プロローグ さあ、話し合おうか?
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攫われていたドワーフ達を送り届けた私は、その里に避難していた我が村人達を連れて、村へと「転移」した。
一部、余計な連中もついてきているが……。
村に到着すると、いつもなら妹のシスが出迎えてくれるのだが、さすがに出産直後で子供達からも目を離せないからなのか、出てこなかった。
その代わり、吸血鬼となってしまったダリーが出迎えてくれる。
今は夜だから、屋外に出ても問題は無いようだ。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「ただいまー」
ダリーの目が、赤く光っているなぁ……。
吸血鬼だから仕方がないけど、そんなダリーの姿を見て──、
「こやつは……!!」
ハイラント公爵と、その随伴者達が色めき立つ。
まあ、吸血鬼は人間の天敵みたいなものだから、分からないでもないけれど……。
「落ち着いてください。
私の従者です。
この村には人間もゴブリンも、獣人も、ドワーフも、魔族も共存して暮らしています。
今更いちいち驚かないでください」
「……」
公爵達は無言だったが、強い不信感を私へと向けていた。
人間の国の貴族だからこそ人間を1番に考え、他種族に対する警戒というか、差別意識が強いのも分からないではないが……。
「ここは私達の村です。
何者であろうとも、ここでの勝手は──敵対行為は許しませんよ」
これだけは譲れない。
「貴様……魔物の分際で無礼な!!」
騎士の1人が剣を抜くが、その瞬間──、
「ぐわあぁぁぁっ!?」
その騎士が炎に包まれる。
彼は全身の炎を消す為に、地面へと倒れ込んで転がるが──、
「……あ?」
実際には炎なんて発生しておらず、公爵達は茫然とする。
「幻術ですよ。
次は本物の炎になります。
あのように──」
私は上空に──空一面を覆うように、炎の膜を発生させた。
かなり上空だから、ここまではそんなに熱は届かないが、それでも熱風を肌身に感じたのならば、これが「幻術」ではないことが分かるだろう。
「お、おぉ……!!」
「私がその気なれば、あなた達だけではなく、あなた達が住む都市全体を焼き払うことも可能だということを留意しておいてください」
「くっ……!!」
公爵達は息を呑み、それ以上は言葉を発さなかった。
これで話し合いができる状態になったな。
「では、こちらに」
私は会議室がある家に、公爵達を連れて行く。
ここで、今後のことを話し合うことになる。
……話の中心になりそうなクラリスは、凄く居心地が悪そうにしていた。
あと、無関係ではいられないであろうセリスとレイチェルも気が重そうだが、私も同じ想いだよ。
王位の簒奪には、姉さん達が関わっているかもしれないしなぁ……。
明日は間に合うかな……?