。ゴルもんは、俺の位置を知らないはずだ。《F1F2F1》『スパイラル』でグレネードと同時にゴルもんを攻撃する。そして、ゴルもんを目視出来るようになった瞬間次の行動にでる。SPドレインを撃ちつつ一定の距離を保った。ゴルもんは起きあがって、爆弾を投げこんできたが、スピードが上昇している俺には余裕でかわせた。SPがマックスになったところで、その場からの離脱をする。ゴルもんはもちろん追ってくる。距離が出来たところで、《F1F4F4》『インフィニティ・バレット』を放つ。ゴルもんは避ける間もなく直撃した。体力ゲージを残り2割程度まで追い込んだ。勝負はこの瞬間だ。俺がやつのスワイプを避けられるかどうか…インフィニティ・バレットの硬直が溶ける瞬間、既にスワイプは発動していた。これを避けられるかどうかが勝負だ。次の瞬間勝負は結した。
翌日の放課後、部活の雰囲気はあまりよくなかった。俺も近寄りがたいオーラを噴出していた。
「せ、先輩?あの…空気が重いです。」
「ん?悪いな。陽毬も同じようなオーラだしてるだろ?俺じゃなくて陽毬を構ってやれ。」
「は、はい。先輩も落ち込むのは程ほどにお願いします。」
「そうだな。いつまでも落ち込んでいられないな。」
今回の大会に参加したメンバーは全滅した。俺も。Beluの期待には答えられなかった。でも、今回の大会や、これまでの部活をやってきて分かったことがたくさんあった。勝負に負けること。そしてその悔しさ。俺自身がつくった集団で共感出来た気持ち。それほど期間はたっていなかったが、俺にはとても長い時間に思えた。
「俺はただ皆と遊べるだけでいいのかもな。」
「突然どうしたんだよ。らしくないぞ。純人 」
「こうやって心の底から楽しめたのは人生初だ。無邪気に遊べるなら仕事なんてしたくないなぁ。」
「一ノ瀬君?仕事しないで皆とゲームなんてただのニートじゃないか?僕はお金ないからそんなこと出来ないよ?」
「ふっ。ニートか…」
俺は座っている椅子から立ち上がって部室のドアに向かった。
「純人ー?どこいくんだよ?」
「俺の人生を決めにいく感じだな。」
「本当にらしくねーな。」
部室を去ると、ポケットに入っていた一枚の紙を取り出す。その紙に文字を刻む。向かった先は職員室だ。担任の席に向かい、その紙を渡す。俺は素早くその場を立ち去った。が、後ろからは担任が追っ掛けてくる予感がする。てか追っ掛けてきてる。全力で走ってグラウンドに出る。何かが吹っ切れたのか、思わず大声で笑ってしまった。グラウンドに響き渡る声。部活をやっている集団の目線を集めながら俺は校門を出た。俺の夢はニートだ!