表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/216

1 みんなの行方

『まさか……シスが負けるなんて……』


 いや……相手は魔族だし、多勢に無勢だったら……。

 負けることは有り得る……が……。


「シス様は、体調が悪いように見えました……。

 普段のシス様ならば、負けなかったと思います」


 病気……?

 そんなこともあるのか。

 私は転生してから、病気らしい病気をした記憶は無いから、そういう可能性は考えていなかった……。

 たまたま生理のタイミングだった……ということも有り得るけど、キツネの生理なんて年に1~2回な上に、回復魔法で痛みを緩和できるし、可能性は低いよね……。


『それじゃあシスは、どうなったというのですか!?』


「ハッキリとは分かりませんが……連れ去られたようにように見えました。

 10日(とおか)ほど前のことです」


 じゃあ、まだ生きている可能性もあるんだな……!


「それと……ダリー様が、止めるのも聞かずに追跡を試み、そのまま戻っておりません」


「そんな……。

 なんて無茶なことを……!」


 シェリーは弟の暴挙に呻く。

 相手は魔族だ。

 捕まればどうなるか分からない。


 ……まあ、魔族は労働力を欲していたようだし、無闇に殺しはしないだろう。

 それにシファを見ていると、そんなに凶悪な種族ではないと思えるので、大丈夫なのではないか……という想いもあるが……。

 いや……種族は関係ないな。

 先日もシェリーが同族の人間に攫われて、危険な目に遭ったばかりだ。

 楽観視はいけない。


「あの……お母さんの姿が見えないんだけど、まさか……?」


 レイチェルは恐る恐るといった感じで、ゴングに問う。

 そうか、彼女の母親であるセリスも、攫われてしまった可能性があるんだ……。


「いえ……セリス様は、この事態をサンバートルへ伝えに行っております」


「それじゃあ……無事なのです……!?」


「はい」


 よかった……セリスは無事か。

 しかしサンバートルの領主は、どう動くのやら……。

 魔族が出たとなれば、さすがに無視できないとは思うけど、彼にゴブリン村やドワーフの里を守る義務は無い。

 優先するのは、自分の領地だ。


『では、レイチェルはサンバートルへ行って、セリスさんと合流しましょうか?

 送りますよ?』


「ううん、今はシスちゃんとダリーちゃんを、助けるのが先なのです!」

 

「師匠、どうか里のみんなを助けるのに、協力してくれ!!」


『……ええ、勿論です。

 しかし魔族が何処へ行ったのか、特定するのは難しいですね……。

 シファ、何か知りませんか……?』


『え……?

 そうじゃのぅ……。

 前にクジュラウスの奴が、鉱山で大変な発見をしたと聞いたことならあるが……。

 発掘に大量の人員と予算が必要だと言うから、そんな余裕は無いと却下したのじゃが……』


『あなた……それで根に持たれて、命を狙われたのでは……?』


『え゛っ!?

 まさか……そんなことで……?』


 シファは愕然とするけれど、物に対する価値って人によって違うから、誰かにとってはゴミでも、他の誰かにとっては宝物だということもある。

 そういう価値観の違いは、致命的なすれ違いを生みかねない。


『でも鉱山……それでドワーフですか。

 ここのドワーフ達も、その発掘の為に駆り出された……と?

 シファ、魔族の鉱山の場所って分かりますか?』


『いや……魔族は、鉱山を持っていなかったはずじゃ。

 金属が必要なら、魔法で生み出せるしのぅ……」


 魔力が人間よりも高いらしい魔族なら、そうだろうなぁ……。

 私だってできる。

 まあ、ミスリルとか見たことが無いようなファンタジー金属は、成分が分からないのでまだ無理だが……。


『となると……人間が所有している鉱山……は、魔族に占拠されたとなると、既に大騒ぎになっているだろうから……廃坑?

 それもこの周辺から人員を集めたとなると、意外と近い場所……』


「残ったドワーフ達に聞いてみるのです」


 里には発掘作業には向かない小さな子供や、その母親、そして高齢者のドワーフが残されていた。

 人質にしなかったあたり、意外と魔族も人道的だな……。

 もしくは彼女達の自由と引き換えに、男達は連れて行かれたのかも知れないが……。


 とにかくその人達に聞くと、近隣で廃坑になった鉱山の場所はすぐに分かった。


『それじゃあ、早速その鉱山に乗り込むとしましょう!!』


「うち達も、行くよ!!」


『キエルさん……!』


 いや……危険じゃないか……?

 これから魔族と事を構えることになる。

 よく事情も知らないであろう彼女達を、巻き込んでも良いものなのだろうか……。

 それにキエルはまだしも、アリゼとクラリスは実力に不安がある。


 ただ、シスとダリー、そしてドワーフ達……これら全員を救出する為には、正直言って私だけじゃ手が足りないかもしれない。

 それにクラリスが、キエルの服を不安そうに掴んでいた。

 たぶんキエルの申し出は、彼女の希望でもあるのだろう。

 自分と間違えられた所為でレイチェルが狙われ、シェリーが攫われたことの罪滅ぼしをしたいということか。


 ……その意気や良し!


『分かりました。

 一緒に行きましょう』


 そんな訳で、思わぬ形で魔族と激突することになった。

 応援していただけると、モチベーションに繋がります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「……その意気や良し!『分かりました。一緒に行きましょう』 速やかに救出する足枷にしかならない。家族であるシスを一刻も早く救い出そうとは思わないんだ。狐の家族愛は少ないな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ