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11 冒険の準備

「ここがクラサンドの冒険者ギルドだよ」


 キエルに案内されて、私達は冒険者ギルドにやってきた。

 私は別に冒険者の資格なんて必要無いと思っていたんだけど、冒険者じゃないとダンジョンへの入場許可はおりないらしいので……。


 まあ、ダンジョンへ強行突入する手もあるよ?

 だけど魔族がいるというダンジョンの最深部へ到達するには、もしかしたら数ヶ月はかかるかもしれない。

 私単独ならもっと早いかもしれないけれど、シファ達はうっかり高レベルモンスターに殺されるなんてことも有り得るから、レベルを上げつつ慎重に時間をかけて下層を目指したいと思う。

 その為にも、冒険者として町で生活する為の基盤を作っておく必要がある。


『一応偽名で登録するから、考えておいてね』


 私は裏社会で懸賞金がかけられているし、ナユタとレイチェルも1度奴隷商で売られそうになっているので、本名を使うのは危険かもしれない。

 まあ、10年も経過しているから、気にし過ぎな気もするけど、念の為ね。


『う~ん……。

 偽名はげろしゃぶか……フーミン、どっちがいいと思いますか?』


「……いつもの冗談だよな、師匠?」


 みんなに変な顔をされたが、やっぱり異世界基準でも変か……。


『ええ、ネタですよ。

 じゃあ私は、マイ(My)にしましょうか』


「それなら、私はレイなのです」


 綾波かな?


「オレはユタで」


 沖縄の霊媒師?


「エリーでお願いします」


 アトリエを持っていそうな錬金術師ですね。

 

『ゼフ……で良いかのぅ?』


 何処の海上レストランのオーナー?


 そんな感じで、我々は偽名で冒険者登録をした。

 この国には戸籍に類する物が無いから、簡単に身分を(いつわ)ることができるし、特別な資格もいらないので後ろ暗いところがある人間でもなれるというのは、冒険者の良い所でもあり悪い所でもあるねぇ……。

 ただそれだけに、中には犯罪者が紛れ込んでいるかもしれないので、冒険者同士の付き合いは気をつけた方がいいだろう。


 ちなみにシェリーは、本格的に冒険者として活動する予定は無いけれど、たまにダンジョンへ連れて行って鍛えようとは思っている。

 私達は何者かに狙われる理由はいくらでもあるから、自衛の為の力はあった方がいいし……。

 だから今までも戦闘訓練はさせていたけど、魔物を相手にした本格的な戦闘はあまり経験してこなかったから、この機会に鍛え直そう。


 さて、次は家を借りるか。

 宿に泊まってもいいんだけど、そこでは他の客の目もあるから、私やシファの正体を隠す為に気を使わなきゃならない。

 それに湯船を設置できるスペースも欲しいし、家を借りた方が自由にできる。

 

 幸いギルドで不動産屋を紹介してもらえたので、そこで物件を選んで一軒家借りることにした。

 部屋は多くなくていいが、浴室を作れる程度の庭付きがいいということで、その条件で探したら月額金貨1枚と銀貨4枚──約7万円相当の物件があった。

 そこに決めることにする。


『ふむ……多少古いけれど、掃除をすれば問題無さそうですね』


「掃除は私にお任せください。

 ご主人様は、ダンジョン探索などの準備を」


『ありがとう、シェリー』


 それじゃあ私は、庭に浴室を作ろうかな。

 旅の道中では人目を避ける為の土の壁は、1回使ったら壊していたけど、今回は家を引き払うまでは使い回すので、屋根付きのしっかりとしたものを作ろう。


 魔力はイメージによって、あらゆる物に変換して具現化することができる。

 勿論術者の技量や魔力量によっては、実現できないこともあるけど、逆に言えば必要なものが足りていれば、なんでも実現できるのだ。


 今や私は何も無い空間に、岩を生み出すことだって可能である。

 岩を板状にして組み立てて小屋を作り、床には大理石っぽい質感のタイルを敷き詰めよう。

 勿論、排水設備もきちんと備え付けて……ついでだから、サウナ室も併設するかな。

 

 ……うん、客を入れて金が取れるレベルの物が完成した。

 これなら土地だけ借りて、家を建てるというのも有りだったかもなぁ……。

 この浴室も基礎工事まではやっていないので、いざという時は空間収納に入れて持ち運べるし、そういう家を一軒ほど作っておいてもいいのかもしれない。


 そうだ!

 ダンジョンで寝泊まりする為に、小型の家も作っておくか。


「アイちゃーん、夕ご飯の準備ができたのです」


『ええ、こちらもお風呂ができたので、後で一緒に入りましょうね』


「うん!」


 美少女と一緒の入浴……これの為に生きているなぁ……と、感じる今日この頃だ。




 翌日、いよいよダンジョンへ突入する。

 憧れの古典RPG『ウィ●ードリィ』のような冒険を体験できるということで、私はワクワクしていた。

 一方シファは、不安そうな顔をしている。

 ダンジョンの奥底には彼女の仲間がいるそうだが、そこに到達するまでには数多(あまた)の魔物との戦いが待っている。


 いや……それだけじゃないな。

 仲間と合流しても、受け入れてもらえるのか、それが分からなくて不安なのだろうな……。

 シファは1度同族に裏切られて、命を狙われているからなぁ……。


 たとえ再びそうなっても、どうにかなるように鍛えないと……。

 ちょっと厳しめにいくか。


『な……なんじゃ……!?』


 私の内心を感じ取ったのか、シファは更に怯えた。


 さて、今日はキエル達にダンジョンを案内してもらう予定なので、早く集合場所の冒険者ギルドに行かなくちゃ。

 約束時間の30分くらい前から待つのは、基本だよね?


 えっ、キエル達、もうきてる!?

 「待った?」「今来たところ」……という、お約束のやりとりを期待していたのに!!


『済みません、待たせてしまいましたか?』


「待たせちゃ悪いから、うちらが早く来ただけだし、気にしなくてもいいよ」


 ええ()や……。


「そうよ、ありがたく思いなさい!」


 ……リリスは黙っていてくれる?

 明日は定休日です。寒いけどタイヤ交換しなきゃ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] リリスはダンジョン内で意図的に妨害してきた場合切り捨てるのが吉やなあ
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