第7話
数日後、午前まで業務を切り上げた阪間は、レトロ感のある喫茶店で、池永を待っていた。
神白島についての情報を伝えるためだ。
カウンター奥に乗せられているテレビからは、占い領主の午後運勢という番組が流れていた。
『朝のラッキーアイテムが、午後にはラッキーにならないかも?なら、午後にも占えばいいじゃん!』
ぼんやりと、番組を眺めていると、カランコロンと入店を告げるベルが鳴る。
音に反応した阪間は池永を見つけ、目立つように手を挙げた。
「待たせたね、幸雄くん」
「いえ。取りあえず、なにか飲みますか?」
「ホットコーヒーを。言葉に甘えるよ」
ウエイターが二人のホットコーヒーを運びに来た頃、池永はある紙面を阪間に見せた。
「1980年に創刊された創成社新聞の一面だ」
「池永さんのお父さんが、書いた記事ですよね」
「実は父の友人だった、お孫さんが来てね。遺品だそうだ」
「そのご友人がお孫さんに残したんですか?」
「奇妙なことにね」
阪間は紙面を確認する。
「なにか心当たりでも?」
池永は阪間の表情を読み取り、問い掛けた。
「神白島から本土に渡った人物と、先週末に会ったんですよ」
「それは興味深いね」
メモ帳を取り出し、経緯を伝えると池永の表情が変わっていく。
「本土へ避難?」
その問いに阪間の顔は、少し陰りを見せた。
「はい。でも、裏付ける証拠までは」
「この紙面通りなのに?」
「確かに紙面通りなんですが……」
「気になることでも?」
「池永さんのお父さんを疑うわけじゃありませんが、羅真という独自に崇める神が引っ掛かるんです」
「この紙面ある、羅真様か」
「狂気に満ちた島民と邂逅と書いてますが、この手のオカルトは宗教絡みが定番なんです。根拠が薄い要因の一つですね」
「なるほど。たしかに戦闘など信じがたい内容だ。では、このネックレスについては?」
テーブルに置かれた赤い宝石の付いたネックレスを見て、阪間は驚いた表情をした。
「話を聞いた島民も、同じようなネックレスをしてましたよ!」
「そんなことが? これは亡くなる前に、父が私にくれた物だ」
「確か、自衛隊員から記者になったんですよね?」
「あぁ。そして、お孫さんも遺品の中に紙面と同じようなネックレスを見つけている」
「本土へ移った島民は、このネックレスを持っている。と、いうことですか?」
「いや、島民だけじゃない。父もその友人も当時は自衛隊員だ。もし、神白島の避難に関わっていれば……」
「関わった全員が持っている可能性がありますね。もう少し、深く調べてみます」
「よろしく頼むよ。調査費が足りないなら、言ってほしい」
「まだ大丈夫です。ありがとうございます」
2人が喫茶店を後にしたのは、2時半を回った頃だった。