6 回りくどい反乱開始
『はわあぁぁぁぁ……!!』
新しい妹のココアを連れて村に帰還した。
彼女にとっては見る物すべてが珍しいようで、目を好奇心で輝かせている。
そして──、
『お姉様お姉様、あれはなんですか!?
変な岩……木……?』
質問攻めである。
『あれは家ですよ。
あの中で生活する為に、人の手で作り上げたものです。
寒さや外敵から身を守ることもできるので、洞窟などよりも快適ですよ』
『はへぇ……。
作るのですか』
建物を初めて見ると、「変な岩や木」という感想になるのか……。
確かに材質としては使っているけど、知識が無いとそういう風にしか表現できないというのは、私にとっても新鮮だなぁ。
『あの緑色のは?』
『ゴブリンですね』
……なんだんか、人種という概念を教えるのも苦労しそうだ。
で、そんなココアを、まずシスに紹介した。
「ママン、元気だったよ~。
子供も一杯増えていた。
そんな訳で、これが新しくできた妹のココア」
『よ、よろしくお願いします、シスお姉様』
緊張した様子のココア。
まあ、一応シスの強さについては、事前に説明しておいたからね。
基本的に私達の種族は、尻尾が多い方が強い。
ココアはまだ尻尾が2本だが、シスは今や7本もあるし……。
迂闊に逆らうと、分からせ案件になってしまう。
『ふ~ん……。
言っておくけど、お姉ちゃんの一番の妹はあたしだからね?』
そこは譲れないらしい。
まあ、事実としては、シスが私のすぐ下の妹というのは間違い無いけれど、それ以上に元々野生動物の彼女としては、群れの中での序列が重要ということなのだろう。
ただ、シスはさほどココアには興味が無いようで、すぐに話題を変えた。
『あ、お姉ちゃん。
あたしの子供達に名前をつけてよ』
「え?
自分でつけないのですか?」
『あたしはよく分からないし。
パッと思いついたのがガッハとかギラハだけど、大丈夫だと思う?』
ネーミングセンスぅぅ……。
なんでそんなマイナー怪獣映画みたいなのを、思いつくの?
「……分かりました。
考えておきます……」
しかし4匹も考えるのか……。
男の子もいるだろうから、若草4姉妹縛りは駄目だろうな……。
ゴル●ーザ四天王を元ネタにして、ミリオーネ・カイナ・リシア・ルビカ……でどうだろう?
……って、もしかして故郷の弟妹達の名前を考えるのも、私の役割になるのだろうか……。
リ●ル様の大変さが実感できるよ……。
さて、数日後。
出発の準備ができたら、王座の奪還の為に動き出すぞ。
「ごめんなさいね、シファのことは後回しになってしまって……」
『うむ、苦しゅうないぞ。
どうせダンジョンの底まで行くには、時間がかかるしのぅ』
だねぇ。
今のシファの実力だと、ダンジョンの深部に潜るのはまだ厳しいだろう。
まあ、魔族と接触できれば、ある程度は従えることはできるのだろうけれど、四天王クラスの存在だと逆らう可能性がまだあるし。
「それでは修行がてらに、野盗や魔物──そして現国王派と戦いながら王都へ向かいましょうか」
『なうぅ!?
やはり妾も戦うのか!?』
「当たり前でしょう。
それにこれからのあなたの行動が、魔族のイメージを変えるのかもしれないし、重要ですよ」
『む……そうじゃな』
魔族であるシファが、クラリスの王座奪還を手助けをしたという事実が人々の間に広まれば、良くも悪くも大きな反応があるはずだ。
それを上手く利用しなければ、人間と魔族の国交樹立という未来図を、実現することは難しいだろう。
「それじゃあ行きましょうか、クラリス。
国を取り戻しましょう」
「……ええ!」
そんな訳で、そうだ、王都へ行こう。
メンバーは私、ナユタ、レイチェル、シファ、ココア、そしてクラリス、キエル、アリゼのパーティーだ。
とは言っても、私は王都へ行ったことが無いので、「転移魔法」で直接行くことはできない。
だからクラサンドまで「転移」して、その後は別の移動方法で王都へ向かうことになる。
その時は「飛行魔法」を使ってもいいんだけど、ここはあえて徒歩で王都に向かうことにした。
その目的は、旅の道中で国の現状を確認する為だ。
それを未来の王となるクラリスが把握しているのとしていないのとでは、やはり王座を取り戻してからの国家運営の方針に差が出てくると思う。
まあ、他にも目的はあるが……。
で、王都へ向かって進んでいると、やっぱり出るわ出るわの盗賊達。
それは後先を考えずに奴隷から解放されてしまい、生活の基盤を失った獣人達の他に、騎士団が機能不全を起こした所為で取り締まる者がいなくなった結果、犯罪組織が活発に動いているというのもあるらしい。
現在の王は、あまり統治には興味が無さそうだな……。
そしてついには、村を襲撃する集団まで──。
そう、盗賊団の集団が、とある村を襲っていた。
普通の村なら自警団や冒険者が常駐しているので、小規模の盗賊団なら襲わないのだが、村を襲っているのはかなり大規模な盗賊団らしく、村の防御を今にも突破しようとしている。
「シファ、助けに行ってください!!」
『妾が!?』
「人間達に良い所を、見せるチャンスでしょ。
魔族のイメージアップ計画の為に、やってください!」
『し……仕方がないのぅ……』
「うち達も行くよ!」
シファに続いて、キエル達も参戦する。
特にクラリスは、ここで国民に恩を売っておけば、後々の支持率に繋がるからね。
打算的だが、重要なことなので頑張れ!
いつも応援していただき感謝。