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「……うぉっほん。先ほどは少し、いやほんのわずか! ほぼミリ単位で実質分からない程度だけど、それでも見苦しいところをみせたね二人とも。久方ぶりの我が最愛の娘との邂逅でいささか気がはやっていたようだ、許したまえ」
カナデアの父親は一家の主としての威厳を取り戻すべく気持ちワンオクターブ下げたつもりで話すものの、肝心のカナデアたちは曖昧に頷いて微妙な顔をしてみせるばかりだ。
これが自分の知らない間に彼氏ができた娘の態度かパパさびしいっ、と両の瞳からキラキラとした汗が流れそうになるのをグッとこらえ、代わりの話題はと考えたところでふと思い出す。
「そういえば……帰ってきたばかりのカナデアにこんなことを伝えるのも酷かもしれないが、つい先日お前の元学友が隣国の姫の怒りを買ったせいで処刑されたそうだ」
「えっ、それは本当ですかお父さま!?」
「ああなんといったかな……そうそう確かミーナといったか」
父親から聞かされたまさかの名前に、カナデアは我が耳を疑う。
「ミーナが……うそ……」
「大丈夫かい? カナデア」
その場でくず折れそうになるのをアンドリューに支えてもらい、なんとか踏みとどまる。
正直ミーナのことはとっくに見限っていたが、それでも死んだと聞かされればショックを受けて当然だ。
今でもされた仕打ちは許せるものじゃないし、仲直りしたいとも思わないが、それでも彼女とはかつて友人だったのから。
「すまないカナデア。お前の元学友だと聞いていたからいずれ知るよりはわたしの口から今伝えておいた方がいいと思ったのだが、配慮が足りなかった」
「いいえお父さま、お父さまとアンドリューがいる今だからこそなんとかその話を聞いても耐え忍ぶことができました。もしこれが私一人だったらどうなっていたことか……」
そう体を震わせるカナデアだが、やっと覚悟を決めて父親に向き直る。
「……その話、詳しくお聞かせくださいますかお父さま。私にはかつての友人として彼女の、ミーナの末路を知る必要があります」
そう決意を新たに告げると、カナデアの父親もまた神妙に頷いて。
「……分かった、お前が内容を詳しく知りたいというのなら止めはしない。父の知る限りのことを伝えよう」
と、カナデアの父親はミーナの最後を伝えるべく重い口を開いた。
もっともそこから知らされる彼女の末路は、自業自得としか言えないものであったが。




