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6 奴隷解放

 あ……ありのまま、今起こったことを話すぜ! 

 私は奴隷商にナユタを助けに来たと思ったら、そこにはレイチェルもいた……。

 な……何を言ってるのかわからねーと思うが、私も何をされたのかわからなかった……。


 父親が作った借金で売られそうになっていたレイチェルには、私が大金を貸して売られなくても済むようにしたはずだったのに……。


 しかもそこにいたのは、ナユタとレイチェルだけではない。

 20代半ばくらいの美しい女性──レイチェルに似ているので、母親なのだろう。

 彼女も同じ牢屋に閉じ込められていた。

 どういう状況だ、これ……?


『彼女らは……?』


「ああ、娘の方は売約済みですから駄目ですぞ。

 母親の方ならご覧の通り、美しいのでお勧めです」


 レイチェルの方が売約済み!?

 こんな小さな子を、マジでどうする気だ!?

 普通は母親の方を選ばない?

 美人だし、胸は──そんなに大きくないけど、スタイルは悪くない。

 

 なのにあえて娘の方を選ぶって、ロリコンじゃん!!

 そして見た目は子供のナユタも、そいつに売られそうになっているということか。

 ロリコンじゃん!!(重要なことなので2回目)


 これは早く助け出さないと……!


 ……しかし、どうしたものかな……。

 ナユタ達を、ここから連れ出すだけでは駄目だ。

 どうやら奴隷達は、魔法で命令に従うように縛られているらしいから、それを解除する必要がある。


 その解除方法を知っているのは……この店主か。


『なあ、店主殿。

 売りたい物(・・・・・)があるのだが……』


「はい、かしこま──。

 ……はい?」


 店主は私の言葉の意味が分からなかったのか、ぽけーっと口を開けて、呆けた顔になった。

 まあ、ここは売る場所であって、買い取る場所じゃないからねぇ……。

 いずれにしても、おっさんがそんな顔をしても、可愛くないぞ。


 そして店主の顔は、すくに恐怖に(いろど)られる。


「ひっ!?」


 彼は無数の「狐火」で、取り囲まれたからだ。


『貴殿の命は、いくらで買い取ってくれる?』


「な……金が目的か!?

 い、いくら欲しいんだ!?」


『う~ん……全財産?』


「なっ!?」


『店にいる奴隷の支配権を、すべて私に移してもらおうか。

 それが聞き入れられないのならば、貴殿は全身を焼かれることになるが……?』


 犯罪奴隷というのもいるらしいから、取りあえず全員私の奴隷にしよう。

 その後は問題が無さそうな者から完全な自由を与え、問題がある者は監視を続けて管理する……という形でいいだろう。


「わ、分かった!!

 分かったから、その炎を消してくれっ!!

 事務所にいかなければ、手続きはできぬ!!」


『おかしな真似を、するなよ……』


 と、言っても無駄だろうけどね……。

 店に入った時から、何者かから監視されているような感覚があった。

 位置までは特定できないけれど、店主の護衛か何かなのだろう。


 何処かのタイミングで、そいつらは攻撃を仕掛けてくるはずだ。

 

 そんな私の予想通り、事務所の前に辿り着いたその時、私に向かって幾本ものナイフが投げつけられた。

 まあ、幻術だから通り抜けるけどね。


「!?」


 そして今の攻撃で、潜んでいる連中の位置は大体把握できた。

 凄いな、視界に入っているはずなのに、そこにいると感じさせないとは……。

 私が極限まで気配を消している時って、客観的に見るとこんな感じなのかな?

 だが、投げられたナイフの軌道を辿れば、位置の特定は容易(たやす)い。


 私は無数の氷柱(つらら)を生み出して、敵がいるであろう場所に撃ち込んだ。

 すると直撃を受けた者達が姿を現し、床に倒れ込む。

 当たり所が悪ければ死ぬかもしれないけれど、明確に殺意を持って攻撃をしてきた者に手加減するほど、私も甘い世界で生きてきた訳ではない。

 たとえ人間が相手でも、死んだらそれはそれまでのことだ。


 それに敵を簡単に拘束して無力化できるような、都合のいい魔法は持っていない。

 だからから中途半端なことをやっていると、思わぬ反撃を受けることになりかねないからね。

 それで助けるべき者を助けられなかったら、本末転倒だ。

 

 ……でも、今度敵を拘束するような魔法を開発しておこう。

 やっぱり今や他種族になっていても、元同族の命を奪うのは気分がいいものではないからね……。


『気が済んだかね?』

 

「なっ!?」


 護衛に助け出されることを期待していたであろう店主は、動揺した声を上げた。

 そんな彼を、再び「狐火」で取り囲む。


ああなり(死に)たくなければ、大人しく私に従うことだ……!!』


「ひぃっ、逆らわないから、殺さないでくれっ!!」


 よし、これで奴隷達の解放には、大人しく協力してくれるだろう。

 その後、事務所に入ると、店主は紙の(たば)を金庫から出した。


「こ、この契約書に血判を押せば、あなたが奴隷の主人となります」


 この紙が……?

 ふむ……確かに魔法の術式が、この紙に組み込まれているようだな……。

 書かれている魔方陣が、術の効力を発揮させる装置になっているらしい。

 こんな薄くても、これは立派な魔道具の一種なんだ……!!


 う~ん、これを解析すれば、いずれは契約書が無くても奴隷契約を結ぶことができるかもしれないけれど、今はこの契約書が本物だということくらいしか分からない。


 しかし血判かぁ……。

 肉球でも大丈夫?

 それに結構な枚数があるから、このすべてに血判を押すとなると、出血量が莫迦にならない。

 でも、やるしかないか……。


『ああ、そうだ。

 未使用の契約書をもう何枚か用意してくれ』


「え……何に使うので……?」


『まずはお前で、効果を試させてもらおうか……!!』


「そ、そんな……!?」


 店主は愕然とした顔になるが、今まで奴隷売買で儲けてきたのだろうから、たまには奴隷の気分を味わってみればいいんだよ……!!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] レイチェルの母親が公爵家の娘だという設定がどう生きるか楽しみです。 [一言] レイチェルを筆頭に本筋で非業な死を遂げた人は救われてほしいね。勿論ざまぁも期待(クズ父親)も含めて。
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