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嫌われ厄神と嫌われ神子  作者: ぽこ
1章
2/15

嫌われ厄神への祈り

この冬になってからもう何度目だろうか。

空高い神々の国に人間達の業の深い祈りが届く。


ドンドンと鳴り響く太鼓の音や。火と木のはぜる音とともに聞こえてくるのは呪いの祈り。



『疫神よ、東の彼の地に流行病を蔓延(はべ)らせ給え』

『厄神よ、東の彼の地の水を枯らし乾きを与え給え』



厄神は、黒曜石で出来た耳朶飾りを弄びながら呟く。



「また西のドマか」



その祈りは西の村ドマの人々のものだった。


それは自らの豊穣を祈るのではなく、

敵対する東の村アガシャの没落を祈るもの。



国造りの神によって造られたこの年若い厄神は、とても美しく、とても残酷だった。


これまで様々な土地に赴いては災厄をもたらした。

しかし残酷な厄神は、災厄によって人々が苦しもうが悲しもうが、ただその苦しむ様を眺めては退屈そうに笑うだけ。



西の太鼓の音を聞きつけてやってきたのは

年老いた優しい梟の神だった。



「厄神よ。悪しき祈りなぞ聞かずとも良いのだよ」



梟の神はその声色と眼差しは、明白(あからさま)(とが)めいて、西の祈りを嫌悪している。



厄神は笑った。



「だが祈りは神にとって力になる」

「西の祈りは悪しき祈りだ」

「それもまた然り」



梟の神は溜息をつく。



「人間の欲は尽きるはことない。今ある以上の豊かさを求め、欲しい欲しいと渇望し、その喉は潤うことなく求め続ける」

「どうせ退屈していたところだ」

「退屈凌ぎで災いをもたらすな」



若い厄神はひょいと界下の祭壇を覗きみた。



「人間の供物はなかなか造りがいいのでな、欲しいものがあれば祈りを叶える。それが供物の代償だ」

「取り立てて欲するモノなどなかろうに」



冬には珍しい果実や稲藁

大きな獣の毛皮

黒曜石の首飾



(あの首飾りは黒曜か)



先日供えられた耳朶飾りを気に入っていた疫神は、その首飾りが欲しくなっていた。



「まぁいいさ。すぐ終わらせる。じゃあなジィさん」



厄神は手短に梟に別れを告げると消えていく。

梟の神の優しい咎は、若き厄神の心には届かない。



「人を知り、慈しみの心を知るといい。そんな日が彼奴(あやつ)に来ると良いのだが」

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