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8 地下の奥へ

 更新ペースが乱れる……。

「ほら、シス。

 あなたももっと強くなれば、こんな姿になれるかもしれませんよ」


 私はシスに、人化した姿を見せた。

 美しかろう?


『わあ、お姉ちゃん強そう』


 ……綺麗とか可愛いとかではなく、そういう感想になるのは、感性が人間とは違うからなのかなぁ……?


「実際、オーラは以前よりも強くなっていますよー」


「そうなのですか?」


 自分ではよく分からないけれど、オーラが()えるアリゼがそう言うのならそうなのだろう。

 ということは、完全体になった今の私は、グリーグスと戦った時よりも桁違いの強さになっている可能性もあるのかな?

 これから魔族と一戦を交えようというのだから、悪い話ではないが……。


 ただ、私が大丈夫でも、それ以外の者達の安全も確保しなければならない。


「それじゃあ、シス。

 元気な子供を育てるのですよ」


『うん、お姉ちゃんも頑張ってね』


 シスと子供達は、「転移魔法」で村に送り返すことにした。

 少々魔力を消費したけど、さすがに産後で疲弊しているシスは戦力としては期待できないし、なによりも子供達の安全が第一だ。


「ダリー、シスをよろしくお願いします」


「お任せください、ご主人様」


 シスと子供達の護衛はダリーに任せる。

 ただし、今の彼は吸血鬼(ヴァンパイア)なので、日光が大敵だ。

 夜になるまでは、シスの影の中に潜っていてもらおう。

 シスも影属性魔法は使えるので、影の中に物を収納する術も心得ている。


「じゃあ、またね」


 シス達を転移させて一仕事を終えた気分になったが、これで終わりではない。

 これから攫われたドワーフ達を救出する訳だが──、


『コボルト達の話によると、ドワーフ達はこの先の休息所で休んでいるそうじゃ。

 だが、全員ではないようじゃのぅ』 


 どうやらドワーフ達は、この廃坑の奥底でなんらかの発掘作業に従事させられているらしい。

 その作業は交代制で、一時も休まずに発掘が続けられているそうだ。

 つまり現在休息中の者達と、現場で作業中の者達を、別々に救出する必要がある。


『休息所の警備はコボルト達だけらしいから、戦闘にはならんじゃろう』


 実際、休息所にはあっさりと何事もなく辿り着いたし、シファの能力でコボルト達も従えることができたので、戦闘にはなっていない。


「みんなー、無事かー!」


「おお、ナユタ!」


 ドワーフ達はナユタの姿に気付いて駆け寄ってくる。


「ガラルのおっさんはいないのか?

 ここに何人いて、何人いないんだ」


「それは……」


 ドワーフ達の話によると、ここに連れてこられたのは120人くらいで、現在その半数が発掘現場で働かされているらしい。

 長のガラルも作業中だという。


「魔族の奴らは俺らが逃げたら、今作業中の連中を酷い目に遭わせるって言うだよ」


「そして今度は、里に残してきた女子供にも容赦しないぞ……ってよぉ!」


 そんな風に脅されている所為か、ドワーフ達はこの場からの脱出に難色を示した。


「残りの皆さんは、我々が責任をもって救出します。

 むしろあなた達が残っていて、万が一人質にされたら、救える者も救えなくなります」


「むう……」


『私を信用してくださいよ』


 と、私はキツネの姿に戻る。

ドワーフ達にとっては、こっちの姿の方が馴染み深いだろう。


「おお、あんたか!?

 あんたなら大丈夫だ」


 かつてドワーフの里を救い、原始竜(ダイナソー)のような強大な魔物を倒せる私の実力を知っている彼らは、安心してくれたようだ。


『じゃあレイチェルは、彼らを里まで送り届けてください』


 レイチェルも一応転移魔法が使えるから、ここは彼女に任せよう。


「分かったのです。

 まあ、アイちゃんの方が、先に帰っているかもしれないけど……」


 ただ、レイチェルが持つ魔力量では、1度の転移だけでドワーフの里までは到達できない。

 距離もさることながら、人数も多いからね。

 

 だから何度も休息を挟みながら、転移を繰り返す必要がある。

 場合によっては、1度の「転移」で済む私の方が先に帰り着いてしまうかもしれない。


 いずれにしても休息中に魔物などの襲撃を受けた場合は、レイチェルが戦って魔力を消費する訳にはいかないから、護衛が必要だ。

 だけどドワーフ達は、強制労働を受けて疲弊しているだろうから、あてにはできない。

 

『キエルさん達には、護衛をお願いします』


「任されたよ」


 ただし、護衛はキエル・アリゼ・クラリスだけだ。

 

「オレは全員助け出すまで、師匠に付き合うぜ!」


 ナユタは同族のドワーフ達をすべて救い出すまでは、ここに残るつもりのようだし……。


『それでは私と行くのは、ナユタとシファですね』


『ほむぅ!?』


 何故、シファが驚く……。

 まさかレイチェル達と帰るつもりだったのか?


『これから魔族と対決するというのに、魔族の姫のあなたが行かなくてどうするのですか……!!』


『いや、じゃが、なぁ……?』


 謎の同意を求められたが、察することはできるよ。

 自分の命を狙った者達に対して、苦手意識があるというのも分からないではない。

 だけどこれは、逃げ続けていても解決する問題ではないのだ。


「あなたの希望は却下します。

 レイチェル、お先にどうぞ」


「はいなのです」


 次の瞬間、レイチェル達の姿はかき消えた。


『んなぁぁ~!?』


 ナ●チかな?

 そんな嘆き声を上げても、駄目な物は駄目だぞ。

  

 それじゃあ、いよいよ発掘現場へと侵入するか。


『まずはドワーフ達を救出するまでは、気配を隠蔽して戦闘を()けるように進みましょう。

 ナユタもシファも、気配の隠蔽は未熟なので、頑張るのですよ』


「おう!」


『大きな声は出さないでくだざいよ……』


 逆にシファは──、


(わらわ)は石……妾は空気……』


 本気でこの先にいる魔族に関わりたくないらしく、一生懸命存在感を消そうとしている……が、実力が足りないから、すぐにバレそうだな……。


 まあ、私の「幻術」で、姿だけなら完全に消せるけれど……。


 その後、コボルトによる案内で辿り着いたのは、底が見えない深い深い縦穴だった。

 明日は定休日です。完全にストックが尽きたので、明後日も微妙……。体調次第ですな。

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