第八話 ぼっち同士のシンパシー
久しぶりの投稿です。一時期やめようと思ったこともありました。でも皆さんの応援のおかげではなく、私がやりたかっただけです。残念でした。
音速スタートダッシュで辻と大差をつけた俺。
後ろを振り返ると辻はスタートから一歩も動いていなかった。
(なんだよ。早速戦意喪失か?手応えねえなぁ。ま、すごいって言われててもそんなもんか。)
その瞬間。
ピシッ
空気が凍るような音がした。
(な、なんだ?何が起こって、)
困惑している俺の前から声がする。
前から。
「ふぅーん。あんだけぇー大口叩くんだからぁー、何かぁーあると思ってたんだけどぉー。期待外れだなぁー。」
辻である。
(まさか今の一瞬でこっちまで来たのか?)
俺は辻を見た。汗ひとつ浮かんでいない余裕ある表情とニヤニヤした笑い。
(化け物かよ……)
これは勝てない……そう思った俺に遠くから声が響いた。綿だった。
「何諦めてんだよ!一緒に筋トレしただろ!そっちが勝手に付き合わせといて、勝手に諦めんなよ!俺の友達はそんなんじゃねえ!」
「綿……」
「早く行け!このままじゃ負けちまうぞ!」
そう言って綿は笑顔を見せた。
(ああ。俺はいい友達を持ったなぁ。)
そう思った俺の視界に入ったのは、ゴール寸前の辻だった。
「あのぉー感動シーンのとこ悪いんだけどさぁー。もう勝っちゃうよぉ〜。」
ピピー!!
「第一位!辻逞!」
◆◇
最終的な順位は一位が辻。二位が俺。三位が綿だった。
さて、次は立ち幅跳びか。
「何なかったことにしようとしてんの?」
綿が言った。
ぐぅ。
「うるせぇ!もう終わってんだよ!終わった事をくどくど言うのは時間の無駄だってもんじゃないすか?あぁん?」
「開き直った!?」
ーーーこんな会話よりも先に、まずは直近の問題を解決しよう。あの辻の圧倒的身体能力の高さをどう乗り越えるか。
そう俺らが悩んでいると、いつのまにか近くに辻が来ていた。
「えぇーっとだいじょぉぶーー?」
「お前のことで悩んでんだよ。喋りかけんな!」
「あたりぃー強くなぁーい?」
「今集中してるんですから黙ってください。」
「ご、ごめぇーん。」
トボトボと帰っていく辻の背中を見て、俺は気づいてしまった。よく考えれば、俺たち以外にしゃべっているのを見たことがない。
「お前、友達いないだろ。」
びくり
辻の背中が震えた。
そこで俺は閃いた。
「俺と友達にならないか?」
「え?」
そうだよ。最初から勝つ必要などなかった。俺の目的は学校で一番になることだ。強いやつを仲間に入れてもこの目的は達成できる。
辻は友達いないようだし、初めての友達に立候補してやるか!
そう思っていたのだが……
「無理だ。」
「嘘だろ。」
そんなに俺嫌われてる?
しょんぼりしていると、辻は焦ったように言ってきた。
「嫌っているというわけじゃないんだ。だけど…‥ダメなんだ。」
ん?どういうことだ?それを聞く前に、
「ぁいやぁーまぁー次は立ち幅跳びだよねぇーせいぜいぃー勝てるようにィー頑張るんだねぇーー。」
ピシッ
そう言ってどこかに行ってしまった。
まあいい。友達になるのが駄目でも勝てばいい話。立ち幅跳びは俺の得意分野だ。絶対に負けるわけにはいかない!
疲れたので寝ます。お休みなさい。