第2章 - 異世界
まるで次元のヴェールを越えて旅しているかのように、周囲の光景が突然変わり、広大な祭壇の壮麗さの中に立っている自分に気づいた。純白の衣に煌めく金の模様が施された人物たちに囲まれ、その役割について疑う余地はなかった。視線を移すと、庭で見かけたものに似たシンボルが目に入り、その時、静寂を破る声が響いた。
「ほほう、召喚が成功したようだな。」
威厳ある赤い衣をまとい、権威を象徴する冠を戴いたその人物は、王以外の何者でもありえなかった。
「この突然の召喚をお詫び申し上げる。私はロドリアン王国の王、グリムである。」
「私は日暮健。」
「お会いできて光栄です、日暮様。正しい紹介のために、私の部屋へ移動しましょう。どうぞ、ついてきてください。」
「…わかりました。」
王の後に続くと、召喚された部屋が地下に隠されていることに気づき、頭の中に疑問が渦巻いた。どうやってここに来たのか?どのような世界に足を踏み入れたのか?そして、何よりも、この物語において自分が果たすべき役割は何か?混乱する思考の中で、不思議と静かな落ち着きが私を導いた。
「どうぞ、こちらへ。」
一つの部屋に案内されると、召使いが迎え入れ、王が再び話しかけた。
「実を言うと、私は自分の到着の状況に少し困惑しております。」
「古代の伝承に従い、我が宮廷の魔導師たちに異世界から一人を召喚するよう命じたのだ。彼らによれば、我々の土地を脅かす魔王を討つことができるのはそのような存在だけであるという。」
『予測通りの展開だな』と私は内心で思った。
「日暮様、どうか我々の危機に力を貸してほしい。私の民の安全がかかっているのだ。」
自分の能力に自信がなく、戦いの準備もできていない私は、すぐに返事をためらった。「…恐れながら、戦闘の腕前は全く持ち合わせておりません。」
王の失望は明らかだったが、それでも彼の目には決意の光が宿っていた。
「心配するな。最良の剣士があなたを訓練するだろう。」
「…」
「召使いよ、ダーウィンをここに連れて来い。」
「ただちに、陛下。」
召使いが王の命を遂行するために急ぐ中、私は現状について更なる説明を求める機会を得た。
「陛下、もし許されるなら、現在の状況についてお聞かせいただけますか?」
王の表情が曇り、大陸が荒廃し、領域が崩壊寸前であること、そして迫りくる闇に立ち向かう最後の希望について語った。
「状況は日に日に悪化している」と彼は結んだ、その言葉が私の心に響いた。
『自分に本当に何かできるのか?』と私は内心で思いながら、その責任の重さが肩にのしかかった。
「日暮様、どうか我々に力を貸してほしい。我々は敵に対して力を欠いている。」
答えを考える前に、もう一人の人物が部屋に入ってきた。彼は鎧を身にまとった戦士であり、その姿は状況の深刻さを物語っていた。
「陛下。」
「ダーウィンに日暮様の訓練を速やかに開始するよう伝えよ。」
『待って、まだ同意していないのに』と内心で抗議したが、その声は届かないようだった。運命に身を任せ、私は王の意志に従い、召使いに導かれて部屋に案内され、王国の全貌を知ることになった。
『この見知らぬ領域をうまく乗り越えられるだろうか?』その思いが私の心に重くのしかかった。
***
新しい日が始まり、ダーウィンの下での訓練が始まった。それは剣技を磨くための厳しい訓練であった。一振り一振りが筋肉を焼き、訓練用の人形への一撃一撃が自分の未熟さを思い知らされる瞬間だった。
「千回振れ」とダーウィンが命じた、その声は洞窟のような訓練場にこだました。
「それは無理だ」と弱々しく抗議したが、腕は疲労で重かった。
「まだ試してもいないだろう」と彼は厳しく応えた。
震える手足と重い心を抱えながら、私はその困難な任務に取り掛かり、振り回すたびに世界が霞んでいった。
「998...999...1000。」
最後の一振りを終えると、地面に倒れ込み、体は激痛と疲労に打ちひしがれた。
『もう無理だ』と絶望的に思ったが、その時、微かながらも強い声が心の奥底から囁いた。
『世界の運命がかかっている』それは私に思い出させた。『そして、お前だけがその均衡を崩す力を持っているのだ』
新たな決意を胸に、私は立ち上がり、前に進む覚悟を決めた。
そして、日が経つごとに訓練を続け、体は痛み、心は疲れ果てながらも、この世界が切望する英雄になるための道を進んでいった。