エピローグ 再会
新展開に入るので、章を区切ります。
ドワーフ達を彼らの里に送り届けた時、レイチェル達はまだ帰ってきてはいなかった。
やっぱり普通の人間だと、長距離の「転移魔法」には魔力が足りないか……。
まあ、それでもレイチェルの魔力は、規格外なほど多くはあるのだけどね。
だけど、まだまだ万能というには程遠い。
そんな訳で私が空を飛んで、レイチェル達を迎えに行った。
お、いたいた。
「アイちゃん!」
「迎えにきましたよ~」
「……と、いうことは、問題は解決したんだね。
鉱山の方から物凄い爆発が起こるのが見えたから、心配していたよ……」
「ええ、キエルさん。
取りあえずは……ですけどね」
魔族との問題はまだ解決していないので、本当に一時的な決着だと言える。
だけどさすがにクジュラウスを追って、遠い魔王城まで乗り込むのは時期尚早……というか、それは本来、シファの役目だしね。
そもそも魔王城はかなり遠い場所にあるらしいけど、そこへ何日もかけてすぐに行くほど暇でも無いし。
今はシファについてきた魔族達に奴隷契約を施した上で魔王城の近くまで送り込んで、魔族の動きを監視させるくらいでいいだろう。
さて、ドワーフ達を里に送り届けて、村に帰ろう……と思ったのだが、洞窟の前へ行くとレイチェルの母親であるセリスが戻ってきていた。
「お母さん!」
「レイチェル!」
抱き合う2人。
親子の感動の再会である。
確かセリスはサンバートルの町へ、魔族の出現を報告しに行ったんだっけ?
彼女はあまり貴族と接触したくはない様子だったし、今のサンバートルは王都から逃げてきた貴族が沢山いる可能性もあるのだけど、相手が魔族となると贅沢も言ってはいられないので、苦渋の決断といったところか。
……って、見覚えの無い騎士姿の男達もいる。
対魔族の援軍かな?
彼らは私の姿を見て、ギョッとしている。
尻尾で隠しているけど、全裸だからなぁ……。
破廉恥だとか、思われているのだろうか。
そんな男達の中に、老齢の男がいた。
60歳に届くかどうか……という感じかな。
ただ、あまり老いは感じない。
鎧を着込んでいるのでハッキリとは分からないけど、その身体には筋肉が詰まっているように見える。
マッチョな爺さんだなぁ……。
「獣人……いや、魔族か?」
私の方を見て、爺さんが呻くように言った。
腰に佩いた──つまり吊すようにして着けた剣の柄へと手をかけており、私のことを警戒しているようだ。
うん、魔族も連れているしね……。
その時──、
「お祖父様!?」
そんな声が上がった。
「ク……クラリスか?」
私と一緒に転移してきたクラリスの姿を見て、爺さんが反応する。
うん? クラリスが孫なの?
王女であるクラリスの祖父ってことは、前々国王……ではないよね?
国王って基本終身制で、死んだら代替わりだろうし。
となると、母方の祖父か。
「ハイラント公爵ですよ、アイ様」
「セリスさん」
知っているのか、セリス?
まあ、彼女が連れてきたのだろうから、当然だろうけど。
でも、魔族が絡んだ危険な案件に、公爵自らが出てくるものか?
それとも、別の目的があって……?
その辺のことをセリスに確認しようとする前に、彼女は私の人間形態への感想をもらした。
「すっかりと美しくなりましたね、アイ様」
「いやぁ……お世辞でも嬉しいですね」
「ふふ……お世辞なんかでは、ありませんよ」
おいおい、私を口説いているのか、この一児の母。
直球で褒められると、顔が熱くなってくるじゃないか。
「それにしても、ハイラント……公爵ですか。
そのような大物が、何故ここへ?」
「王都から落ち延びてきたようです」
まあ公爵と言えば、王族の親族である場合が多いし、新王にとっては粛正対象か……。
「それで……私の父でもあるなのですが、頭が固いのでアイ様に対してなにか無礼があったら、懲らしめても構いません」
「Oh……」
セリスは貴族の出身だとは思っていたけど、公爵家なんかい。
それって家出していなければ、国王の妻になっていた可能性もあったってこと?
場合によっては、クラリスではなくレイチェルの方が、王女になっていた……ということか。
それはちょっと、面倒になことになるかもしれないなぁ……。
公爵がこんな辺境の地に落ち延びてきて、それで終わるとは思えない。
ここで旧王家の再興を、考えてる可能性もあるぞ!?
私の視線は、祖父と話し込んでいるクラリスへと注がれるのだった。
明日は定休日です。明後日は間に合えば更新しますが、明明後日は用事があるので確実に更新はできません。