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8 文明的な生活の第一歩

 オオカミとの戦いで負った傷を回復させた私は、レベルアップ作業に(いそ)しみつつ、魔法の練習を続けていた。

 少なくとも電流が使えたのだから、他の属性魔法も使える可能性は高いと思う。


 とはいえ、まずは電流を使いこなせるようになるのが先だろうか?

 使う(たび)に火傷をしていたら、身体(からだ)がいくらあっても足りないし、完全に体外で発生させることができるようにしたい。

 魔力を体外に放出することはできたから、放出と同時に電気への変換ができれば……。

 

 それとも弱い電流をあえて身体に流して、耐性を獲得するとか?

 まあ耐性は、レベルアップして身体が強くなれば、いずれは電流にも耐えられるようになるかもしれないけれど……。

 ともかく色々とやってみよう。


 で、獲物を追い求めていたら、洞窟を見つけた。

 いざという時はここに逃げ込めば、グリフォンからの襲撃を(しの)げるかもしれない。

 あの空中を自在に飛翔できる機動力も、この洞窟の中では通用しないだろうし、有利に戦えるだろう。


 でもその前に、中の安全を確認しよう。

 え~と……気配を探ってみると、何か生き物はいるようだ。

 ということは、危険なガスが充満しているということは無さそうだな。

 そういうガスが充満して酸素濃度が低いと、一呼吸で死ぬ可能性もあるから油断はできない。


 問題は洞窟内にいる生物が、危険なものかどうか……だ。

 万が一危険な生物が棲息しているのなら、家族は連れてこられない。

 洞窟内は消毒だぁ~っ!!


 む、コウモリがいるな。

 コウモリは食べられるけれど、病原菌の宝庫だからなぁ。

 前世の世界でもコウモリ由来の伝染病が猛威を振るって大変だったし、駆除しておこう。


 ……まあ、同じく病原菌の宝庫であるネズミを食べている私達には害は無いかもしれないけれど、念の為に……。

 できれば触れずに倒したいな。


 丁度いいから、魔法の練習を兼ねよう。

 集中した魔力を体外へ放出した瞬間に、燃焼させるイメージで──ファ●ガ!!

 ……出ない。


 メ●ゾーマ! マハ●ギダイン! マ●リト!

 う~ん、駄目か。


 キツネなら伝承で「狐火」とか使っているから、火属性には適性があると思ったんだけどなぁ……。

 あれって人魂みたいな感じだっけか?

 ……って、え?


 私の目の前に、蝋燭(ろうそく)のように、小さな火が(とも)った。

 あれっ、できた!?

 こんな簡単に!?


 もしかして種族固有のスキルだから!?

 おお……嬉しいけど、蝋燭の火程度では、攻撃に使えないな……。

 もうちょっと大きくなる?

 この火に魔力を込めるイメージで……あっ、大きくなった。


 じゃあ、これを自由に動かすことは……ゆっくりだけど、なんとか動かせる。

 でもこのスピードじゃ、敵に当てることは難しいな……。

 もっと訓練が必要か。


 それか、数で補う……とか。

 あっ、駄目だ。

 「狐火」を2つ発生させることはできたけど、3つ目で全部消えてしまった。

 複数個を制御するのは、かなり難しいぞ、これ……。


 それでもこのスキルを伸ばしていけば、いずれはどんな敵が来ても戦えるようになるはすだ!

 積極的に使って、鍛えていこう。


 ただ、現状ではコウモリ退治は無理なので、今日は帰るか。


 あ、そうだ。

 火があるのならば、肉を焼いて食べることもできるようになるので、もう細菌や寄生虫を気にしなくてもよくなるぞ。

 今晩はネズミかウサギでも狩って、焼き肉パーティーだ!


 ……まあ、血抜き処理とかしていない肉だし、調味料も無いので、大した美味しくないという事実は変わらないけどね……。


 で、肉を焼いていると、ママンや姉妹(しまい)達から「何やっているんだ、こいつ?」って顔で見られた。

 特にママンは、肉を焼いた時に臭いが出るのが嫌だったらしく、ちょっと怒っていた。

 ああ、臭いが他の肉食獣を引き寄せることを、嫌ったのか。

 今度から別の場所で焼いてから、持ち帰るか。


 でもママンも、焼いた肉を食べさせたら、機嫌は良くなったようだ。

 生の肉よりは美味しかったらしい。


 あと、好奇心旺盛な妹ちゃんが、火に触れちゃうということがあったんだけど、彼女は熱さを感じていないようだった。

 え、「狐火」って熱を伴わないものなんだっけ!?

 

 いや、肉は焼けているしなぁ……。

 私達の種族には、火に対する耐性があるのか?

 私も触ってみたけど、熱くなかった。

 やっぱり耐性があるっぽいな。


 ふむ……いざという時には、森に火を放って、炎の中に身を隠すというのもありか?

 でも、炎の中って呼吸できるのだろうか?

 今度焚き火の中に顔を突っ込んで、試してみよう。


 それからみんなは、私の真似をして「狐火」を使おうとしていたけど、私だってレベルアップをしたおかげでようやく使えるようになったのだから、無理で──あれぇ、ママン使えてるぅ!?

 なるほど、ママンはもう成獣だから、元々使える状態になっていた訳か。

 ただ、今まで火を使うという、発想が無かったのだな。


 ……スキルを教えてくれる親が、いなかったのかな?

 ママンもこの厳しい自然の中を、(ひと)りで生きてきたのだろうか?

 

 あれ? でも私達の父親はどうなんだ?

 父親も成獣だったはずだよね?

 その父親も、「狐火」を知らなかったのだろうか?


 まさかママン単独で、子供を作った……なんてことはないよね?




 ……その「まさか」だということを知ったのは、ずーっと後になってからだ。

 応援ありがとうございます。

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