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7 キツネさん、大地に立つ

 オオカミとの戦い──。

 この窮地から抜け出す為には、魔法を発動させるしかない。


 だけど先程のように、魔力を放出してぶつけるだけでは、致命傷を与えることができないだろう。

 魔力を「火」などの攻撃に使えるものに変換しなければならないけど、現状で私ができることといえば、魔力を体内に循環させて身体強化させるか、ちょっとだけ体外に放出させることくらいだ。


 ただ、体内ではある程度自由に魔力を扱うことができるようになっているから、体内でならば魔力を攻撃魔法に変換することは不可能ではないのかもしれない。

 ……が、体内で攻撃魔法なんてものを発動させたら、私が死なないか?


 体内で火とか風とか土の魔法は、最悪の結末しか想像できないな……。

 でも水……ではなく、元からこの体内に流れる血液なら操りやすいし、攻撃に転用できる可能性はあるかもしれない。

 勢いよく体外に放出して、ウォーターカッター的な攻撃とか……。

 ……うん、出血多量で死ぬような気がする。


 ……となると、他に体内で使えそうなものは……生体電気か。

 生物の身体(からだ)には、微弱な電気が流れている。

 で、それをデンキウナギのように、攻撃として使える者までいる。

 それと同じことができれば、いつオオカミに逆転されてもおかしくないこの戦いを、勝ち抜くことができるはずだ。


 ただ、何処で使うか──だ。

 今オオカミに噛みついている牙から電流を流せば、効果は高いのかもしれないけれど、私自身の頭……特に脳にダメージを受けてしまう可能性がある。

 それはあまりにも致命的だ。


 それならば頭から遠い、まだ無事な右前足の爪先から放電できるようにしよう。

 いや、それが可能なのかどうかは、まだ分からないけれど……。


 とにかく、オオカミの心臓の辺りに、私の右前足を添える。

 右手は添えるだけ……!

 そしてその爪先に魔力を集中し──とはいっても、オオカミに噛みついている顎の強化にも使っているから、全部はまわせない。


 この調整はなかなか難しいぞ……!

 それでもやらなければならない。


 よ~し、右前足に集中した魔力を、電気に変換して増幅させることを強くイメージしていく。

 できるか……?

 できないのか……!?


 …………………………バチッ。


 痛っ!?

 右前足の先に衝撃が走る。

 電流は発生した……けど、私にもダメージがある!!


 これは私の方に電気が逆流しないように、コントロールしないと!

 変換した電気は、すべてオオカミの方へ流すように……!!

 いくぞぉ、らい●ーけーん(●光拳)!!


「ギャウッ!?」

 

 私の右の前足から(ほとばし)る電流が、オオカミの身体に流れた。

 けれど私の方に、逆流してくるのもある。

 オオカミの首に噛みついていた口にも、電流は流れてきたのだ。


 ただ、これはまだ痛いだけで済んでいる。 

 しかし電流の発生源になった右前足は、痺れて感覚が無い。

 これは後で確認したら、結構酷い事になっている予感……!


 だけどそれだけに、右前足が接触していたオオカミの心臓付近も、小さいダメージではないだろう。

 電気ショックによって身体が麻痺したのか、それとも心臓麻痺を起こしたのか、急激にオオカミの身体から力が抜けた。


 今だ!

 そーいっ!!


 私は顎の力だけでオオカミの身体を持ち上げ、そのまま地面に叩きつけた。

 そしてオカミの首を不自然な方向に曲げつつ、私の全体重をかけて──よし、へし折ることができた!!


 勝った──第1部完。


 これで大幅なレベルアップが期待できるけれど、私が受けたダメージも小さくはない。

 オオカミに噛まれた左前足はズタズタだし、電流が流れた右前足は酷い火傷だ。

 これ……回復するの?


 取りあえず、安全な場所へ──巣へ帰ろう。

 だけど前足は使えないから、後ろ足で……人間のように2本の足で立ち上がって、歩いて帰るしかないな……。


 むう……人間の時には当たり前のようにできていた二足歩行なのに、バランスを取るのが難しいぞ、これ……。

 そんな訳で私は、ヒョコヒョコと歩きながら家路につくのだった。

 


 

「キュ~ン……」


 巣に帰ると、妹ちゃんに大層心配された。

 痛いから、傷口を舐めようとしないで!!

 そして彼女らは、私から片時も離れようとしない。


 う~ん、ゆっくりと休みたいところなんだけどねぇ……。


 というか、なんとか前足の傷を回復させないと、なんにもできんわい。

 ……回復魔法を使えないかな?

 傷口に魔力を集中して、細胞の分裂を促進させるイメージで……。


 うん、患部が温かいような気はするけど、治っているかどうかはよく分からないな……。

 あ、患部の血流の流れを良くするイメージを加えた方が、傷口を回復させる栄養も供給されやすいかな?

 一応出血はほとんど止まっているから、大丈夫だろ。


 そして3日(みっか)ほどが経過した頃──。


 おお……前足が動かせるようになってきた。

 まだ痛みもあるし、見た目も酷いけど、ちゃんと回復はしている。

 しかも異常な速度で。


 奇跡も、回復魔法も、あるんだよ! 


 ……まあ、これが回復魔法の効果なのか、それとも私の種族としての生命力の強さなのかはよく分からないが……。

 もしかしたら「自動回復」とかのスキルを、持っているのかもしれないし。


 いずれにしてもオオカミを倒した今、大幅なレベルアップもしているだろうし、これからは更なる大物を狩れるかもしれない。

 魔法も鍛えて、グリフォンとの戦いに備えるぞ!

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