12 中ボスと大ボス
体調が安定しないので、しばらくは更新も不定期になります。
一般の魔族達は、もうシファと戦うつもりは無いようだ。
となると残る敵は、クジュラウスのみとなった。
じゃあ、ナユタはもう回収しておくかな。
「ナユタ、ドワーフ達は任せます。
ガラルによろしく」
「おう!」
ナユタは元気よく返事をしながら、影に吸い込まれていく。
そのまま他のドワーフ達が待っている、坑道の入り口まで「転移」させた。
『ふん……戦力を減らして良かったのか?』
クジュラウスはそう問うけど、まあ問題は無いだろう。
「私達がここにいる意味が分かりませんか?
あの吸血鬼に守られていた、この鉱山の奥へと無事に辿り着いている意味を──」
『なんだ……と?』
私の言葉に、クジュラウスの顔色が変わる。
判断が遅い。
「あなたがあの吸血鬼よりも強くなければ、私の敵ではないということですよ?」
『馬鹿な、あのグリーグスが敗れたというのか!?』
「私の一族は、かつて魔王をしていたのですよね?
そんなに不思議な話ではないでしょう?
その身を以て、私の実力を試してみますか?」
私は複数の「狐火」を生み出し、クジュラウスの周囲に配置した。
しかしクジュラウスは、余裕の表情だ。
『ははっ、この程度の炎、私には効かぬぞ?』
でしょうね。
魔族は炎に対する耐性を持っている者が多いようだけど、クジュラウスもそうなのだろう。
しかも彼は、耐火の術式も併用しているようだ。
彼の周囲に、幾重もの防御魔法の気配が感じられた。
だが、これならばどうかな?
「ファイ●ーブリザード!!」
私の掛け声で、「狐火」達がクジュラウスを閉じ込めるように、球形に渦を巻く。
つまり彼を、炎の球の中に封じ込めた訳だ。
オーブンの中に放り込まれたようなものだから、普通の生物ならば致命的な状態だが──。
『くくっ、こんなもの……ぬうっ!?』
自身には効かない──と、高を括っていたクジュラウスから、驚愕の声が上がる。
『なんじゃ、何が起こっておる?
あの程度の炎なら、妾だって平気じゃが……』
やはりシファでは分からぬか。
「炎の中に、地属性魔法で作った、鋭利な鉄片を混ぜただけですよ。
それが高速回転して、奴を斬り裂いているのです。
そして炎の耐性は、体内にまでは適用されませんから、傷口から火傷はするでしょうね」
『な、なるほどのぅ……』
ただこれは、かなり手加減した攻撃だ。
地下で大火力を使うと、酸欠とか鉱物に引火とかの大変な事になりかねないので、火力はかなり落としてある。
だからこれで、クジュラウスが即死するようなことは無いだろう。
火力の弱さは勿論、小さな鉄片で斬り裂いた程度では、魔族が持つ再生能力で、すぐに回復されてしまうはずだ。
それでも傷を負い続けている以上は、苦痛が無い訳ではないだろうし、嫌がらせとしては十分に効果が期待できる。
『くああぁぁぁーっ!!』
クジュラウスが魔力で炎を吹き散らしながら、炎の球から飛び出してきた。
それほど大きなダメージは受けていないようだけど、全身に傷痕が見える。
すぐに治るとはいえ、一時的に動きも痛みで阻害されるし、かなり煩わしいだろうな。
『お、おのれぇぇぇぇ!!』
「おや、たった一撃で余裕が無くなっていますね?
あの吸血鬼は、今の10倍はある炎の威力に耐えましたが……」
「ぐっ……2種類の属性を同時に使いこなすとは……。
器用な真似を……!!」
10年近くかけて色々と練習したからね。
やろうと思えば、全属性を組み合わせることだって可能だ。
まあこれで、クジュラウスが我が一族を愚弄した件については、気が済んだ。
これ以上戦いを長引かせて逃げられても困るから、さっさと片を付けよう。
ここは手っ取り早く、我が9つの尾に貫かれてもらお──うん?
今、クジュラウスが何か術を使ったな?
そして次の瞬間──、
「こっ、これは……!!」
『なっ、なんじゃ、これは……!?』
目の前に何かが現れる。
これは「転移」というよりは、「空間収納」から取り出された……!?
『まさか……これをここで使うことに、なろうとはなぁ……!!』
そしてその物体を呼び出したのは、当然クジュラウスだろう。
『見よ……!
古代文明が遺した、技術の結晶……!!
世界を焼き払う、終末の巨人・スルトの試作品──!!
試作型終末の巨人・プルートの威容を!!』
それは全高が7mほどもある人型だった。
だが、巨人族ではない。
その存在に、生物的な特徴は無かったからだ。
全身に鎧を着込んでいるようにも見えるが、関節部は明らかに中身が入っていない構造になっている。
これはまさに……うん。
「ロボだこれーっ!?」
まさか異世界で、そんな物を見るとは思っていなかったよ……。
応援ありがとうございます。元気の素です。