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「用ってほどのことではないんですけどぉ、優しくてしかも頭がいいと噂のルーウェン様にご相談があるんですぅ。実はあたしぃ、親友だと思っていた子に知らない間になんか嫌われちゃったみたいでぇ、あたしにだけ内緒で他の子たちとバカンスに行っちゃったみたいなんですよぉ」


 ひとまず先にカナデアの話題を出して相手の反応を伺うことにする。

 まるっきりの嘘とは違い、多少誇張してはいるもの真実味のある話をしているので整合性に矛盾が出ることはそうない。

 ちなみにルーウェンのことは名前と立場以外ほとんどなにも知らないのと同義であるが、どんな男性でもそれっぽいことを言っておけば気をよくするということをミーナはよく知っていた。


「……それは可哀想な話だが、しかし僕にアドバイスできることはないと思うのだが? こういってはなんだが、初対面だからミーナ嬢の友人関係にどうこう言える立場にないだろう」


「そんなことないですぅ。相談を聞いてもらえただけでも心が楽になりますからぁ。……ねぇルーウェン様ぁ、あたしってどう思いますかぁ?」


「どう、とは?」


 ずいっと一歩迫ったミーナにたじろぐルーウェン。

 おそらく押しに弱いのだろう。ならばここは更に押すべきだ。


「だーかーらぁー、見た目の話ですぅ~」


「え、ええと、確かに可憐な容姿だとは思うが」


 半ば強引に言質を引き出したが、王族からその言葉を口にさせた時点でかなりテンションが上がる。


「ですよねぇ♪ ならあたしが思うにぃ、その親友の子ってぇきっとあたしの容姿に嫉妬したと思うんですぅ。あたしは全然そんな気なかったんですけどぉ、その子と仲が良かった男子がみんなあたしに近づいてきたからぁ、ホント困っちゃって」


 だからつい、自慢話に華を咲かせてしまうミーナなのだった。


「――そろそろご遠慮願えないかしら?」


 そんな感じでなおもルーウェンにマシンガントークを続けるミーナに対してとうとう痺れを切らしたのか、しばらく放置されていた女性が口を開いた。


「はい? なんでですかぁ」


「わたくしの方が先にルーウェン様と歓談に興じていたのよ。話が済んだのであればもうよろしいでしょう?」


 突然現れたミーナの不躾な態度に明らかに苛立っているような様子だが、口元にはかろうじて笑みを浮かべている。


「そんなことないですぅ、あたしの相談はまだおわってなくてぇ――」


 ミーナもまた負けじと反論する。


「……貴方ね、先ほどから横でお話を聞かせてもらったけれど、どうも相談という(てい)から逸脱しているように思えるわ。そもそも相談というのも、そうやってルーウェン様に近づくための方便にしているのではなくて?」


「そんなぁ、酷ぉい。いいがかりですよぉ。お友達みんなからイジメられてるのは本当なのにぃ」


 図星を突かれたところで内面の同様はおくびにも出さないミーナ。

 あくまで猫をかぶって被害者を装い同情を誘う演技を続ける。


「あたしはみんなとも仲良くしたいだけなのにぃ、どうしてこうなっちゃうんだろー。気のない男の子に好かれちゃうのってぇ困っちゃう♪」

 

 すると目の前の女性はますます苛立ったようで、どんどん顔色が変わっていく。


「だとしてもその解決策を初対面であるルーウェン様に求めるのは筋違いでしょう。まずは然るべき場を設けてそのお友達全員と事実確認をするのが建設的ではなくて? こういうのは往々にしてどちらか一方の勘違いということもあるから。その上でイジメの証拠があれば家を通して正式に抗議するべきでしょうに」


 言葉にも棘が混じる。

 もしかすると相談や愚痴に見せかけたモテ自慢(マウント)行為に内心腹を立てていたのかもしれない。


(あーウッザ。……そろそろ踏み台にするかコイツ)


 ミーナは計算と打算にまみれた頭で思考する。

 どこの誰かは知らないが、この女はルーウェン攻略の邪魔だ。

 ならば次に自分が取るべき行動は――。

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