表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/216

6 レベル上げ……失敗?

 巣穴の引っ越しが終わった。

 グリフォンの件があった所為か、今回はかなり遠くへと移動したけど、これでグリフォンの縄張りから出られたのか、それは分からない。

 もう襲撃が無いのなら、それが1番いいんだけどね……。


 でもそれは希望的観測に過ぎないので、万が一のことがあってもいいように、戦える力が必要だ。

 その為には、今までのようにネズミなどの小動物を狙っていては駄目だ。

 もっと大物を──大量の経験値が必要なのだ。


 そんな訳で私は今、(ひと)りで森の中を歩いている。

 普段なら妹ちゃんが私につきまとってくるし、あまりママンから離れると怒られるのだけど、今は皆が寝静まったところを見計らい、こっそりと巣から抜け出してきたのだ。


 さて……経験値の高そうな獲物は、どこかにいないかな?

 メタル●ライム……は、たとえいたとしても魔法を使うような敵を相手にするのは、時期尚早だろうなぁ……。

 もっとリスクの低い……クリー●ングコインは、こんな森の中にはいないか。


 お、カエルがいた。

 ネズミよりも大きいし、経験値も多そうだけど、毒がありそうなんだよなぁ……。

 そう考えると、両生類や爬虫類、そして昆虫は()けた方がよさそうだ。


 まずはウサギくらいから始めるのが、無難かな……。

 でも、いざ獲物を狩ろうとしても、なかなか見つからない。


 あ……なんか大きいのがいる。

 まさかあれはトラ……じゃないな、シカでした。


 いや、シカというか、トナカイかな?

 えっ、異世界にトナカイっているんですか?


 いずれにしても、私の10倍以上はあるという身体(からだ)の大きさを考えると、無理でしょ、常識的に考えて……。

 魔法が使えればどうにかなるのかもしれないけれど、現状ではまだ魔力らしいもので身体強化をする程度のことしかできない。


 そんな訳で、トナカイはスルーすることにした。

 う~ん、そろそろ家族も私がいないことに気付く頃だし、巣に帰るかな……。

 今日は何の戦果も得られませんでした!

 ところが……、


キュ(おっ)?」


 その時、背後で「ガサっ」という音がした。

 ……周囲を、警戒しているつもりだったのに……!

 今や私は、生き物の気配を感じ取ることができる。

 

 それにこのキツネの耳は、かなり遠くの小さな音すら拾える高性能だ。

 それなのに背後に接近されるまで、気付かなかった。

 これは気配を消すのが余っ程上手い生き物が、出した音だろう。


 え~と……気配を消さなきゃ、生き延びることができないほど、弱い生き物だといいなぁ……。

 でも、音を出したのは、普通に考えれば致命的なミスだ。

 それでも音を出したのは、そいつにとって問題が無い──つまり私に感づかれても構わないといことなのかもしれない。


 そう、今から私が逃げても、余裕で追いつけるほどの距離まで接近したということだ。

 私が恐る恐る振り返ると、そこには──、


「ギュウゥゥゥーン!?」


 思わず私の口から、悲鳴が漏れた。

 そこには大きなイヌ──ではなく、オオカミがいたからだ。


 ひっ!?


 オオカミが飛びかかってきた。

 私は咄嗟に身体強化を使って()けるけど、ギリギリだった。

 やっばっっ、かなり速い。


 これじゃあ逃げるのは難しい。

 戦って勝つしかないのか!?

 でも、戦闘的な基本スペックはキツネの私よりも、オオカミの方が絶対に上でしょ!?


 うわっ、噛みついてきた!?

 首筋に噛みつかれたら、たぶん即死だ。

 なんとかそれだけは回避しなければっ!!


 私はオオカミともみくちゃになりながら争う。

 幸いまだ噛みつかれていないけど、爪でのひっかき傷がどんどん増えていった。


 そしてついに──、


「ギャウっ!!」


 オオカミの牙が、私の左前足を捉えた。

 た、食べないでくださーいっっっ!!


 くそっ、噛みついた前足を引っ張られているから、私の牙や爪が届かない。

 こっちから近づこうとすると、オオカミが引く……っ!

 このまま食いちぎるつもりかっ!?


 痛っ、いたたたたたたたたたたっ!!

 やめろぉオオカミっ、ぶっ飛ばすぞーっ!!


 でも、このままじゃ、攻撃が届かない。

 それならば魔法だ!

 今こそ目覚めるんだ、我が魔力ぅぅ!


 とはいえ、私はまだ魔法を発動させたことがない。

 ここは魔力だけで、なんとかできないか?

 噛みつかれている前足に魔力を集中して……一気に放出っ!!


「ギャンっ!?」


 出たっ!?

 かめ●め波っぽいのが、ちょっと出た!?

 そしてそれが口の中に炸裂したオオカミは、私の前足から口を離して転がる。


 今だっ!!

 私は隙ができたオオカミの、喉笛に噛みついた。


 だが、決定打にならない。

 いかに身体強化で顎の力を込めても、キツネの牙ではオオカミの毛皮を突き通して致命傷を与えることは難しいのだ。


 ならば他の攻撃方法が必要になるけれど、今口を離したらオオカミは自由の身となり、反撃してくるだろう。

 この噛みついた状態を維持したまま、更に別の攻撃をしなければならないということになる。

 

 だけどオオカミは無茶苦茶に暴れて私を引き離そうとしているので、私は現状維持だけでやっとだった。

 そもそも私の身体では、他の攻撃手段なんて爪しかないけど、そっちは牙よりも頼りないし、左の前足はオオカミに噛みつかれた傷の所為で、しばらくは使い物にならないだろう。


 となると、やっぱり魔法か……!

 なんとかこのままオオカミに噛みつきつつ、魔法で攻撃するしか勝機は無い!!

 ブックマーク・☆での評価・誤字報告・いいね・感想などで反応があると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ