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3 ヴァンパイアハンターI

 ダリーは魔王軍四天王のグリーグスに血を吸われてしまい、吸血鬼(バンパイア)になってしまったらしい。

 じゃあ彼を奪還する為には、こいつは邪魔だな。

 眷属として操られたらたら、人質に取られるよりも厄介だ。


 それにシスを倒したのもこいつらしいから、報復しなければ気が済まない。

 ただ、気になることはある。


『まさか、あなたが死んだら眷属まで死んでしまう……なんてことはありませんよね?』


「さあ……吾が輩は死んだことが無いので、分かりかねるね」


 本人も分からないか……。

 だけど逆に言えば、必要には感じていないから、眷属に対してそのような設定は意図的に行っていないということでもある。

 おそらく眷属達は、主人であるグリーグスから何かしらのエネルギーの供給を受けなければ生きていけない……ということもないだろう。

 それならば彼が死んでも、支配から解放されるだけのはずだ。


『分かりました。

 じゃあ、死ね!』


「!」


 初手でグリーグスに向けて、最高火力の「狐火」をぶつけた。

 四天王ならば、このくらいやらなければ効かないと思ったので。


「グ……ガガァァ……っ!!」


 事実、グリーグスは生きていた。

 即死しなかっただけでも、大したものだ。

 ただ、全身が焼けただれ、もう殆ど骨だけの状態になっているが……。

 これで生きているのだから、吸血鬼の生命力は凄まじいな……。

 しかも徐々に、肉が再生され始めている。


「お、おのれぇぇー!!

 よくもぉっ!!」


『おおっ!?』


 グリーグスの全身から、黒いオーラが(ほとばし)る。

 それに触れても、物理的なダメージは生じなかった。

 ただ、ごっそりと生命力が、奪われていく感じがする。

 私にとっては大したことないけど、常人なら一瞬で衰弱死するかも……。


 なるほど、村の建物にさほど被害が無かったのは、この攻撃のおかげか。

 一方でシスは生命力を奪われ続けて、負けた……って感じなんだな。

 搦め手を使うような奴は、シスにとっては苦手なタイプだ。

 私も戦闘が長引くと不利か……。


 ならば早々に片付けてしまおう。

 吸血鬼が相手ならば──、


「なっ──グガッ!?」


 私は尻尾を伸ばして、グリーグスの胸に突き入れる。

 吸血鬼と言えば、心臓に杭を打ち込むのが1番だろう。

 我が「幻術」によって私が人間だと思い込んでいた彼にとって、尻尾での攻撃は完全に不意を突かれた状態だったようで、上手い具合に攻撃が入った。


「ぎ……ぎざま……っ!!

 ごれは……!!」


 口から血を溢れさせるグリーグスの言葉は聞き取りにくかったが、その困惑は確かに伝わってきた。


『妹がお世話になりましたね……!!』

 

「あのギヅネの……っ!?」


 今頃気付いたか。

 しかしこれでもグリーグスは、まだ死なない。

 じゃあ突き刺した尻尾を、限界まで発熱させるね。


「ギッ、ギャアアアァァァァァァァァァァ──!!」


 これは効いている。

 しかも高熱を発している尻尾に、グリーグスは手で触れることもできない。

 だから自力で引き抜くことは困難だ。

 魔法についても、苦痛の所為で使う余裕は無さそうだな……。

 つまり、詰みだ。


 やがてグリーグスの全身が、炎に包まれる。

 今度は身体の内側からも燃やしているから、さすがに耐えられないだろう。


「わっ……吾が輩が……こんな……」


 やがてグリーグスの身体は、炭化して崩れ始める。

 だけど灰からでも復活してくる可能性も無いとは言えないから、浄化魔法もかけてトドメを刺しておこう。


 うむ、完勝!

 四天王がこの程度なら、たとえ魔王が相手でも、どうにかなりそうだな……。

 いや……次の魔王ポジがシファだと思うと、魔族って大したことないな……ってなるが。


 さて、そのシファ達だが……地上に降ろした先で、魔物に囲まれているね。

 しかしナユタやレイチェルがいれば問題は無いだろうけど、ちょっと数が多いな……。

 ……って、おや?


 魔物が大人しくなって、ひれ伏している……?

 ふむぅ……魔物を従わせるのは、魔王とかの能力じゃないかな?

 魔王の娘であるシファにも、そういう能力が受け継がれていてもおかしくないけど……。

 それとも転生者であるシファが、転生時に得たスキルか?


 いずれにしてもダンジョンで鍛えたおかげか、その能力がようやく開花したのかもしれない。

 実際、私も魔物の(たぐ)いだからなのか、ちょっとだけシファが魅力的に見える。


 というか……なんだか身体(からだ)に違和感が……。

 あ……尻尾が増えた。

 魔王軍四天王という大物を倒して大量の経験値を得たおかげが、ついに九尾のキツネに──完全体になったぞ!


 九尾のキツネなんて、数々の作品でラスボス的なポジションの存在じゃん。

 最早、無敵……か……?

 あ、獣●槍はやめてください。


 んん? なんだか、身体にまだ違和感が……。

 あ……ああ……あんっ!

 あまり経験したことが無い感覚が、私を襲う。

 体内が(うごめ)いている……というか。

 でも、ちょっと気持ちいい。


 ん……終わったか。

 なんだか……身長が伸びた?

 私は自分の身体を見る。

 おお、一部を除いて毛が無い!


 というか、人間の手足だー!!

 そして、2つのオッパイがある!!


 ……え? なんで?

 私達って、完全体になったら──あるいは一定のレベルに達したら、人型になる種族だったの!?


 あ~、でも尻尾と耳は残っている感じか。 

 この世界の獣人ってほぼ動物なのが残念だったけど、まさか自分が理想的な獣人タイプになるとは……。

 

 元の姿には……あ、念じれば元に戻れるね。

 そして人型にも、すぐになれる。

 便利!


 とにかくついに人間の姿に……!

 これで思う存分、美少女と百合百合できるぞ!!

 今まではどうしても、「美少女と野獣」でしかなかったからなぁ……。

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[良い点] ここからは遂に百合百合出来るですね〜 不覚により危機中で余裕ないけど…
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