第4話
フロア奥にある従業員通路に入ると、左右には各部署のネームプレートが視界に入る。
まるで市役所のように、企画室や運営室、会議室などが表示されていた。
通路の突き当たりの右側に、事務室があり、池永はドアを開いた。
室内には、従業員が三人。
リホは緊張しながらペコペコと頭を下げ、館長室へと入室した。
ドアを閉めると、池永は手を差し出し、高級感溢れる長いソファーに座るよう誘導した。
ソファーに座るとお尻が柔らかく沈む。
「緊張なさらなくても大丈夫ですよ」
「はぁ、はい」
久慈原は、思わず愛想笑いをしてしまう。
池永は、自分のデスクから写真立てを持ち、小さな冷蔵庫からペットボトルを取り出すと、ソファーの長さにバランスよく合わせた、木製のテーブルの上に置いた。
写真を見た久慈原は、見覚えがある。といった表情で池永に顔を向けた。
「左側が私の父親です」
「わかります。祖父と仲が良かったんですね」
「蓮司さんも、この写真をお持ちだったんですね」
「はい。棺に入れてしまいましたが……」
そこには、祖父か持っていた写真と同じ物があった。
2人は肩を組ながら写真に納められている。
「私の父、池永頼利は警察予備隊に従事していてね」
「警察予備隊……ですか?」
「今で言えば、自衛隊員ですね」
「この写真は、1954年に自衛隊法と防衛庁の公布がされた時の物です」
「だから、二人は軍服のような格好なんですね」
「父は1978年に、除隊しましたけどね」
「なるほど……だとしたら、記念写真みたいな感じなんですね」
池永は再び立ち上がり、デスクの引き出しから日本地図を取り出し、テーブルに広げた。
「紙面に載っている神白島の場所を見て下さい」
言われた通り、記事に載っているオーサカ湾に目をやった。
「ない……?」
「そう。いつからなのか分かりませんが、現在の地図に神白島は表記されていません」
どうしてだろう?
久慈原は自然と首を傾げた。