表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
藍の陰陽師  作者: 蓮華
36/54

先の心配

 理由は人も動物も妖にとっては、この上なく旨いご馳走だから。


 これらを踏まえて山道は必然的にかちとなる。


「山を下った後の事は心配いりません」


 あの時と同じように千柚は胸へ手を置き、にこやかに笑う。


「では、参りましょうか。蝶彩。あと、章来も式神くんもね」


 さりげなく肩に手を回して歩き出す。


「黒髪はおまけでいいけど、俺はおまけじゃないぞ」


 口元をへの字にして青が更に機嫌を悪くした。


「式神!僕はおまけじゃない。ちょっと師匠、待って下さい」


 章来は顔を歪め、すぐに二人と肩を並べる。早速引き離しにかかった。


 木で作られた両開きの門扉を勢いよく千柚が開け放つ。


 蝶彩の表情は曇る。これからこの顔ぶれで、うまくやっていけるか、かなり心配で不安だった。



 歩き続けて数分後……。


「あれ?村の集落から少し離れているんですね」


「はい。そろそろ村が見えてきます」


 指差した先は家屋が、地を埋め尽くすように建っていた。


 今、四人が歩く細い一本道の近辺には木々を切り、急な斜面を均した田畑が広がっている。


 ある者は懸命に鍬で田を耕し、またある者は水を撒き、収穫を迎えた作物を取り入れる。


 村の集落に着くと章来は、物珍しそうに長閑な景色を眺めていた。


「貴様はそんなにも村の景色が珍しいのか?」


「珍しいに決まっているだろ。六晶都とは違うんだな」


 聞き様によっては、都と村では雲泥の差があると言われているようだ。が、少年は純粋に物珍しいだけだった。


 村人達は蝶彩と青の存在に気づくと、笑顔で会釈や挨拶をした。


 少女が変術を使い、少年に変じる事は皆知っていた。


 式神を妖同様に毛嫌いする者も世には数知れずいる。夕村にそのような者はいなかった。


 好奇の眼差しが絶えず注がれ続ける。章来と千柚に向けられた眼差しだ。


 長居は無用だと分かっていても、足を止めてしまう。


 懸命に村人達は田畑を鍬で耕す。汗水垂らして家族の為に働く。


 気づけば自分も手伝いたいと思っていた。


「今更、命が惜しくなったか。蝶彩」


 不敵な面構えの青はまだどこか、ぶすっとして問う。


「確かに命は惜しいが、鬼にくれてやる命などない。貴様、未だ根に持っておるのか」


「……うーん。根に持ってるかもしれないし、持っていないかもしれない」


 青は得意な意地悪い笑みを浮かべ、蝶彩の腕を掴む。


「よし。行くぞ」


 突如、駆け出した。


 足がもつれ危うく転びそうになる。


「待たんか!急に走るな」


 残念ながら声はお調子者には届いていなかった。



「式神くんと蝶彩は仲がいいようだ。章来、ぐずぐずしていないで、ちょっとでも頑張れば?」


 先に行く二人を千柚は見遣る。章来の背中をぱしっと叩き、何食わぬ顔で歩く。


「師匠の目敏い所、僕は嫌いです」


 渋面を作り、口を閉ざす。蝶彩のそばにいるだけでも胸の鼓動が高まる。


 再び共にいられて素直に嬉しい反面、危険な鬼退治に引きずり込んでしまった事が、ただ腹立たしい。


 千柚に腕が立つ強い藍の陰陽師だと、彼女を教えておきながら矛盾していたが――。


「目敏くなくても誰でも分かる。幸いあの子は気づいていないようだけど。鈍感な所も魅力的だよね」


「女好き、少しは直して心に決めた方を愛したらどうです?」


「僕は美しいものや綺麗なものが大好きなんだ。悪いか」


 開き直る。いつも情事に耽ている訳ではない。女色を好む難点を直して欲しい。


 初めて出会った頃は抵抗があり慣れず戸惑った。現在も抵抗はあるものの、情けないが以前より慣れてしまった。


「実に章来は律儀だな。僕にも分けて欲しい」


「分けられるくらいなら、疾っくに分けています!!」


 弟子は吹き出した師匠を睨みつけ外方を向く。蝶彩と青、千柚までに律儀と言われた。


 既に二人の後ろ姿は小さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ