06
「ああもうイライラするっ……!」
ミーナことミーナ・エシュトンは表向きはエシュトン家の長女となっているがその実父親の火遊びでできた庶子である。
故にその立場は実家では弱く、少しでもいい家柄の男と縁談を結び家を出ていけと育てられた。
その手段を問わんとも。
だからこそミーナは学園で男漁りを始めた。
どうやら自分には母親と同じく男に媚びを売る才を持っているらしく、相談女を装いながら令息のキープをどんどんと作っていった。
そして最終的にそのよりどりみどりの中から選別し、一番家格の高い令息を本命にする――つもりだった。
しかしどうも最近は上手くいかない。
周りに侍らせ、以前あれだけ争うようにミーナのご機嫌取りをしてきたキープたちがさほどでもなくなってきたのだ。
早い話が熱が冷めたということである。
「ムカつくっ! ムカつくーっ!」
手近にあった物に手当たり次第当たるミーナ。
そこにはあのぶりっ子の姿はない。
日頃自分に時間が空いたとなれば次から次へと令息からランチやデートの誘いがあったものだが、今ではそれもとんとなくなり。
屈辱を感じつつも、、仕方なくキープの中でも取り分け優先順位が低い連中にこちらから誘いをかけてやればそれも適当な理由で断られてしまう。
「なんでこのあたしの誘いを断るってのよあいつら! 有り得ないっ、立場が逆でしょーが!」
それもこれもミーナの周囲から令嬢が消えたせいだ。
相談女に徹するには、近くに彼女たち引き立て役の存在が必要不可欠なのだから。
だがその程度で折れないミーナはこれも令嬢らによる集団的嫌がらせだと吹聴し、それを最初こそ周りも信じたが、時間が経つにつれてそれもなあなあになってしまい。
また分かりやすい比較対象がいなくなったことで彼女に熱を入れあげていた令息たちが一旦冷静になったのだろう、よく考えれば地雷物件であるミーナに取り付くことをやめたのだと推測された。
もっとも時すでに遅く、前にミーナの嘘が原因で愚かにも婚約破棄を申し出た令息はといえば親に厳しく叱責され、とっくの昔に学園を退学する羽目になった。
風の噂では実家から勘当されたとかなんとか。
「だいたいあいつ、カナデアのせいよっ……! あたしにこんな嫌がらせをして楽しいわけ!? あたしがいったい何をしたっていうのよあんの性悪女!」
自分のことを棚に上げて荒ぶるミーナ。
どうやら彼女の中では恨まれるようなことをした自覚がないらしい。
とはいえカナデアのことはひとまずさておくとしても、このまま令息キープが完全に消滅してしまうのは非常にまずい。
ただでさえ新規のキープが手に入らなくなってしまったのだ、今後ますますその機会が減ることになるだろう。
どうする、どうすればいい?
ミーナが家を追い出される期限は学園卒業までの三年間。
それを過ぎてもなお良縁を結べなかった場合、強制的に年回りが一回り以上も離れた男と政略結婚させられてしまうがそれだけは勘弁願いたい。
「……こうなったら、あれしかない」