4 ケモミミ美少女爆誕
「んんっ、あー、あ~」
おお、ちゃんと声が出る。
今までは声帯が人間の物とは異なっていた為、人間の言葉を喋ることは難しかった。
いや、風属性魔法を駆使して空気の振動を制御すれば不可能ではないけれど、「念話」の方が簡単だし。
「どれ……」
私は水属性魔法で水鏡を作り、自身の全身を映してみる。
ほぉ……人間の年齢にしたら、十代後半くらいか。
顔はシュッと鋭い印象はあるけど、なかなか可愛いんじゃないかな?
身長は170cmほどで、手足がすらりと長い。
かといって痩せすぎということもなく、胸のサイズがキエルやアリゼほどではないが、そこそこの大きさだ。
複乳じゃなくて良かった。
で、その下はウエストは引き締まっているけど、ヒップラインは結構ムチムチとしているし、なかなかエロいかも……。
あと、頭髪はキツネの時と同様に赤いけど、腹部の毛は白かった所為か、陰毛は白いな……。
白かぁ……なんか変な感じ。
そして最大の特徴だが、キツネの耳と尻尾がそのまま残っているところだ。
まさに異世界で定番の、獣人という感じ。
美少女にしてモフモフとか、パーフェクトな存在だよ!
「いいじゃん、いいじゃん!」
人の姿を手に入れ、ようやく普通に喋ることができるようにもなった。
人の手で器用に道具も使える。
私の異世界生活は、今から本当の意味で始まったと言えよう。
さて、みんなと合流して、この生まれ変わった姿を見せてあげるか!
で、私が地上に近づくと、笑い声が聞こえる。
『ふはははは、王者の前にひれ伏すが良い!』
シファは魔物を従える能力に目覚めたようで、彼女達の周囲ではコボルトと思われる犬型獣人のような魔物達が平伏していた。
彼女はそれが嬉しいのか、はしゃいでいる様子だ。
ただ、シファの素性を知らないキエル達は、訳が分からないという顔をしていたが……。
「みなさん、大丈夫ですか?」
そんな彼女達に、私は上空から声をかける。
『おお、アイ殿!
妾は新たな能力に、目覚めた──誰じゃっ!?』
シファのみならず、みんなが私の姿を見て驚愕した様子だった。
「私です。
アイですよ。
これが私の真の姿です」
「確かにその耳と尻尾は……」
「アイちゃんだけど……」
「師匠、変身もできたのか!?」
「ええ、なかなか可愛らしいでしょう?」
実際、色恋沙汰には興味が無さそうなナユタですら、少し見惚れているようだった。
他の者達も、直視するのも躊躇われるといった感じで、顔を赤くしている。
もしかしたら、天然で魅了効果もあったりする?
「というか、なんで裸なのっ!?」
「……あ」
おっと、この世界に生まれてから十数年、ずーっと全裸だったから、もう裸が恥ずかしいという感覚も無くなっていたわ……。
「はは……失敬失敬」
私は「空間収納」の中に入れていたシーツを、マントのように身体へと巻き付けた。
そんな私の姿を──、
「…………」
何故かクラリスだけが、疑念に満ちた……というか、なにやら訝しげな顔をして見ている。
「何か……?」
「いえ……獣人?……だったのね……」
ああ、クラリスは獣人によって国を追われたんだっけ。
私の尻尾を見て、色々と思う所はあるのだろう。
実際何か言いたげではあったが、それを口にするのを躊躇っているようだ。
『それよりもおぬしの所為で、妾の偉業が霞んでしまったではないか!!』
そこでシファが割り込んできた。
まあ、彼女にとっての最大の見せ場が、私のお色気サービスで塗りつぶされてしまったのは事実だろうねぇ……。
「いや……そもそもなんなのよ、あなた達は……?」
そこでようやく、クラリスのツッコミが入る。
魔物を従えるシファ……と、私もゴブリンを従えているから同じようなものか。
傍目には怪しすぎる存在だろう。
「え~と……私は見ての通りの、特殊な種族です。
ひょっとしたら魔物なのかもしれませんが、無闇に人間と敵対するつもりはありません。
シファは……魔族の王女です。
部下に裏切られて命を狙われたので、城から逃げ出してきました」
「魔族!?」
「王女……!」
「あらあら」
キエル、クラリス、アリゼは三者三様の反応を示した。
魔族と言えば、人間達の間では半ばおとぎ話の存在になりつつあるので、それが実在していたことに驚くキエルと、シファが自身とまったく同じような身の上であることに反応するクラリス。
そしてアリゼは何を考えているのか、いまいち分からないな……。
スラム育ちらしいから、そもそも魔族がなんなのか分かるほどの教養が無いのかもしれない。
まあ、オーラ視のスキルで相手の本質を見抜くことができるから、私達が何者なのかは関係ないのかもしれないけれど。
「私達はちょっと訳ありな存在ですが、これからもよろしくしていただければ幸いです」
「うちは元々アイちゃんが人間ではないことを知っていたから、構わないけれど……」
「私もですー」
キエルの言葉にアリゼは頷く。
クラリスは無言だけど、反対はしないところを見ると、消極的に賛成ということだろう。
「ありがとうございます。
それではこれから魔族に攫われた私の妹とシェリーの弟、そしてドワーフ達を救出するのが今回のミッションですので、協力をお願いします」
「ちょっ、魔族と敵対するのは、聞いてないよ!?」
「言わなかったですからね。
キエルさん達はドワーフの避難誘導をお願いしたいと思っているので、戦う必要はありませんよ。
今はシファが魔物を操れるようになったので、戦いが起こらないかもしれませんし」
「そ……それならいいけど……」
そんな訳で、いよいよシス達を救出する準備が整ったぞ!!
明日は定休日です。