18の春
どこでもいいから大学へと、僕は今まで名前も知らなかったような大学へ進学を決めた。
もちろん兄弟らしく、僕にだって公立に行けるような学力はない。
兄はそれで進学を諦めたが、僕はそれでも大学へ行きたかった。
両親は兄の時も僕の時も、何とか学費を工面しようと頑張ってはくれたけど、
貯金も殆ど無いうちでは入学金でギリギリだった。
授業料は将来自分で返す奨学金を借りればいい。
生活費はバイトして自分で稼げばなんとかなる。
小さい頃からお年玉と貯めたお金で家具を買い、引越しも出来る。
貯金はなくなるけど、夢にまでみた都会の生活が始まるんだから4年間ぐらい耐えられる。
父も母も、兄も、最後まで反対していたけど、僕は田舎を後にした。
そして、4月。
期待に胸躍らせた入学式は、中学や高校で経験したそれと大差なく、
気の早い桜が散ってしまった大学では「新入生」という気分も削がれた。
周りがやれ新歓だ、サークルだと浮かれているのを横目に、僕はバイトに向かう。
引越しの翌日からさっそく行き始めたコンビニのバイトは、
正直来月の食生活が不安になるような時給で足も重い。
落ち着いたら、大学生の特権で家庭教師とかやってみたいなぁ、なんて、
更に夢で現実を麻痺させて、なんとか持ちこたえている。
駅に向かう遊歩道で、カップルとすれ違う。
どうやら僕には、ああいう楽しいキャンパスライフとは縁がないらしい。
だって、「学校、バイト、睡眠」で一日が終わってしまうんだから、彼女なんて出来るはずがない。
それ以前に、授業が終われば学校を飛び出すのに、どこで知り合うっていうんだ?
羨ましいのと妬ましいのと入り混じった視線で横目に2人を見ると、
彼の方と目が合ってしまい思い切り睨まれた。
僕はコンビニへの足を速めた。