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11 天狐族

 今日はなんとか間に合いました。でも明日は分かりません……。

『クックック……。

 自分自身のことを知らぬとは、なんと滑稽な……』


 と、クジュラウスは私のことを嘲笑(あざわら)うけど、ママンから何も聞いていないんだから仕方がないじゃん。

 たぶんママンも知らないだろうし、それはおそらく一族が絶滅寸前になっていたことにも関係があるのだろう。


 なお、クジュラウスは、シファのことを放置気味だ。

 たぶん自分の脅威とは、見なしていないんじゃないかなぁ……。

 おいシファ、舐められてるぞ!


『ぐぬぅ……』


 シファは(ひたい)から脂汗を流して、固まっている。

 やはりクジュラウスに対しての苦手意識が、かなり強いようだ。

 そのクジュラウスは──、


『天狐族とは──』


 と、勝手に語り始める。

 知識をひけらかすのが好きなタイプか。


『かつて上位の魔族として、魔界に君臨していた種族。

 複数の尾を持ち、炎を自在に操る、(くれない)の半獣半人。

 何代か前の魔王にもなっていたという。

 だが、権力争いに敗れ、一族郎党根絶やしにされた……と記録にはあったのだがな……』

 

「!!」


 私、魔物じゃなくて魔族だったのか!

 どちらかというと、聖獣とか神獣とかの系統かと……。


 しかもかつては一族の中から、魔王も出しているという名門中の名門。

 だけど没落して、全滅かぁ……。

 でも、実際には逃がされた者がいて、ママンがその末裔だった……と。

 う~ん、立場的には私って、シファと似たようなものなのかな?


「それでは私にも、魔王になる資格がありそうですね」


『!?』


 シファが物凄い顔でこっちを見た。

 ……が、


『……そうじゃのぅ』


 少し考えて、その方がいいか──というような顔になった。

 おいおい、本気にするな。

 私はそういう立場は、面倒臭いので嫌です。


「……冗談ですよ」


『まったくだ。

 半分(けもの)のような種族が、高貴なる魔王の座に座ろうというなど、おこがましい』


「まるであなたこそが、魔王に相応(ふさわ)しいとでも言うような口ぶりですね」


『ふん……』


 クジュラウスは鼻で笑うが、否定はしなかった。

 

 こいつも魔王の座を狙っている訳か。


「はは……我が一族を侮辱しておいて、無事いられると思っているような低脳に、魔王が務まりますかね?」


『何だと……!?』


 煽られてぶち切れそうになっている時点で、小物感が凄いな。


『者ども、この不届き者を捕らえよ!』


『は、はっ!』


 クジュラウスの命令によって、魔族達が襲いかかってきた。

 取りあえず風邪属性魔法で空気の壁を形成し、動きを止めよう。


「シファ、雑魚(ざこ)はあなたに任せます」


『へえっ!?』


 驚くシファだが、なんで私が全部対処する前提なんだよ……。


「私に鍛えられたあなたなら、きっと大丈夫ですよ。

 ダンジョンでの厳しい修行を、思い出してください!」


『う……うむ……!』


 シファは渋々、魔族達に向き直る。

 そのタイミングで、私は魔族達を解放した。

 自由になった彼らは、一斉に襲いかかってくるが──、

 

『ふん!』


『ガフッ!!』

 

 跳びかかってきた魔族の一人を、シファは拳1つで叩き伏せた。


『あれ……?

 動きがよく見える……』


 シファは困惑しているようだが、彼女は元々これくらいの実力はあったのだ。

 ただ、戦いを怖がる性格の所為で、今までは冷静に対処できず、実力を発揮することができなかった。

 それがダンジョンにおける戦闘の繰り返しで場慣れした結果、実力を発揮できるようになった──ただそれだけである。


 まあ、魔族達が自分達の王女を相手に、本気で殺しにきている訳でも無いというのもあるが……。

 なんだかんだで躊躇(ちゅうちょ)がある為、彼らも実力を発揮できてはいないのだろう。

 実際、初手から殺傷力の高い魔法は使ってこなかった。


『今下がれば、これまでの無礼は許すぞっ!!』


 一方のシファは、思っていた以上に実力が出せた所為で、調子に乗っている。

 ただ、今の彼女の言葉は、魔族達にも効いているようで、彼らの動きも止まっていた。

 これはシファの魔物を操る能力が、多少なりとも魔族にも効いているってことなのかな……?


 ならば敵は、クジュラウス(ただ)一人ということになるね。

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