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エッセイ

文字書きというのは悲しい生き物だ


ほんの少し前の話だ。

SNSでとある方とやりとりをした。


要約すると「創作頑張っているけれど、周りがキラキラしすぎていて疲弊してしまう」という事柄についての慰め合いだ。そう。私もそれに陥っている。



SNSは、……いや、X(旧Twitter)は、Twitterの癖に、作家志望の人間にとってはキラキラ情報で溢れている。Twitterの癖に。



T w i t t e  r の く せ に (強調)

泥 の 河 の く せ に !!!!!!

キラキラはインスタに行きやがれバカーーーーーーーーー!!



……という叫びはさておき、まあ本当に、SNSの情報がつらいこと。




「書籍化しました」

「受賞しました」

「コミカライズが出ます」

「重版になります」

「発売になります」



大変喜ばしい。

本当におめでとうと思うのだが、その反面、悔しさもみじめさも出てくる。

いくら自分を押さえようが、目を閉じ耳を塞ぎ『今回は、私の番じゃなかった』と言い聞かせ自分も護っても、どうしたって落ち込むしそれらの情報を見るのも嫌になる。



心の中の自分が暴れ出すのだ。

嫌味の一つもぶつけたくなってしまう。

彼ら・彼女たちも同様に、努力し研鑽を重ね、時に自分を曲げてまで受賞(書籍化・プロの称号)を勝ち取ったにもかかわらず、そこを見ないで憂さを晴らしたくなる。

どうしようもない人間である。



私は、今までそれらの感情を感じることがなかった。

それだけに、自分の汚い部分を見つめ・認めるのに抵抗があった。

口汚い言葉など吐きたくないし、ネットで管を巻くのも違うと考えていたし、今でもそれは変わらない。



しかし、自分が書いた物語が『落ちる』のは、本当に痛くしんどいもので……



この感情の処理に、いつだって困るのだ。


編集部に乗り込んで「なあ、どこが駄目だったって!?これだけ面白いだろ!ちょっと説明してくれない!?」と小一時間問い詰めたくなるし、他の作品をけなしたくなる。(しないけど)



「駄目だった」と現実を見るたびに、自分が「好き・自信をもって出せる」と確信して出した物語に急に影が差し、情熱の塊だったものは、冷え切った屑に変わる。



そうなったときに、それらをどのように処理するかは作家によるのだろうが、私が怖いのは「執着」である。




──何より好きだから、物語を書く。

──何より面白いと確信するから、毎日のように綴る。

──何よりキャラが好きだから、時間も労力もつぎ込む。



それらの情熱が詰まっているからこそ、否定(落選)は受け入れがたいし、されればされるほど意固地になり、自作に執着していく。「絶対面白い」「編集が馬鹿」「運が悪かった」「下読みガチャにはずれた」「世間がくそ」──、Twitterでもこんなつぶやきをよく見るし、こうして自分を保とうとしているのも事実だ。




しかし。

……それでは精神衛生上宜しくないのもわかっている。



みんな作家になりたいのだ。

とある人は私にこう言った。

「情熱を捧げているからこそ、それが駄目になった時は何も残らない。それが怖い」。


とあるつぶやきに書いてあった。

「私は作家にならなきゃいけないのに」。


とある嘆きが流れてきた。

「もう時間がないのに、どうして世間は認めてくれないの?」



そして。皆呟く。

「作家になれなきゃ意味がないのに。何も残らないのに」。




…………うーん……




それらの嘆きを見るたびに、少し考えてしまう。


「本当に何も残らないのか?」

「本当に意味がないのか?」

「今費やしている時間は無になってしまうのか?」




そして、頭の隅で自分が聞いてくる。



『──エルミリ(自作)がこの先、書籍化などの光を浴びないまま終わりを迎えたらどうする?失望する?』『書ききっても何も残らなかったら、どうする?』と。



そう問われるたびに、奥の自分がこう答えるのだ。



『書ききったらそこにENDがあるでしょ』

『何も残らない?経験値が残るでしょ』

『エリックとミリアの結末があるでしょ』


『あいつらの話をエンドまで書く前に、悲壮ぶって悲劇の主人公きどってんじゃねーよばーか!!!!』





──そう、これに尽きるのである。

エルミリを書き始めてから、何度ここに行きつき、なんど『これなんだよね』と、同じ場所にたどり着いたかわからない。



そのたびに「何やってるんだろうな、答えはとっくに出てるのに」とあきれ果ててしまう。





私は思う。

一次創作で戦っている皆が、とてもかっこよく誇らしいと。


「一次創作でプロになること」が、いや、そもそも「一次創作オリジナル畑でやっていくこと」が、ここまできついと思わなかったし、ここまで狭い門だとも、知らなかった。



そもそも好きでやっていることを「頑張ってる!」「つらい!しんどい!」「こんなに頑張ってるのに!」と叫ぶなんて傲慢で自分勝手にもほどがあるが、叫びたくなる気持ちはよくわかる。


これは、やってみないと解らないことだ。






ただ、────


今現在(・・・)花の(・・)咲いていない(・・・・・・)創作者へ




私が伝えたいことは、「あなたは十分カッコいいんだ」ということ。



世間に認められず、PVもつかず、今日も閲覧ゼロだがしかし、最後まで導こうじゃないか。

キャラの話をかけるのは自分だけ。

あなたが書かなくては死んでしまう彼らに、今日も息吹を与えよう。


「才能」なんて、磨いているうちに形になるもんなんだからさ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 拝読させていただきました。 情感伝わってきました。私も最後は自分が生み出したキャラたちのために完結させないとなあです。
[良い点] 手塩にかけた我が子が選ばれなかった気持ちは公募に出したことの無い僕には分からないものです。 結末がある、完結がある、経験値がある。 その通りだと思う。 [気になる点] 保志見さん前向…
[一言] すごく心に響きました。 見えるところはキラキラした情報であふれているけれど、その陰にどれだけの報われない書き手がいることか……(´・ω・`) それでも書き続ける書き手の方を、私は尊敬します。…
感想一覧
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