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21 救 出

 注射が苦手な人は注意。

 シェリーを(さら)った者達が指定したのは、ダンジョンの2階層だった。

 その場所には行ったことがあるので、「転移」で一気に到達することができる。

 そこに王女クラリスを連れてこいと指示されているけれど、馬鹿正直に取り引きなんてするつもりは無いから、彼女は連れて行かない。


 現場には既に誰かいる可能性もあるので、念の為に少し離れた部屋の中へ「転移」しよう。


『さて……と、まだ誰もいないようですね』


 それならば……と、指定の場所へ移動しつつ索敵を続けると、遠くから近寄ってくる集団の気配を察知した。

 シェリーも……うん、いるな!


『シェリー、大丈夫ですか!?』


 私はシェリーにだけ「念話」を送った。


『ご、ご主人様……!

 申し訳ありません……。

 不覚を取ってしまいました。

 私は……命には別状ありません』


『良かった……。

 いえ、今回のことは、慢心と油断をしていた私の責任です。

 すぐに助けますので、あなたは大人しく犯人に従っていてください』


『かしこまりました』


 暫くすると、6人の男とシェリーが姿を見せた。

 ハゴータがいないということは、アリゼの言う通り彼はただの馬鹿で、この男達とはパーティーメンバーなだけだったってことなのかな?


 それよりもシェリーの姿を実際に見て、安心するよりもむしろ怒りが湧いてくる。

 彼女が着ているメイド服は、血に汚れていた。

 指が切断されたであろう手は腰の後ろで縛られているので見えないが、顔にも殴られた(あと)があって、丁重な扱いをされていないことは明白だ。


 服はそれほど乱れていないので、性的なことはほとんどされていないことだけは幸いか……。

 でも、胸くらいは揉まれている可能性も……あっ、キレそう。


 ……だけどまずは、男達に気付かれないように、シェリーに回復魔法をかけておくか。

 視界に入る距離なら、どうとでもなる。


 それが終わったら、後は男達を罰を与えようか。


『遅かったですね』


「なっ!?

 何故もういる!?」


『あなた達と、問答をするつもりはありません。

 私の質問にだけ答えてください……!』


「なんだと……つっ!?」


「今……痛みが?」


 男達は一瞬だけ、痛みを感じただろう。

 ただしチクリとしただけで、ダメージとしては認識できない程度のものだ。

 だけど実際には、死に直結する痛みだった。


『もう、動かない方がいいですよ。

 身体(からだ)が裂けますので。

 自分の身体をよく見てください』


「何……?

 こ、これは……糸……?」


 男達は自身の体内から、1mmにも満たない太さの糸……というよりは針が生えていることに気付いただろう。

 しかもそれは、彼らの身長ほども長い。


『地属性魔法で生み出した、金属製の針ですよ。

 床から生えて、あなた達の身体を貫通しています。

 細すぎるので、現時点では即死するような傷にはなっていませんが、下手に動けば体内を斬り裂いて、死に至るでしょう』


「なっ……!?」


 私の言葉を信じたかどうか、それでも万が一のことを考えて、男達はそれ以上動かなかった。

 今は頭や心臓を()けて刺してあるし、細すぎるが故に出血も無いに等しい。

 それでも体内を貫通している針が、致命的な結果を招くことは、誰にでも想像がつくだろう。


『シェリー、おいで』


「はい、ご主人様」


「あっ、こいつ……!!

 あぐっ!?」


 男達の間からシェリーが抜けだし、私の方へと駆け寄ってきた。

 男の1人は彼女を追おうとしたけど、少し動こうとしただけでも床に固定されて身体を(つらぬ)いている針が、体内の傷口を広げて一気に出血させる。


『あ~、太い血管を切ってしまいましたかね?

 治療しなければ、いずれは死んでしまうでしょう。

 ちなみにその針、時間が経過することに、どんどん太くなっていきますからね。

 最終的には、あなた達の身体よりも太く……』


「何ぃ──!?」


「それって……!!」


「確実に死ぬじゃないか!!」


「おい、やめろっ!!」


 男達は(わめ)く。

 だけどそれでは、何の解決にもならないよ。


『それが嫌なら、犯行動機や背後関係を全部話してもらいましょうか?

 素直に従うのなら、命までは取らないかもしれませんよ?』


「ふ、ふざけんな!!」


『ああ、そうですか。

 それではそこで、串刺しになってください。

 ダンジョンは死体が吸収されるから、証拠が残らなくていいですよね。

 あなた達も、そのつもりでここを指定したのでしょ?』


 そして私は、針を少しだけ太くした。

 時間経過だけではなく、任意でも太さは変えられる。


「ひいっ!?

 ちょっ、ちょっと待て……!!

 凄く痛くなってきた気がする……!!」


 まだ針の太さは1mm程度だから、それほど痛くはないはずだが?

 それにその気になれば、針に電流を通したり、熱くしたりと、拷問の方法はいくらでもある。

 本番はこれからだぞ?


 しかし男達は、徐々に太くなっていく針と、それに伴う苦痛によって、あっさりと屈することになる。

 彼らは私の質問に対して、洗いざらい吐いてくれた。


 その素直さに免じて今回は私と奴隷契約を結び、命令に是対服従になることで、命だけは許してやろうと思う。

 え、最初からそうすれば、針を使うこともなく尋問だって簡単にできたって?

 いいんだよ、これはシェリーを傷つけたことへの罰も、含んでの処置なんだから。

 

 てめーらは私を怒らせた!!

 殺さなかったのは、相当な温情だと思っていただきたい。

 まあ、シェリーの命が助かったから……というのもあるが、利用価値がまだあったから……というのもある。

 

 今後彼らには、今まで通り冒険者を続けつつ、他の冒険者を監視する役割を演じてもらおうと思う。

 今回の彼らと同じように、おかしな真似をしそうな者達を見つけたら私に報告させ、場合によっては対処にもあたらせる。


 これで今後の冒険者活動は、余計なことで(わずら)わされることも減るだろう。

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