一飯の礼
「そうだ。飯の礼にこれやるよ」
「なに?」
唐突にそれを思いついた朱殷は、腰に下げた皮袋から黒曜石の首飾りを取り出した。
先程手に入れたばかりの首飾りだが、ハナの綺麗な白髪によく映えるだろうと思ったのだ。
白と黒の対比はとても美しいだろう。
ハナは食事の手をとめ不思議そうにこちらを眺める。
「首を出せ」
「首?」
ハナの細いうなじに手をかけ首飾りを着けると、やはりそれは白い髪によく映えた。
「首飾り?」
「思った通り、白い髪によく似合うな」
「これくれるの?」
「おう」
ハナは首元をさぐり、興奮を抑えるかのように丁寧に珠の一つひとつを確認しながら尋ねる。
「あの、本当に貰っていいの?」
「俺の耳朶飾りと揃いだ」
「嬉しい!飾りなんてつけたことなかったの!朱殷、ありがとう!」
揃いと聞いた途端にハナの顔がへにゃりと崩れた。
指で何度も首飾りをなぞり続ける。
これまで対価なしに誰かに恩恵を施そうと思ったのはなかったが悪くない。
「お前はそうやってへにゃへにゃ笑ってる方がいい」
「へにゃへにゃ…」
また頬を膨らませて怒られた。
ハナがずっと首飾りを触りながら怒るものだから、朱殷は満更でもなく様子でクククと笑った。