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5 永遠の……

 私達はシス達を助ける為に、かつてミスリル鉱山だったという廃鉱へと突入した。

 裸マントで。

 まあ突入とはいっても、シファが新しく目覚めた魔物を従える能力によって、コボルト達に案内させているので、今のところ問題は無い。


 この能力は結構強力らしく、私にもちょっと効いているからなぁ……。

 これからは少しシファに優しくしてあげよう……と、うっかり思ってしまうくらいなので、なんだか悔しいから今後も厳しく接しようと思う。

 しかしこういうところで、自分が魔物だということを実感することになるとはなぁ……。

 実際、人間にはまったく影響が無いようだ。


 で、坑道に入ると、中は真っ暗だった。

 ドワーフやコボルト達は闇の中でも目が見えるから、照明は必要ないのだろう。

 私だって夜目は()くから問題無いけど、他の者達はそうもいかないので、光属性魔法で坑内を照らしながら進む。

 元々は廃坑で寂れていた所為か、薄暗いと不気味だねぇ……。


 その所為か──、


「だ、大丈夫かなぁ……?

 もしも魔族が出てきたら……」


 昔話で魔族の脅威を聞いているらしいキエルは、かなり緊張している様子だった。

 普通の人間には勝ち目が無いという認識なのだろうし、不安なのは分かる。

 

「大丈夫ですよ、シファを見ていてまだ魔族が怖いと思いますか?」


「まあ確かに……」


「拍子抜けよね」

 

『どういう意味じゃ!?』


 そういう意味だが……?


「そもそも四天王のグリーグスは倒しましたから、あいつ以上に強い奴は、そうそう出てきませんよ。

 あいつよりも強くなければ、私の敵ではありません」


『は……?』


 私の発言を受けて、シファが信じられない物を見るかのような目でこちらを見る。


『グリーグスを倒した……?

 え……魔王軍最強の精鋭である、四天王の1人じゃぞ?

 その内でも、母上の代から不動で地位を維持し続けているのはあやつだけという、不死身の怪物のグリーグスを……!?』


 そうなのか。

 他は前任者が死亡して代替わりしたとか、欠番になっているのかな?


「久々にちょっとだけ本気を出しましたけど、苦戦はしませんでしたね」


『そんな馬鹿な……!!』


 シファは愕然とするが、シスでも調子が良ければ負けない程度だったと思うんだけどなぁ……。


 それはともかく暫し坑道を進むと、照明に照らし出された人影が浮かび上がる。

 闇の中に茫然と(たたず)んでいたから、ちょっと怖い。


「シェリー……ちゃん?」


 キエル達はそう思ったようだが、シェリーはドワーフ村に残してゴングの補佐をさせているのでここにはいない。

 彼女達は会ったことが無いから知らないのも無理はないけれど、それはダリーだった。


「シェリーの弟のダリーですね」


「弟!?」


「え……でもメイド……」


「あら~」


 混乱するのも分かる。

 ダリーは何処から見ても女の子にしか見えない、立派な男の()だ。

 しかもグリーグスに血を吸われて吸血鬼(ヴァンパイア)化した為、瞳が赤くなり肌も青白くなっているので、以前よりも妖しい色気を(かも)し出している。

 

 これはもしかすると、シェリーよりも美少女っぽいのでは……?

 その上、おそらくもう年は取らない。

 永遠に男の娘のままだ。

 キャラが濃いなぁ……!


 そのダリーだが……立ったまま気絶している?

 いや……一応目は開いているし、茫然自失となっているのかな?

 グリーグスの支配から突然解放されて、そのショックで思考が停止しているのかもしれない。

 ……なんだか、初めて会った頃の、奴隷として酷い目に遭った所為で心を閉ざしていた彼を思い出す。


「ダリー、ダリー」


 私が呼びかけても、彼は答えない。

 それじゃあ……私の尻尾で、その全身を包んでみる。

 昔のダリーは、このモフモフの中だと心が安らいでいたようだ。


 ……まあ、最近は違うが……。

 お……ダリーの鼻がヒクヒクと動いている。


「ふへ……ふへへへ」


 なんだか陶酔し始めた。

 ダリーもシェリーも、私の毛皮の匂い嗅ぐのが好きだからなぁ……。

 レイチェルやナユタには見慣れた光景だけど、キエル達は少し引いていた。


「ダリー、聞こえますか?

 助けに来ましたよ」


「はっ、これはご主人様!?」


 よし、ちゃんと意識が戻ったようだ。

 それにしても、すぐに私だと認識したな……。


「私のことが分かるのですか……?

 姿は変わっているのですが……」


「はい、ご主人様の匂いは忘れません!」


 犬かな……?


「とにかく無事……とは言いがたいですが、合流できて良かった。

 あなたは吸血鬼になってしまいましたが、その能力を村の発展の為に活用してください」


「かしこまりました」


「それと……これからシスと合流したいと思います。

 あなたはシスの世話を、グリーグスから命じられていたのではありませんか?

 シスは無事ですか?」


 ダリーがこんな坑道の中にいたのも、ただの見回りということだけでは無いだろう。

 何かしらの役割を与えられていたはずだ。


「は、はい!

 大変なんですよ!

 今から案内します」


 え……大変!?

 シスに何かあったの!?

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