15 未来への禍根
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『はあぁぁ~っ!?
私が長い年月をかけて発見し、ようやく掘り起こした古代文明の叡智がぁっ……っ!!』
クジュラウスが発狂しそうな勢いで、衝撃を受けている。
だが、貴様のこれまでの苦労とか、知ったことか。
さあ、プルートは撃破したので、残りはスルトだ。
こいつが動き始めると、たぶん世界が滅茶苦茶になることだろう。
そうさせない為にも、ここで完全に破壊しておく必要がある。
まあ、プルートをぶつけて、スルトの装甲に穴を開けていなければ、それもちょっと無理な話だったが、今なら攻撃は通るはずだ。
「全・属性発動!!」
私は地・水・火・風・光・闇と、私が使えるすべての属性魔法を同時に発動させる。
本来なら属性ごとに相性があり、時として相反する属性を同時に使うと術の失敗を招くこともあるというのが、この世界における魔法的な常識のようだ。
だけどすべての属性には、それを司る精霊が存在し、力の源となっている。
それらの精霊達を上手く使役し、協力させることができればどうなるか──。
それは莫大な力を生み出すことになる。
普段いがみ合っているような存在が、一致団結するのだ。
大きな力を生み出すのも当然だよね。
うん、身も蓋もないことを言えば、極大●滅呪文だ。
で、具体的にをどうやって精霊達を従わせるのかと言えば、膨大な魔力を代償とするのが1番手っ取り早い。
イメージとしては、札束でそれぞれの顔を叩くような感じだ。
彼らは結構現金なので、彼らにとっての食料というか嗜好品である魔力を報酬としてちらつかせれば、すんなりと言うことをきく。
『な、何をするつもりだ!?
待て、待てぇ、それをどうする!?』
「こう、するのですよ。
テラ・フレ●ァァァァァーっ!!」
私は融合させて増幅させた精霊達の力を、スルトにできた穴に目掛けて撃ち込んだ。
現時点ではこれが、私にとっての最大最強の攻撃となるだろう。
ぶっちゃけ全力で使うと、小型核並みの威力が出そうなので、使い道が無いと思っていたけど、今こそ使い時だ。
私の攻撃はスルトの装甲に開いた穴に吸い込まれていき、それからほんの少し後、スルトは内側から膨らんでいく。
内部で起きた爆発のエネルギーが、逃げ場所を求めているのだ。
実際、攻撃を撃ち込んだ穴からは、最早炎とも呼べない高熱の光が勢いよく漏れ出している。
まあこれなら、内部はもう修理が不可能なほど破壊されているだろう。
いや、装甲の表面にもヒビが入ってきているから、全部が吹き飛ぶのも時間の問題かな?
『こっ……こんな、馬鹿なぁぁぁぁ!!』
クジュラウスがそんな叫びを上げた瞬間、周囲が閃光に染まった。
これから起こる爆発はさすがに私にも耐えられないので、「転移魔法」で鉱山の外まで脱出する。
「うはっ、凄っ!」
私が外に出ると、周囲は土煙に満たされていて、何も見えなかった。
これでは状況が分からないので、もうちょっと離れた場所に「転移」しようか。
すると鉱山のあった場所から、巨大なキノコ雲が立ち上っているのが見えた。
「山が完全に吹き飛んでいるよ……」
数千m級の山がクレーターのようになり、その中心から噴煙が上がっている。
そして今も空中に巻き上げられた土砂が地上へと、火山弾のように降り注いでいた。
これは私の攻撃だけでこうなるとは思えないから、スルトが内包していたエネルギーにも誘爆したってことなのかな?
ナユタやシファ達は無事だろうか?
あ、気配はあるな。
前もって鉱山から離れておくようには言っておいたし、自前の防御魔法で身を守るくらいのことはできるか。
あと……クジュラウスは──。
気配は感じないけど、死んだのか、それとも逃げたのかは分からない。
逃げたのだとしたら、またいつか戦うことになるのだろうなぁ……。
あいつは諦めの悪いタイプだろうし、逃がしたのだとしたら痛いな……。
「…………将来のことは、今考えても仕方がないか」
まずはみんなと合流しよう。
「よっと」
「師匠!」
『アイ殿!』
私が傍に「転移」すると、ナユタとシファが駆け寄ってくる。
特にシファは、私の目の前に来てもスピードを落とさず、そのまま抱きついてきた。
『アイ殿~!!
さすがにあの爆発ではもう駄目かとぉ~!!』
シファは半泣きで私にすがりつく。
そんなに心配してくれたのか……。
『おぬしがいなくなったら、妾1人でどうやって生きていけば良いのじゃ~!?』
……私に依存しすぎじゃない?
でも、尻尾をブンブンと振っていて、可愛いと言えば可愛いが。
私はそんなシファの頭を撫でた。
「私はどこにも行きませんよ。
一緒にシファの夢で見た国の形を、実現するんでしょ?」
『うう……アイ殿ぉ~!』
シファはさらに強く私にしがみつく。
まあ、彼女にはそのまま気が済むまで、したいようにさせるとして……。
「お前ぇが、あのアイか……。
随分と別嬪さんになったなぁ。
ともかく、今回は一族を助けてくれて感謝する」
と、ドワーフの族長であるガラルが頭を下げた。
私の人間形態を初めて見るからなのか、かなり戸惑っている様子ではある。
あ、戦いの中で身体に纏っていたシーツが、焼け落ちているな。
尻尾できわどい部分は隠しておこう。
「頭を上げてください。
我が村にとっても無関係ではなかったので、やったまでのこと……。
これまで通り助け合っていける関係であるのならば、礼には及びません」
「いや、こちらこそ。
今後ともよろしくだ」
うん、取りあえず、問題は解決した。
さて、帰ろうか。
私はみんなを連れて、ドワーフの村に向かって「転移」することにした。
……あれ? そういえば、プルートとスルトを倒した経験値って入ったのかな?
レベルが上がった感覚が無いけれど……。
もうカンストしちゃった?
明日は普通に間に合いそうにありませんが、明後日も用事があるので更新は休みます。明後日は……まだ分かりません。