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13 プロト・スルト

 私の言葉に、シファが反応する。


『ロボ……!?

 ロボとは夢に見たマジンガーなんたらや、ボルテスなんちゃらのような……?』


 古いな、おい。

 せめてガン●ムって言えないのかよ……。

 これはシファの前世が、私よりも前の世代だというのは確定かな?

 

 いや、リメイク作品やゲームに登場しているから、そちらで知っている可能性もあるけれど……。

 そういう意味では鉄●28号や鉄腕ア●ムみたいに、何度もリメイクされている作品を言われたら、逆に年代特定が難しくなったかもしれん。


 まあそれはさておき、私達の目の前に現れたのは、巨●兵を彷彿とさせる姿をした、明らかにロボット……いや、この世界的には魔像(ゴーレム)の一種か。

 ともかく生物ではなく、魔道具の延長にあたる存在だ。


 しかし終末の巨人スルトとは、北欧神話にも存在する巨人だよね……。

 そのプロトタイプを略してなのかなんなのか、プルート……。

 確かローマ神話の冥界の神だったっけか。

 奇妙な一致だねぇ。


 あ、勿論「スルト」や「プルート」とか、この世界の言葉の発音と地球のが一致している訳ではない。

 クジュラウスの「念話」に含まれている言葉のイメージが、一致しているというだけだ。

 実際に発音したら、別の言葉になるだろう。

 たとえば意味は同じ「エルフ」でも、この世界における人間の言葉で発音すると、「エロク」になったりする。

 

 微妙に似ているな……。 

 この世界、たまに地球の伝承と、共通する生物がいるからなぁ。

 もしかして、パラレルワールド的な繋がりがあるのか?

 あるいは、世界を管理している神が同じだから……とかいうのもありそうだけど……。


 なお、「ロボ」は普通に日本語で「ロボ」と、私は発音した。

 それが聞き取れるシファは、やはり転生者なのだと改めて分かる。


 まあ、それはともかく、問題はプルートだ。

 こいつは明らかに、クジュラウスよりも強そうな空気を(かも)し出している。

 油断はできない。


『おう、なにやら目が光っておるぞ……!?』


 シファの言う通り、プルートの目が(まばゆ)い光を帯びた。

 その瞬間にはもう、私は動いている。

 そうじゃないと、間に合わないので。


「シファ!!」


『ほわっ!?』


 直後、シファがいた辺りを、プルートの目から発射された光線が通り過ぎる。

 まさに光の速さだが、発射に微妙なエネルギーの溜めが必要らしく、それを察知することで私は事前に動くことができた。

 シファを抱きかかえて、光線を回避したのだ。

 

 そうでなければ、今頃シファは光線の餌食となっていただろう。

 その威力は、如何に炎熱耐性を持つシファでも、耐えきれるものではない。

 あくまで耐性は耐性に過ぎず、無効化ではないから耐えられる限度があるのだ。


 そして炎熱無効化を持っている私でも、たぶんあの光線にはダメージを受ける。

 光線には熱だけではなく、それとは別の膨大なエネルギーも含まれている。

 それが魔力なのか気なのか、それとも別の何かなのかは分からないけど、それを直接身体(からだ)に叩きつけられれば、無事では済まないだろう。

 シャワー程度なら人体に無害な水でも、ダムの放水を受ければ押し潰されるようなもので、何事も物量というのはそれだけで破壊の力たり得る。


 だから光線を避けただけで、危険が無くなる訳ではない。

 その目標を外した光線は地面に接触し、そして一条の光という形に圧縮されていた巨大なエネルギーは、地面に当たった瞬間に形をを失って周囲に解放された。

 つまり大爆発を引き起こしたのだ。


『うわあぁぁ!?』


 あかんな、これは。

 炎熱無効の私なら、衝撃波や飛んでくる石の破片などを防御すればなんとかなるが、シファや他の魔族達は耐えられないだろう。

 こんな狭い空間では力の逃げ場が無く、内部の存在により強い熱と圧力として作用するからだ。

 ちょっと……というか、かなり違うかもしれないが、圧力釜を連想してもらえば分かりやすいだろうか?


 うん、クジュラウス以外は影に引き込んで、転移させた方がいいね。


『シファ、魔族達が問題を起こさないように、しっかり手綱を握るのですよ』


 シファ達を転移させて、念話で語りかけると、案の定シファからは──、


『えっ、(わらわ)が一人で!?』


 泣き言混じりの言葉が返ってきた。

 知ってた。


『魔族の王女なんだから、しっかりしなさい!

 それと危険かもしれないので、ナユタ達と合流して鉱山から離れてくださいね』


『くっ……分かったのじゃ……』


 自信の無さそうなシファの返事を受けて、念話を切る。

 仮に魔族達が暴れたとしても、シファとナユタ、そして100人以上のドワーフ達がいれば、負けはしないだろう。

 よし、これで心置きなく戦えるな。


『ふん……やはり今の攻撃を耐えるか』


「あなたもね」


 今や炎に満たされて、地獄のような状態となっているこの空洞の中にありながら、クジュラウスは平然としている。


「特殊な防御魔法ですか」


『ああ……古代の魔法を私が復活させた。

 あらゆる外部からの影響を、遮断する』


 つまりすべての攻撃を、無効化するって感じか。

 アス●ロンかな?

 それなら……。

 

「でも、あなたの方から攻撃はできないとか、欠点があるのですよね?」


『!?』


 クジュラウスの顔が、驚愕の色に染まる。

 だけど簡単な理屈だ。


「あらゆる攻撃を無効化ができる無敵の存在へと本当になっているのなら、そこの巨像を呼び出す必要は無いでしょう?

 ならばあなた自身は術の維持で精一杯とか、なにかしらの理由で戦えないというのは、容易に想像できますよ」


『ぐ……。

 だが、貴様を(ほうむ)るには、プルートだけで十分なのも事実だ。

 こやつの「滅びの光」は通じなかったようだが、兵装はそれだけではないぞ……?』


「でしょうね」


 さて、このロボを倒せるかどうか……それが問題だ。

 明日は通常通りの定休日です。明後日は分かりません。

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― 新着の感想 ―
[一言] いうてでかいロボって落とし穴に弱いよなあ
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