必然的な定め
「足、痺れてやんのー」
「う、うるさい。だから、正座は嫌いなんだ」
「章来、まだまだだね」
千柚はにこにこ顔で、章来の足をぺしっと叩いた。
少年が歯を食い縛って痺れに耐える。
「やめて下さい」
「痺れくらいで情けない」
「楽な姿勢で座る師匠には、言われたくありません」
師匠と弟子。蝶彩にとって師弟関係はもう叶わない。灸冠世、流れ陽陰だった白妙は、この世にいないのだ。
「これから先、ずっと師は大切にしなければならんぞ。章来」
「……夕凪?」
物悲しく笑む少女は緩くなった青の腕を払い除けた。
腰を少し上げて座布団から優雅な所作で下がり、畳に手をつけた。
千柚と蝶彩の双眸が合う。男の目つきは刃物のようだ。
「命の保障はできませんよ」
「承知の上です」
鬼に命を奪われる愚かな真似はしない。更々くれてやるつもりもない。
「罪なき人を喰らい、のうのうと世に生き長らえている、鬼は断じて許せません。僕と章来も陰陽師上様に、『鬼を滅せよ』と命じられております」
千柚の鋭い目つきが微かに和らいだ。
「夕凪蝶彩、私等と共に鬼退治をして頂けますか?」
「はい、謹んでお受け致します」
背を屈めて蝶彩は額が畳につく程に身を低くした。
胸中には朝目覚めた時からある予感があった。
いつか清輝と再び巡り会えると、信じ思っていた予感が変わってしまった。理由はないがそう悟ったのだ。
よい巡り会いは望めない。どんなに望んでも。
必然的な定めは偶然ではなく、確実に巡り巡って会わせる。皮肉にも少女と少年を……。




