お悩み相談所
この世には難しいことや答えのないことが多くある。それを解決することは他人は愚か友人、愛人、家族、本人ですらできないことも珍しくない。
俺は柳雪、そんな悩みを聞く仕事をしている。愚痴とかを聞くことが多いのだが…
「センセー、お客さん入りまーす」
「わかった」
今日も今日とて悩みを持つお客様が訪れた。
「えー、初めまして」
「初めまして」
「ご利用は初めてですよね」
「はい」
「では軽く雑談からしていきましょうか」
お客様とはなるべく仲良くなることが重要だ。名前とまではいかないが、ある程度話をすることで人物像が見えてくる。
「えーっと、なんとお呼びしましょうか」
「ハルでお願いします」
「ハルさんですね。ここでは私のことは先生と呼んでください。」
「わかりました。」
先生という言葉には謎のパワーがある。病院の先生、学校の先生、弁護士を先生ということも多い。これらに共通しているのは2つ。一つは一般的な人より賢いこと。もちろん知っていること、知らないことはあるかもしれないがその道ではかなりの知識を持っている人物たちだ。そしてもう一つは信用されているということ。弁護士にしても医者にしても教員にしても、信用していない人には先生ということはない。逆に言えば先生ということで、ある程度の信用をもらえる可能性があるということだ。なのでここでは俺のことを先生と呼ぶのがルール的なのになっている。
「ハルさんは見た感じ主婦ですか?」
「そうです。2年ほど前に結婚をしまして…」
表情が濁った。今回の話はそこら辺らしい。相手が何に触れられたくないかは表情でわからなければならない。これは常識だ。初手からそこに触れれば、なかなかいい印象や信頼は獲得できない。
「なるほど…ということはハルさんはパートか専業でしょうか?」
「いえいえ!私は普通に会社で働いていますよ!」
「ほう!言いにくければ言わなくてもいいんですが、どのような会社で?」
「旅行会社ですよ。旅行の相談とか、プランを見積ったりとか。そういう仕事です」
「ほうほう!いいですねぇ。私最近は旅行に行く機会がなくてですね。社員も連れて行こうと思ってるんですよねぇ。あ、仕事の話をしすぎましたかね?話を変えましょうか。ハルさんは何か話したいことはありますか?今日は気分がとてもいいのでなんでも答えますよ!」
仕事の話は相手によってはあまりいい印象を持たないこともある。だがこういう感じに話を変えていくとこっちが家族関係で何か悩んでいるんだなと悟ったことに気づかれづらい。人間は自分の弱点を知っている相手には無意識に警戒をしてしまう。こういう場面ではなるべくそれを悟られないようにしたほうがいい。そしてこのタイミングでハルさんに話を振ったのは、なるべく流れを循環するためなのとハルさん自身を知るためだ。まだ本題には入っていないがそろそろ入らなければいけない。もう少しハルさんのことを知っておきたいのだ。
「そうですね…先生は何故こんな仕事をしているんですか?」
「うーん。難しい質問ですねぇ…そうですね。私は答えのないことを誰かと話すことが好きだからですかね」
「珍しいですね」
「そうですか?ここで働いている人たちはみんなそういうのが好きですよ。」
「私はあまり難しいことを考えない人なので…」
「なるほどですね。まぁ、そこは人によりますからね」
そんな感じで話していき、ある程度した時に、話を切り出す。
「ではそろそろ仕事に移りますね」
「はい」
顔が若干強張った。それほど覚悟のいる相談を持ってきたのだろう。友人関係にはもう相談済みだが解決しなかったと見てもいいかもしれない。
「今日来た理由は、愛を知りたくて来たんです」




