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7 王座への布石

 村を襲う盗賊達の撃退には、なるべくシファとクラリスに活躍してもらいたい。

 ここで名を売っておけば、後々の名声に繋がるからね。


 特にシファは、魔族であることが分かるような格好で、戦ってもらうことにした。

 最初は怖がられるかもしれないけど、善行は積み重ねが大切だ。

 人々を助ける魔族がいる──という噂が広まれば、結果として魔族のイメージアップに繋がるのだから、やる意味はある。


 で、盗賊達の撃退については、今のみんなの実力なら、私が出るまでもない……が、


『お姉様お姉様、私も行っていいですか?』


 ココアが戦闘に参加したそうなので、許可を出す。


『なるべく殺さないように。

 だから強い火は、使ったら駄目ですよ』


『は~い!』

 

 経験値を稼いで、大きくなれよ。

 ちなみに経験値は、相手の命を奪わなくてもある程度は入るらしい。

 そうじゃないと、訓練はすべて無意味になるからね。


 ココアが参戦してから程なくして、盗賊達は制圧された。

 私はいつも通り彼らに奴隷契約の術式を施して、村に「転移魔法」で送っておく。

 彼らには、そこで新たな生活を始めてもらう。


 そして今後の彼らの態度次第で、奴隷から解放するかどうかを判断することになる。

 彼らは今の王によって突然奴隷から解放されて生活基盤を失ったが(ゆえ)に、やむにやまれず盗賊に身を堕とした者もいるのだろうから、やり直す機会は与えたい。

 勿論、凶悪な犯罪者は、一生解放されないかもしれないが。


 なお、改心したかどうかの見極めは、アリゼのオーラを()る能力が役に立つ。

 その能力だと、嘘も見極めることができるらしいからねぇ……。

 今度私もアリゼに教えてもらって、習得してみようかな……。


 で、そのアリゼだが、回復魔法で怪我人の治療をしている。

 私も手伝うことにしよう。

 他の回復魔法が使えない者達は、瓦礫の片付けなどを手伝っているが、シファだけは村人達から怖がられているらしく、近づこうとしても逃げられて、何もさせてもらえないようだ。


 む、子供がシファに向けて、石を投げつけようとしている。


「ライフで受ける!!」


「!?」

 

 私は間に割り込んで、顔面で飛んできた石を受け止めた。

 子供は予想外の事態に驚いて、一目散に逃げていく。

 ……まあ、痛くはない。

 カンスト九尾の防御力をナメるなよ。


『お……おい……!』


 それでも、石を投げつけられれば精神的にくるものがあるし、シファの動揺は小さくないだろう。

 ましてやそれを、身代わりのように庇われればなおさらだ。

 彼女は私を気遣うような顔をするが──、


「心配は無用です。

 顔面セーフなので」


『むしろアウトなのじゃが!?』


 常人なら顔は弱点だろうけど、私は違うから問題無し。

 それに私がやらせていることでシファが嫌な思いをするのなら、私だって少しくらいそれを肩代わりするさ。

 ただ、それでこの一件は終わらなかった。

 このシファに対する扱いに、我慢ならなかった者がいたのだ。

 

「あなた達、助けられておいてその態度はなんなの!?

 襲ってくる盗賊と、助けてくれる魔族のどちらが怖いのよっ!!」


 クラリスが切れた。

 彼女とシファは立場こそ似てはいるけれど、そんなに仲が良いとは認識していなかったので、ちょっと意外だ。


「そんな恩知らずなことしていたら、次の機会には助けてもらえなくなるわよっ!!

 少なくとも、私なら助けないわ!

 そのことをよく考えなさい!」


「……っ」


 ヒョーッ、言いたい放題だぜ。

 だけど、さすがに反論する村人はいなかった。

 クラリスの言っていることは、正論だしねぇ。


 で、クラリスに叱責された村人は、戸惑っているかのごとく微妙な顔で頭を下げた。

 まだ心の底から魔族への恐怖心は払拭できていないようだけど、取りあえず態度には出さないように努力はしているようだ。


『あ……ありがとうなのじゃ……』


 シファがクラリスに礼を言うが、彼女は、


「私は不義理が許せなかっただけで、あなたの為ではないわ。

 私も城から脱出する時に、侍女とか色んな人に助けられて今がある訳だし、助けられて感謝しないなんてことは、最低よ!」


 と、少し不貞腐れたように言った。

 なるほど……城からの脱出となれば、逃がす方も命懸けだったのだろうし、クラリスはその献身に大きな恩を感じている訳ね。

 そりゃあ、シファに助けられたのに感謝しない村人の態度には、思うところはあるわな……。


 とはいえ、やるべきことはやらなければならない。

 私は「空間収納」から、食料や建築資材を取り出した。


 村人達は突然現れた大量の物資に驚いたが、次に私が発した言葉にも驚く。


「これは前国王が遺児、クラリス様からです。

 村の復興にお役立てください」 


「え……遺児……?」

 

「まさか……王女殿下……!?」


 その事実に気付いた村人達は、慌てて(ひざまづ)いた。

 しかしクラリスは──、


「過度の礼節は必要無いわ。

 今の私は、王族でも何者でもないのだから」


 と、村人達へ立ち上がるように(うなが)した。


「だけどこれから、王国を取り戻すわ!

 その時こそ、あなた達の忠誠を私達に捧げてちょうだい!」


 このクラリスの宣言によって、逆賊ラッジーンを倒す為の反乱が始まったのであった。

 明日は定休日です。明後日はなんとか間に合わせたい……。

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